京都工芸繊維大学学生フォーミュラ参戦プロジェクトチームGrandelfinoの山﨑楓真様よりお話を伺いました。フォミュラーカーのパーツ開発で、DMM.makeの3Dプリントサービスを活用し強豪校に返り咲いた事例をご紹介します。
山﨑楓真様 プロフィール
京都工芸繊維大学 工芸科学部設計工学域機械工学課程 4回生
京都工芸繊維大学学生フォーミュラプロジェクトチーム Grandelfino所属
担当パーツは吸気で、昨年はテクニカルリーダーを務めた
京都工芸繊維大学 工芸科学部設計工学域機械工学課程 4回生
京都工芸繊維大学学生フォーミュラプロジェクトチーム Grandelfino所属
担当パーツは吸気で、昨年はテクニカルリーダーを務めた
燃料が噴射する箇所と隣接しているパーツを、熱に解けない素材を使って3Dプリントで造形したかった。
DMM.makeなら耐燃焼性能のある素材を選べた。
他の業者も検討したが、物性が掲載されており一番使いやすかった。
目次
2022年に総合優勝 京都工芸繊維大学 学生フォーミュラ参戦プロジェクトチームGrandelfino
まずは活動内容をご紹介いただけますか?
私どもは京都工芸繊維大学の「Grandelfino」という学生フォーミュラチームで活動をしております。
「学生フォーミュラ」は”世界中で技術者を育てる”という目的で大会がおこなわれています。
「学生フォーミュラ」は”世界中で技術者を育てる”という目的で大会がおこなわれています。
団体名の「Grandelfino」とはどのような意味でしょうか?
イタリア語の「Grande=偉大」と「Delfino=イルカ」を組み合わせた造語だと聞いています。
大会での戦績も教えていただけますか?
戦績は、2012年大会から上位の成績を残していて、他校から強豪校とよばれるくらいには結果を残しております。
一度チームの転換期の際には大きく順位を落としましたが、2022年におこなわれた前回大会では、DMM.makeの3Dプリントサービスを活用したこともあり、見事に総合優勝を果たしました!
一度チームの転換期の際には大きく順位を落としましたが、2022年におこなわれた前回大会では、DMM.makeの3Dプリントサービスを活用したこともあり、見事に総合優勝を果たしました!
素晴らしい戦績ですね!
弊社の3Dプリントサービスを使ったチームが「優勝できた」と伺い、我々も非常にうれしく思います。
山﨑様の所属されるチームは上位入賞の常連ですが、どの部分が強みだと考えられていますか?
弊社の3Dプリントサービスを使ったチームが「優勝できた」と伺い、我々も非常にうれしく思います。
山﨑様の所属されるチームは上位入賞の常連ですが、どの部分が強みだと考えられていますか?
弊チームは全員で66人ほどおりまして、同大会に参加している全大学のなかでもかなりの大所帯となっています。
人数の有利があることはもちろんですが、大会の出場回数が多く、年々技術力が積み重なってチームとして着実に成長している点が大きな要因だと考えています。
人数の有利があることはもちろんですが、大会の出場回数が多く、年々技術力が積み重なってチームとして着実に成長している点が大きな要因だと考えています。
サージタンクの製作で3Dプリントを活用
マシン開発のどの部分で3Dプリントを利用しましたか?
僕はエンジン周りを担当するパワートレイングループに所属しており、そこで必要となる「サージタンク」を製作しました。
エンジンの前段階に付いており、簡単にいうと「エンジンへ送るための空気をためておく装置」です。
エンジンの前段階に付いており、簡単にいうと「エンジンへ送るための空気をためておく装置」です。
DMM.makeのサービスは学生フォーミュラへのご協力・ご支援があり、特別価格にてプリントができました。
空気をためておく装置「サージタンク」
DMM.makeにて造形
製作する上での難しさはどこにあるのでしょうか?
学生フォーミュラはその名前の通り、大学生が参加するプロジェクトなので、マシンの性能が高すぎると危険をともないます。
そのため、大会レギュレーションで「リストリクター」とよばれる空気の流入を絞るパーツを取り付けるように義務付けられています。
一方で「とにかくエンジンの性能を高くしたい」という思いがあり、リストリクターの存在が大きな壁となっています。
最大で直径20mmまでと決められているので、各大学でも頭を悩ませている課題だと思っています。
一方で「とにかくエンジンの性能を高くしたい」という思いがあり、リストリクターの存在が大きな壁となっています。
最大で直径20mmまでと決められているので、各大学でも頭を悩ませている課題だと思っています。
そのリストリクターによって制限される影響を緩和するために、「サージタンク」をチーム内で製作する必要があったのです。
サージタンクの役割としては、リストリクターによって絞られた空気の流入量を、タンク内で一度貯めてから一気にエンジンに送るのでしょうか?
