DMM.makeのAGILISTAでハイブリッドロケット燃料を製作 北海道大学 宇宙環境システム工学研究室

北海道大学大学院 工学院機械宇宙工学専攻1年 宇宙環境システム工学研究室の李介維様よりお話を伺いました。ハイブリッドロケットの燃料が、DMM.make3Dプリントサービスの人気素材AGILISTAで製作されている事例をご紹介します。

李介維様

北海道大学大学院工学院機械宇宙工学専攻1年
宇宙環境システム工学研究室

端面燃焼式ハイブリッドロケットの燃料に非常に小さなポート(穴)をたくさん作る必要があったが、手作業でポートを作ることに限界を感じて開発が頓挫してしまった。

手作業で作るのは難しく、3Dプリンターを使うことで研究が進んでいる。

昔の固形燃料では、液体酸素を通したときにバキバキに割れてしまって困っていたが、AGILISTAを試してみたら割れることがなかったので、そちらを採用した。

自己紹介と研究室での研究内容について

今回はいろいろとご注文をいただいている事例についてお話をお伺いできればと思っております。
よろしくお願いいたします。

よろしくお願いいたします。

さっそく、所属されている研究室の研究内容や、簡単な自己紹介をお願いできますでしょうか。

私は北海道大学工学院の宇宙環境システム工学研究室に所属しています。

研究内容としては、ハイブリッドロケットを中心に研究を行っています。

ありがとうございます。
ハイブリッドロケットとは、具体的にどういうものでしょうか?

一般的によく用いられるロケットには、酸化剤と燃料に2つの液体を使っている液体ロケットと固体の酸化剤と燃料を混ぜた固体ロケットがあります。

一方で、ハイブリッドロケットは、液体の酸化剤と固体の燃料といった異なる相を用いたロケットになります。

引用元 :https://doi.org/10.3390/aerospace8090253

3Dプリンターを使った制作物ついて

3Dプリンターで造形されているものは、ハイブリッドロケットに使うパーツになるのでしょうか。

私が所属する研究室の永田先生が発明した「端面燃焼式ハイブリッドロケット」というものがあります。

端面燃焼式では、とても小さい穴が空いたすごく精巧な燃料を作る必要がありまして、その燃料を作るために3Dプリンターを使っています。

「燃料を作る」といいますと、燃料を作るための機械を3Dプリンターで作られているのでしょうか。

いえ、推進剤となる固体燃料そのものを3Dプリンターで作っています。

固体燃料の素材がプラスチックなので、DMMさんの3Dプリンターでプラスチック素材の燃料を造形している感じです。

なるほど。3Dプリンターで出力したものを、そのままロケットの燃料として使われているのですね。

3Dプリンター ロケット 燃料
DMM.make3Dプリントサービスで造形した燃料
3Dプリンター ロケット 燃料
燃料が実際に燃えている様子
DMM.make3Dプリントサービスで造形した燃料です!

DMM.makeで選んで素材について

造形に使っている素材は何になりますでしょうか。

昔は光硬化性樹脂を使ってプリントしていましたが、今はAGILISTAのAR-M2を使って燃料を作っています。

最近は新しい研究が始まって、液体酸素を酸化剤として使うようになったのですが、液体酸素は非常に冷たいので、普通のプラスチックだと燃料が割れてしまうんです。

従来の樹脂では上手く実験ができなかったのですが、AGILISTAを使うことで燃料の形を保つことができて、ロケットの燃料として使えています。

ありがとうございます。
こちらを選ばれた理由は靭性に優れているからでしょうか。

そうですね。
小さい穴の中に液体酸素を通す必要があるので、DMMさんの素材ページの仕様を見て選びました。

なるほど。
いまいち固形燃料を理解できていないのですが、今回の造形物は具体的にどのように燃料として使用されるのでしょうか。

一般的なハイブリッドロケットは、「ポート」と呼ばれる1つの大きな穴が空いた、チューブ状の固体燃料を使っています。

普通はこの穴の部分に酸化剤を流して、点火することでエネルギーが発生します。

ただ、この固体燃料を使ったハイブリッドロケットは、固体燃料の燃焼速度が小さいため、推力が小さく実用化にはいたっていません。

一方、端面燃焼式ハイブリッドロケットの固体燃料には、直径0.3mm~0.5mm程度の小さい穴がたくさん空いています。

この穴を酸化剤が通ることで燃料の後ろだけで燃焼させてエネルギーを生み出しています。

なるほど。
従来のハイブリッドロケットでは穴が1つだけだったのに対し、端面燃焼式ハイブリッドロケットではたくさんの穴を空けた燃料を使って燃焼効率を上げているのですね。

