3Dプリントで彫刻制作。「作品制作のスピードが10倍〜20倍ほどに早くなっています」

2022年6月29日

クリエイタープロフィール

DMM.make 3Dプリントサービス 個人 クリエイター様 導入活用事例

オオタ キヨオ

アーティスト

DMM.make 3Dプリントサービス 個人 クリエイター様 導入活用事例

3Dプリントによる彫刻で創作活動を行うオオタキヨオ様に、DMM.makeの3Dプリントサービスで制作スピードがアップしたお話を伺いました。

オオタキヨオ様について、DMMを知ったきっかけ

まずはオオタキヨオ様の自己紹介からお聞かせいただけますか?

オオタ様:私は3Dプリントを使って彫刻を作る彫刻家をやっています。

造形の履歴をみればわかると思いますが、線と線の混じり合いで光が動いて見えるモアレの造形物を作っています。
大量の線を交わらせて同じ向きにして作っているのですが、何百本の線を使った構造だと溶接などの技術では造形が不可能なんです。

こうして自分で思いついたりひらめいたりしたものを、昔ながらの彫刻の技法や溶接だと作れないので、そういったものを3Dプリンターを使って制作するということをしています。
モアレの造形物

昔ながらの彫刻技法と仰っていましたが、オオタキヨオ様ご自身はバックグラウンドで彫刻系のお仕事をされていたのですか?

オオタ様:いえ、全くやっていなくて、大学が建築学科だったんです。
大学院で経済や経営を学んで証券会社で働いていたんですが、その後にいろいろとあって今に至るという感じです。
3D CGは建築の頃から馴染みがあって、大学院でテクノロジーマネジメント(技術経営)を学んでいる中で、3Dプリントという技術が出てきて進化しているのをウォッチしていました。

彫刻の伝統的な技法では、金属を加工したり木を彫ったりしますが、ものすごく場所と時間を取ってしまうんですよね。自宅でそういった彫刻はまずできない。
でも、3Dプリンターであれば、仕事が終わった後でもパソコンを起動して準備作業さえすれば簡単に作れてしまう。
それで13〜14年ほど前から細々と3D CGで簡単なものを作っていて、今に至っています。
データ作成画面

なるほど。本業とは別に3D CGを趣味としていたということですね。彫刻を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

オオタ様:3Dプリントを始めたきっかけは覚えてないんですが、12〜13年ほど前に海外の3Dプリントサービスを使い始めたのが最初です。
「自分がCGで書いたものをプリントできるんだ!」と思って、当時はより簡単なものしか作っていませんでしたが、かなり熱心に取り組んでいました。

3Dプリントの技術が登場して間もない頃から携わっておられますが、その中でDMM.makeを使い始めたきっかけは何でしたか?

オオタ様:もともとは2008〜2009年頃から海外のサービスを使っていましたが、3Dプリントについていろいろと調べている中で「あのDMMもやってるんだなー」と存在自体は知っていました。
彫刻活動をする中で昔の友人やいろいろな人とつながる機会が増えたのですが、その中で昔お世話になった人が偶然にもDMM.makeの3Dプリント事業部の方と仲が良くて、飲み会に何度か行っている中でその方との縁ができたんです。
それがきっかけでDMM.makeも利用させてもらうようになって、今では海外のサービスが得意な加工じゃない限り使う機会がほとんどなくなりました。

かなり昔から使っているはずで、確か2014年とか2015年頃からお世話になっています。
国内だからスピード感が全然違って、レスポンスも含めて納期がすごく早くて助かります。

3Dプリンターを利用するシチュエーション

CGソフトは何を使われていますか?

オオタ様:フリーのCADソフトやWindows標準の3D Builderを使ってモデリングをしています。
フリーのCADはかなり古いソフトで、プロの彫刻家で使っている人は少ない印象です。

ただ、私の場合は造形物が幾何学で、そこまで多機能なソフトを求めていないので、高いソフトも試してみましたが、使い慣れたフリーのCADソフトに落ち着いているような感じです。

なるほど。CGを始めたきっかけは大学でしょうか?

オオタ様:そうですね。大学ではCADもやるんですが、CGのほうが直感的で。
建築学科を出たが建物の設計をしたことはなくて、CGで形を作るほうが好きだったんですよね。

彫刻活動ははじめからデジタルで入っているのでそこまで差はないかと思いますが、昔と今で変わったと感じる部分はありますか?

オオタ様:アルミのパイプなどで作っていたときもありますが、スピード感が全然違いますね!
昔は一個作るのに1ヶ月くらいの時間がかかっていましたが、今では1日に1個か2個、多くて10個ほど作れるようになりました。
「3Dプリントをお願いして、その間に3D CGで並行して作っておいて、届いて作って表面加工して」という作業を並列でできるようになったので、作品制作のスピードが10倍〜20倍ほどに早くなっています。
完成までのスピードが早いので、試行錯誤もしやすくなっていて非常に助かっています。

DMM.makeのサービスに対する使用感や不満点

オオタ様のような細かい造形物だと、DMM.makeにデータをアップロードする際、メッシュ数のデータ制限に引っかかりませんでしたか?