そうですね。
サージタンクの入り口はテーパー状で、徐々に広がっていく形状です。
リストリクターを経由して流入した空気の圧力が、サージタンクを通ることで徐々に回復するような設計にしています。
サージタンクの入り口はテーパー状で、徐々に広がっていく形状です。
リストリクターを経由して流入した空気の圧力が、サージタンクを通ることで徐々に回復するような設計にしています。
大会の運営側は安全面を考慮してリストリクターを導入していて、チームとしてはスピードを上げるための試行錯誤を日々繰り返しているのですね。
3Dプリント活用で形状の自由度が向上し軽量化も実現
サージタンクの開発で、3Dプリンターを使おうと思われたきっかけは何ですか?
僕が入学したころはGFRP*と樹脂を積層にして固めて作っていました。この積層構造は3分割ぐらいで造形してから1つに合体させます。
ただ、1つのパーツを作るだけで5時間ほど時間がかかってしまって、材料が上手く反らないなどの問題もありました。想定通りの形状を作り出すのが非常に難しかったです。
ただ、1つのパーツを作るだけで5時間ほど時間がかかってしまって、材料が上手く反らないなどの問題もありました。想定通りの形状を作り出すのが非常に難しかったです。
GFRP+樹脂で積層したサージタンク
パーツの構造上、接合部分に割れ目ができてしまうので、ボルトできつく締められるように造形しました。
ただ、意図しない空気が入ってしまう問題もありました。
これらの問題をどうにかしたいと考えていて、3Dプリンターに目をつけました。
ただ、意図しない空気が入ってしまう問題もありました。
これらの問題をどうにかしたいと考えていて、3Dプリンターに目をつけました。
純粋にエンジンへ送る空気が増えればよいのかと思いましたが、意図しない空気が入るとどのような影響がありますか?
エンジンの出力を上げるためには、理想的な燃料と空気の割合があります。燃料は指定できるので問題ないのですが、空気量というのはエンジンの出力や排気量などをもとに計算をして、どれだけ燃料を吹かすかを決めています。
僕たちが意図しない空気の影響を受けてしまうと、燃料と空気の割合が崩れてしまって、逆にエンジンの出力が弱くなります。
僕たちが意図しない空気の影響を受けてしまうと、燃料と空気の割合が崩れてしまって、逆にエンジンの出力が弱くなります。
なるほど。おもしろいですね。
パーツを拝見すると、強度を増すために樹脂を大量に固めているようですね。
パーツを拝見すると、強度を増すために樹脂を大量に固めているようですね。
パーツ本体の重量がものすごく増えてしまいました。
僕たちもプロではないので、「強度が不安だから」と多めに積層したら、どんどん重量が増えてしまいました。
僕たちもプロではないので、「強度が不安だから」と多めに積層したら、どんどん重量が増えてしまいました。
分割でないと作れない形状だと相当ご苦労されたかと思います。
そうですね。脱型の工程もありますので、脱型できる形状という制限もありました。
それが個人的には嫌で、3Dプリントを活用するようになりましたね。
それが個人的には嫌で、3Dプリントを活用するようになりましたね。
*GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic/ガラス繊維強化プラスチック):ガラス繊維をプラスチック樹脂で固めた複合材料で、軽量でありながら強度や剛性が高く、耐久性や耐腐食性にも優れている。
3Dプリントなら内部構造込みで一体成型が可能 手間や時間が削減できた
それから3Dプリンターなら内部形状を作り込めます。それも利点のひとつですね。
サージタンクのなかにはエアファンネルを取り付けていますが、これまでは複数のパーツに分けないと物理的に造形が難しかったんです。3Dプリンターを活用すると、内部構造込みで一体成型ができるようになり、パーツ点数やチーム内での工程を減らせました。
なるほど。
もともとのパーツは何点くらいの部品でしたか?
もともとのパーツは何点くらいの部品でしたか?
