株式会社グーテンベルクの山口勇二様よりお話を伺いました。3Dプリンターの製品開発を手がけるなかで、3Dプリントサービスを活用されている事例をご紹介します。
山口勇二様 プロフィール
株式会社グーテンベルクの3Dプリンター開発リードエンジニア。
「はるかぜポポポ」名義で各SNSでも3Dプリンターの改造、使いこなし方について公開しています。
note:https://note.com/newspeak/
Twitter:@N3uuSp3ak
材料や質感、サイズなど光造形や粉末造形が向いている造形物を依頼されるケースがあった。
納品までの一連の流れをスピーディーに対応できた。
他の受託造形サービス会社と比べて、自動見積りで価格や納期がすぐわかるので、レスポンスの速さに助けられています。また割り増し料金による特急対応なども可能で設備の空き具合などを気にする必要がないのもうれしい点ですね。
大田区発ベンチャー! 高速出力の3Dプリンターを開発 株式会社グーテンベルク
高速造形が可能な3Dプリンター「G-ZERO」
3Dプリンターで出力した樹脂部品の型を造形して、コーティング後に中の樹脂を加熱して取り除き、そこに金属を流し込んで金属の物体を作り出そうという取り組みです。
その後加熱してロストワックス用の樹脂を取り除いて(脱蝋工程)、空白部分に金属を流し込むことで、欲しい形の金属物を取り出すのが今回の取り組みです。
ロストワックス工程の概要
複雑な形状でも簡単に作り出せて、なおかつ納期的にも大幅に短縮できることが大きなメリットですね。
通常と比べて、どれくらいの日数を短縮できますか?
ものにもよりますが、合計2ヵ月ほどの工程が1ヵ月程度になります。
通常はワックス用の金型を発注して1ヵ月ほど、さらに実際に金属の部品を取り出すまでにもおおよそ1ヵ月ほどの時間が必要でした。
弊社であれば、ワックス用の金型の作成を1〜2日程度に短縮できます。
金型を起こす場合は費用や日程面でバリエーション検討が難しいですが、3Dプリンターなら一度に多くのバリエーションを短い期間で作り出せます。
最終的な開発期間を大幅に短縮できるのも大きな特徴だと思っています。
切削でもワックスを削れなくはないですが、それも切削加工に出さないといけないなどの課題があります。
そういった手間や時間をかけずに、最終的にはワックスを使う鋳物屋さんの工程の横に置いていただくことを想定して取り組んでいますね。
普段のお取引先様は、鋳物屋さんや加工屋さんが多いですか?
ドローンやロボット関係の企業さんだとか、ベンチャーも多い印象ですね。
他社のプリンターを30〜40台導入していて、最終的に弊社の3Dプリンターを5台に集約していただいた案件などもありましたね。
「30台を1人で管理するのは大変でも5台くらいならできそうだ」と…結果、人件費や設置場所、さらには開発期間を短縮できたそうです!
たとえばメガネメーカーや光学レンズの廃材をアップサイクルした製品を作られている企業様などもあります。
生産工程改善や納期の短縮を目的に、産業全体に幅広く貢献していきたいですね。
製造業全体で扱いやすく、場所を選ばずどこにでも設置できて、消費電力やサイズ感も許容範囲内に収まるようなマシンを開発中です。
2023年2月の展示会「TCT JAPAN」にも出展されており、「造形スピードが速い!」と話題を呼びました。
「TCT JAPAN」開催レポートはこちら
*ロストワックス(技法):原型となるワックスを石膏などで型取りし、加熱をしてワックスを除去した空間に金属を鋳込んで金属製品を作る鋳造方法。3Dプリントにおいては、このワックス原型をプリントし活用することがある。
G-ZERO開発者・山口勇二様と3Dプリンターの出会い
調べながら、そのマシンを使い倒していたら、自然と3Dプリンティングに詳しくなりました。
そうしたなかで、「3Dプリンターを作ってみない?」と話をいただいて、やり始めたら意外と良いよいものができあがってしまったんです。
「じゃあ、グーテンベルクでやっていきましょうか」という話になって、役員にまでなってしまって今にいたります。
「3Dプリンター好きが高じて」という流れだったのですね。
3Dプリンターっておもしろいですよね! 何かしら毎日3Dプリントしていましたし。
「100万円のプリンターを買って使うぐらいなら、同じ100万円を使って自分で3Dプリンターを作ろう!」と頭の片隅にあったタイミングで誘われたので、「よし!やったるか!」となりましたね。
自分でも3Dプリンターを購入しましたが、使っていくうちに不満がでてきて、自分で改造するようになりました。
やり続けているうちに勘所がつかめてきて、その経験が今のマシン開発に活かされていますね。
「頼ってきてくれたお客様の期待に応えたい」スピード重視でDMM.makeに発注
ただ、お話をしていくなかで、他方式の3Dプリンターが向いている材料や質感のご注文や、サイズが合わなかったりするケースも多くあります。
我々の3Dプリントの知識や技術を活用して、御社の受託サービスを利用しております。
*FFF方式(フィラメント溶解製法):プリンターが熱したプラスチックフィラメントを押し出し、そのフィラメントが積層される造形方式。
支払いも非常に簡単なので利用しています。
そこから先の納品までの一連の流れをスピーディーに対応したいと思っているので、DMM.makeのレスポンスの速さには助けられています。
注文から造形・発送を担当している加賀工場の担当者も喜ぶと思います。
企業や学校での「教育」にも意欲。グーテンベルク社のこれから
現状は250×200ミリメートルぐらいのプリンターですが、それよりも大きなものを作りたいと思っています。
実用的かつ許容できるスピード感を保ちながら、大きなサイズの造形ができるような3Dプリンターの開発に着手している状況です。
3Dプリンターはあくまでツールなので、最終的にはお客様にそれを使って造形物を作ってもらわないといけません。
社内で使えそうだと思ってもらえれば、弊社の3Dプリンターをご購入いただけるかもしれません。
お客様候補の方々に3Dプリンターが役立つことを知っていただいて、3Dプリンターの活用方法を浸透させていく活動に力を入れていきたいですね。
現状ですと、大塚化学にご協力いただいて、樹脂に合わせたチューニングをしたりしています。
たとえば、お客様から異方性を求められることも増えてきましたが、これはまさにFFF方式で実現しやすいことの1つです。
軽量かつ特定方向にだけ剛性が強い素材や印刷方法を開発したり、その素材を使いこなしたりする部分にFFF方式の可能性がかなり残っているのではないかと考えています。
大塚化学のポチコンフィラメントで造形した部品(白色部分)を使ったロボット
生徒さんがモデリングしたものを「授業中に見せたい」あるいは「翌週に渡したい」となると、普通の3Dプリンターでは速度的に不可能ですよね。
先生が一晩中3Dプリンティングをするわけにもいきませんし、「造形スピードの速い3Dプリンターがあったらいいよね」というニーズがありました。
一般企業でも似たような話があるので、やはりスピードが速い3Dプリンターは求められているように感じています。
それはもったいないことで、作りたいものを作りたい大きさで出力できる3Dプリンターで作ってあげたいと思っています。
先生方にも喜んでいただいています!
「うちの3Dプリンターを使って、絶対勝ってよ!」って(笑)
これからも共にこの業界を盛り上げていけたらと思います!
本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
株式会社グーテンベルク
ホームページ:https://gutenberg.co.jp/