タクシーアプリだけではない、新しい価値を生み出すGO株式会社
まずはGO株式会社の事業について教えてください。
風間様:GO株式会社は「移動で人を幸せに。」をミッションに、日本のモビリティ産業をアップデートする様々なITサービスの提供をおこなっている会社です。
「どうする?GOする!」のCMも展開しているタクシーアプリ『GO』は皆さんも馴染みが深いと思います。
タクシーの後部座席には動画広告が流れたり、決済ができたりするタブレットもあります。これらも全て自社で開発を手掛けています。
TV CMでもよく見る有名なサービスですね。
風間様:他にも、タクシー会社や営業車、トラックなどプロの現場で採用される交通事故削減支援サービス『DRIVE CHART』の提供や、EV車両や充電器の導入支援、エネルギーマネジメントシステム構築を進める『タクシー産業GXプロジェクト』も推進しています。
2023年にはオフィス移転も控え、まだまだ成長をしています。
幅広い事業を展開されているのですね。その中で、風間様は日々どのような業務を担当されているでしょうか?
風間様:私はハードウェア開発グループでIoTデバイスを開発しています。
たとえば『GO』アプリでお客様から注文が入った際、街中の『GO』対応車両に直接オーダーが届きます。
注文を受ける車両に搭載されるデバイスや後部座席タブレット、『DRIVE CHART』用AIドライブレコーダーの開発が私の仕事です。
「射出成型」「注型」「3Dプリンター」を比較して、40個程度の量産であれば3Dプリンターが最適だと判断
それではこれまでDMM.makeにて製作いただいたお話を伺いたいと思います。
風間様:2023年の春頃に車両の表示灯の筐体を40点ほど3Dプリンターで造形していただきました。
これが必要となった背景としてはタクシー業界特有の理由がありました。
タクシー乗務員の高齢化に加え、コロナ禍によって廃業してしまったタクシー会社や退職された乗務員の方が多くいらっしゃいました。
経済活動が再開してきた今、乗務員が不足していることが問題になっています。
その課題を解消する為に、アプリ専用車両『GO Reserve』・専用乗務員『GO Crew』というサービスを開始しています。
これは、営業対象をアプリ注文 に限定することで、運転は得意でも都度ルートを考えながら走行することに自信がない方、お客様を街中で探す流し営業や歩合制という働き方に不安を感じる方も安心して働くことができます。また、短時間勤務で副業も可能なパートタイム形態とすることで、 大学生が授業の空き時間などのスキマ時間にアルバイトをするような感覚で乗務員の仕事の一部を担うことができるような仕組みを作りました。
『GO Reserve』は行灯やスーパーサインがない車両で運行しているため、一目見て「予約した車だ」と分かりやすくする必要がありました。
そこで車両に搭載するための表示灯の筐体を作っていただきました。
ありがとうございます。「DMM.makeの3Dプリントサービスを使う」と決断されるまで、企業内ではどのような検討をされましたか?
風間様:今回の仕様では「射出成形」「注型」「3Dプリント」の3つの製法が考えられました。前者の2つは製造業の方にはおなじみの「金型を作る」方法ですね。
検討当初はこれからローンチするサービスということもあり、35台分の筐体を必要としていました。
35個程度を製造する場合のコスト計算をしたところ、3Dプリントが最も良いコストパフォーマンスだったのです。
3Dプリンター製だと一番安く作れるという試算だったのですね。もう少し詳しく教えていただけますか?
風間様:「射出成形」の型を起こすとなると、イニシャルコストが高いのはもちろん、その後の償却や保管のコストもかかります。今回製作したものの大きさだと100~200万円以上はコストがかかってしまいます。
一方、簡易金型による「注型」は試作としての要素が強く、金型の強度的に「1度に20個までしか製造できない」と判明しました。
1個の簡易金型で注型するだけでも高価でしたが、それを2倍にすることでよりコストもかさんでしまうのです。
5,000個以上などの数量であれば「射出成形」などでも採算がとれたのでしょうが、新しいサービスの開始前後だったのでそれほどの量は必要としません。
サービスがヒットして、追加で発注するのにも3Dプリンターであれば調整しやすいということもあり、DMM.makeに依頼をしました。
価格面のほか、納期の観点では他の製法と比較していかがだったでしょうか?