4つの部品を1つにまで減らせました。
製作工程では旋盤、スライス、積層の工程がなくなったので、時間と手間を大幅に削減できて非常に助かっています。
製作工程では旋盤、スライス、積層の工程がなくなったので、時間と手間を大幅に削減できて非常に助かっています。
すごい! だいぶ手間がなくなりましたね。
楕円形の形状にはどのような利点がありますか?
楕円形の形状にはどのような利点がありますか?
強度的に円形のほうが優れています。
僕らも素人なので、エンジンの扱いを間違えるとサージタンク内に爆発した空気が逆流してしまい、かなり怖い体験をしたことがあります。
僕らも素人なので、エンジンの扱いを間違えるとサージタンク内に爆発した空気が逆流してしまい、かなり怖い体験をしたことがあります。
その対策やサージタンクの破損を防ぐために円形でパーツを作りたいのですが、手作業で作るのは難しい。
3DCADでデータを作成して3Dプリンターで出力する方法を思いついて、実際にやってみたら非常に扱いやすかったですね。
3DCADでデータを作成して3Dプリンターで出力する方法を思いついて、実際にやってみたら非常に扱いやすかったですね。
なるほど、そういった理由があったのですね。
他社と比較してもDMM.makeは「利用しやすい」
DMM.makeを選んだ理由は何ですか?
実はチーム内で御社を使い始めたのが、僕よりも前の代になります。
僕が「3Dプリンターを使おう」と思いついたときには、すでに依頼をしている状況でした。
僕が「3Dプリンターを使おう」と思いついたときには、すでに依頼をしている状況でした。
同じような3Dプリンティングサービスも増えてきていますが、DMM.make以外との比較はされましたか?
僕たちが使いたい材料を取り扱っている業者さんで何社か検討しました。
ただ、こちらもそんなに知識があるわけではないのですが、その中で一番利用しやすくて、材料の物性などが載っていたので今回もDMM.makeを利用しました!
ただ、こちらもそんなに知識があるわけではないのですが、その中で一番利用しやすくて、材料の物性などが載っていたので今回もDMM.makeを利用しました!
ありがとうございます!
物性の情報がお役に立ったようでよかったです。
先ほどのサージタンクの素材はナイロンの中でもMJFのPA12を選んでいただきましたね。選定の理由は何でしたか?
先ほどのサージタンクの素材はナイロンの中でもMJFのPA12を選んでいただきましたね。選定の理由は何でしたか?
耐燃焼性能を優先して選びました。
どうしてもサージタンクの下流に燃料を噴射する箇所があるので、PA12の物性を調べて、熱で溶けないことを確認した上で、こちらを選びました。
どうしてもサージタンクの下流に燃料を噴射する箇所があるので、PA12の物性を調べて、熱で溶けないことを確認した上で、こちらを選びました。
実際に搭載されたサージタンク。PA12で造形。
これからは違う素材で新たなパーツを開発したい
今後もさらなるマシン開発に取り組まれることと思います。今後の展望をお聞かせください。
積極的に材料置換に取り組みたいと考えています。
車重は軽いほうがよいので、3Dプリントを活用して新たな材料でパーツを開発したいですね。
車重は軽いほうがよいので、3Dプリントを活用して新たな材料でパーツを開発したいですね。
具体的にどのようなパーツの開発で3Dプリントをご利用いただけそうでしょうか?
去年はドライバーのかかとを支えるための足置き場である「ヒールレスト」を試作しました。
大学内にも3Dプリンターがあるので、それで試作することが多いですね。
ただ、使える材料がかなり限られてしまうので、いろいろな材料を試す意味でも、また御社にお願いしたい気持ちがあります。
大学内にも3Dプリンターがあるので、それで試作することが多いですね。
ただ、使える材料がかなり限られてしまうので、いろいろな材料を試す意味でも、また御社にお願いしたい気持ちがあります。
ありがとうございます。
よりグレードアップしたマシン開発に期待しています。
これからも応援しています!
よりグレードアップしたマシン開発に期待しています。
これからも応援しています!
DMM.makeでは学生フォーミュラに参加される大学・学生の方に向けて、特別価格にて3Dプリントサービスをご提供しております。パーツ製作などでご興味のある方はぜひ一度ご相談ください。
チーム名:京都工芸繊維大学学生フォーミュラ参戦プロジェクト”Grandelfino”
ホームページ:https://www.grandelfino.net/
Twitter:https://twitter.com/grandelfino_kit?lang=ja