オオタ様:100MBまででしたっけ…?
多分、今までにデータ制限で引っかかったのは1回程度しかなかったと思うので、あまり問題にはなっていません。
3Dビルダーでメッシュの修復をしているので、アップロードするときのデータ容量が軽くなっているのかもしれないですね。
データのエラー自体はありますが、そこまで多くはない印象です。

なるほど。ありがとうございます。そういったノウハウはこのインタビューを読む方にとっても参考になりそうです。

オオタ様:仮にそのまま間違えてアップロードしても、DMMの担当さんがすごく丁寧に教えてくれるので助かっています。
「このままの細かさだと出力時に厳しそう」というのを細かく指摘してくれますね。

DMMにご依頼いただく際の素材は主に何を使われていますか?

オオタ様:MJF(マルチジェットフュージョン)のPA11かPA12を使っています。
あとはチタンでたまに発注しています。

プラチナやゴールドなどの金属は使われますか?

オオタ様:指輪を一度だけプラチナでお願いしたことがあります。
ネックレスやピアスは問題ありませんが、指輪だと指のサイズがあるので造形が難しいんですよね。
「指輪を作って欲しい」という依頼があっても、「指輪は受けられない」というのが本音です。

仕上げ作業はどういう物がありますか?

オオタ様:表面の磨きと、顔料だったり金属を付けたりという作業があります。
たとえばこれなんかは、表面にアルミをつけて加工して、海の水面に太陽の光が反射するようなイメージの造形物を作りました。

展示された造形物

3Dプリントを使った彫刻活動で大変だったこと・良かったこと

データを作る過程やプリントを頼む際の後工程など、彫刻家活動をしていて大変だったことはありますか?


オオタ様:結構ありますね(笑)

単純にデータを作るとかプリントを作るのはそこまで大変ではないんですが、大きい造形物を作るときはパーツごとに分割しているので、その後のくっつける作業が大変なんです。

2021年3月にTagboat Art Fairというアートフェアにて、1メートル四方のキューブ状のものと、それの対になる球体をジョイントさせて2,500個くらいのパーツを組み立てるのが非常に大変でした。
パーツの設計をミスした箇所もあって、設計し直して結果的に200個くらいパーツが足りなくなって…。
そのときはDMMさんの問い合わせフォームから「明日までに間に合わせられるか?」と聞いたら、「ナイロンのエクスプレスならギリギリ間に合うかも」といわれて、追加でお願いしてなんとか間に合わせました。
1m四方のキューブの造形物

この活動を続けていて良かったことはございますか?

オオタ様:いろんな人と知り合えるんですよね。展示の会合などで友達はたくさん増えました。

具体的にどのようなお知り合いが増えましたか?

オオタ様:普通の生活をしていたら絶対に会えないような人とか。20年振り以上の懐かしい知り合いとも会えました。
渋谷で個展を開いたときにシンガポールから昔の上司が来てくれたりしたのは嬉しかったですね。

DMM.makeを使った彫刻活動の今後、DMM.makeに対する要望

オオタ様:今後は今まで以上に大きい造形物を作ってみたいと思っています。
これまでとはやり方も変わってくると思いますが、3Dプリントを活用しながらいろいろな技術を試していきたいです。

大きな造形物は魅力がありますが、いざ作るとなるとなかなか難しいですよね…。
2022年に発表した光造形では1辺1,380mmくらいの長辺が出力できます。

2022年6月取り扱い開始の新素材のレジン(DMM.makeにて造形)

こちらの光造形は価格は1立方あたり約50円から。かなり安く大きなものを作れるかと思います。興味があれば試してみてください!


オオタ様:そうですね。タフレジンのクリアで依頼していたピアスがちょうど明日届くという連絡が来ていたので、それを見て試してみようと思います。
トラス上で大きいものを作ってみたいとは思っているんですが、分割して後からくっつけようとすると、ほぼサイズが合わないので結構大変なんですよね。

あと、洗浄するものってどうしても反ってしまうじゃないですか。
タフレジンで造形したピアス

反りの影響が大きくなるので、大物をやりたいが技術的に難しいということですね。

オオタ様:そうですね。最近はあえてその反りを活かすようにしています。

天王洲アイルの寺田倉庫 WHAT CAFEで展示していましたが、線が放射状に集まっていて、影を見ると反りがあって、それが有機的に見えてアリかなと。
別の作品はタグボートやECサイトから問い合わせをしてもらうことで販売もしています。

オオタキヨオ 個展「STRUCTURE」


ありがとうございます。最後に、DMM.makeに対してなにかご要望はございますか?

オオタ様:2年前にお話をいただいたのですが、DMM,makeの工場見学の機会があると嬉しいです。
過去に連絡をもらったことがありますが、結果的にコロナの影響を受けて話が流れてしまったので…。

興味をもってくださり嬉しいです。こちらの記事からも雰囲気を感じ取っていただければ幸いです。

オオタ様:動画は前にいただいたことがあるんですよ。
BSフジ「ブレイク前夜~次世代の芸術家たち~」という番組に出演した際に、制作過程の映像に3Dプリントをしている場面があったほうが良いと思い、映像提供していただきました。
YouTubeにアップされていますので、ぜひ見てもらえたら嬉しいです。


ご活躍の様子が伝わってきました! 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


※インタビュー内容は2022年取材当時のものです。