風間様:もちろん納期は3Dプリンターが一番速いですよね。
金型を起こすとなると1~2ヶ月かかるのが、DMM.makeの3Dプリントサービスは注文から2週間で届きました。
往々にして新サービス立ち上げは事業部サイドから「すぐ欲しい!」といった要望が出ます。
開発担当としてタイトな要望に応えるために頭を悩ませがちですが…
DMM.makeは信じられないくらいの速さで届きますよね(笑)
参考:「GO Reserveについて」
GO株式会社のプレスリリース「社会の多様性に応じた新たな雇用の形で乗務員不足を解消 アプリ専用車『GO Reserve』専用乗務員『GO Crew』が始動」
素材は車空間になじむ「PA12|MJF」を利用
素材にはMJF(マルチジェットフュージョン方式)の「PA12」を選択いただきました。どのような観点で素材を選びましたか?
風間様:車内で使う物なので一番気にしたのは「耐熱温度」でした。
夏場の車内は非常に高温になる事もありプラスチックの耐熱性は注意すべき点なのですが、MJFのナイロンであれば耐熱性に関しても担保できるだろうと見込んでいました。
価格も妥当だったと思っています。
実際に出来上がった製品を見ての感想はいかがだったでしょうか?
風間様:今回の「PA12 | MJF」は素材の色がグレーなので、車内に設置しても違和感のない色だと感じました。
射出成形だと金型彫ったツルツルとした表面になるのでシボ加工を入れることもあるのですね。
これは思わぬ副産物でしたが、MJFは粉末を積層したザラザラとした見た目・感触なので、シボ加工をせずとも車空間になじむデザインだったという発見がありました!
乗務員さんやお客様からの反応はありましたか?
風間様:良い意味で“存在感がない”物ができたと思っています。それくらい車内の環境に自然に置ける物ができました。
またお客様からは、従来の「空車」や「回送」を表す表示灯よりも光の見え方を工夫してデザインしたので、「文字が見やすくなった」というお声もいただいています。
注文のしやすさ、先回りして提案してくれるDMM.makeスタッフの対応にも満足
3Dプリントサービスの中でもDMM.makeを選んでいただいた理由はどこにあるのでしょうか?
風間様:DMMの出力代行サービスは仕事でもプライベートでも長いこと愛用していました。
現職の前身であるJapanTaxi株式会社時代からオンラインで注文が楽にできることに魅力を感じ使わせていただいてますね。
ちょっと利用したいだけなのに「3Dプリントサービスを使う」ことのハードルはすごく高かったことを覚えています。
業務で使用する場合は、まずメールでデータを送って、担当者とやり取りをして見積もりを取って、 発注書を送って…というやり取りが発生します。
しかし、DMM.makeであればそのような煩わしいやり取りは必要としませんでした。
一方で今回のご注文時にはスタッフへのご相談もいただきました。対応はいかがでしたか?
風間様:まとまった数の注文だったため「ディスカウントができる」と営業スタッフの方から先回りして提案してくれたのが嬉しかったですね。
それによって会社内でも話が通しやすくなったのでありがたかったです。
結果として、射出成形の6割程度のコスト感で製造ができましたね!
DMM.makeではキャンペーンなども随時実施されているので、「もうちょっと追加して発注しようか」という社内の機運もあります。またお世話になりたいと思います。
移動を取り巻く社会課題の解決に向けて
今後もご利用を検討いただけるとのこと、ありがとうございます!
風間様:観光地でのタクシー需要も増えています。
そういったエリアでの展開として、また量産をお願いするかもしれません。
たとえば「京都であれば寺社仏閣をあしらった和風のデザインにする」など、ローカライズしたデザインがしやすいのも3Dプリンターの魅力だと考えていますね。
風間様:そういった使い方も面白いかもしれないですね。
ただし個人的には3Dプリンターで作ることそれ自体が目的ではなくて、「コストを抑えて速く造る」「難しいデザインを実現する」といったあくまで課題を解決するための手段の1つだと考えています。
DMM.makeの発信しているオウンドメディアの導入事例などもよく読ませていただいていますが、使えるシーンの知識を深めて、うまく活用していきたいなと思っています。
3Dプリンターの本質的な部分をお話いただきありがとうございます。それでは最後にこれからの会社としてのご展望を教えてください。
風間様:GOでは、モビリティ業界全体の脱炭素化を推進する『GX(グリーントランスフォーメーション)』といった新サービスも複数開始・急成長しているので、また3Dプリンターの使いどころは出てくるかもしれませんね。