おっしゃるとおりです。

また、一般的な形状の固形燃料では、燃焼途中で固体燃料が溶けて薄くなっていき、穴がどんどん大きくなってしまいます。

そうなると燃料と酸化剤の比率が途中で変わってしまい、ロケットの性能が途中で変化してしまうのです。

端面燃焼式ハイブリッドロケットは、燃焼速度も従来のものより格段に速く、燃料の後ろの面で均一に燃えるので制御もしやすいことが特徴です。

ハイブリッドロケットの欠点を克服できるような仕組みになっています。

なるほど。

普通のプラスチック素材が、ロケットの燃料として使えるほどのエネルギーを持っていることに驚きました。

ハイブリッドロケットでは、安全性を考慮してプラスチック系の樹脂を使うことが多いですね。

プラスチック以外だと、ローソクなどで使われているワックス系の素材もたまに使うことがあります。

ありがとうございます。
ハイブリッドロケットではプラスチックを燃料としていることが理解できました。

3Dプリンターを使おうと思ったきっかけ

ハイブリッドロケットの燃料を作るために、3Dプリンターを使おうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

最初に端面燃焼式ハイブリッドロケットのシステムを考えた当時は、まだ3Dプリンターが登場していませんでした。

なので、当初は大きなプラスチック素材にドリルなどを使って手動で穴を空けていました。

しかし、穴が大きくなりすぎたり、不均一になってしまったりして、端面燃焼式ハイブリッドロケットの燃料として上手く機能しなかったのです。

理論式から考えると、非常に小さなポート(穴)をたくさん作る必要があったのですが、手作業でポートを作ることに限界を感じて開発が頓挫していました。

2014年頃に3Dプリンターが普及し始めて、実際に試してみようという話になり、それでようやく開発が一段回進んだという感じです。

なるほど。
理論上は、ハイブリッドロケットの固形燃料としてプラスチックが使えるとわかっていたものの、手作業ではそれが上手く作れなかった。

限界を感じていたタイミングで、2014年頃に登場した3Dプリンターが上手く研究に使えそうだと判断いただいた感じですね。

端面燃焼式ハイブリッドロケットにおいてはおっしゃるとおりです。

当初はどういった素材で固形燃料を作られていたのでしょうか。

別の光硬化性樹脂です。
当時は気体酸素で実験を行っていましたが、よりパワーのある端面燃焼式ハイブリッドロケットを作ろうということで液体酸素にシフトしたタイミングでした。

昔の固形燃料では、液体酸素を流したときにバキバキに割れてしまって困っていたのですが、AGILISTAを試してみたら割れることがなかったので、そちらを採用しました。

AGILISTAにおいては耐熱温度の話を伺うことは多いですが、耐寒性についての話は伺ったことがありませんでした。

これは素材一覧から靭性があるのでAGILISTAを選んだのでしょうか?

それとも、他の素材とあわせて検証している中で、たまたまAGILISTAに行き着いた感じでしょうか。

おそらく他の素材も使ったと思います。

ただ、AGILISTAは靭性が強いことに加えて造形精度も高かったので、新型の固形燃料として早いうちから候補に上がっていました。

ありがとうございます。
AGILISTAの前から光硬化性樹脂を使っていたとのことですが、それまではどういう3Dプリンターをお使いになられていたのでしょうか。

プリンターの名前はわからないのですが、これには東京大学大学院理学系研究科附属フォトンサイエンス研究機構のグループから多大なご協力を頂いています。

なるほど。
研究室で3Dプリンターをお持ちなのかと思っていました。

FDMの3Dプリンターはありましたが、固体燃料の作成に必要な造形精度の高い3Dプリンターは持っていませんでした。

AGILISTAが研究で使えることがわかったため、今年度からAGILISTAも導入しました。

素晴らしいですね。
購入された3Dプリンターでも固形燃料を出力することはあるのでしょうか。

AGILISTA以外では使っていません。
基本的には実験用の試作部品を作る用途で使用しています。

3Dプリンター ロケット 燃料
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