【お客様事例紹介】Porco様

DMM.makeの3Dプリントサービスをお使いのお客様の事例を紹介する本連載。今回は、3Dプリントで製品の部品や治具を制作されているPorco様です。

3Dプリンターは試行錯誤のコストを下げる

本日はお忙しいところ、お時間いただきありがとうございます。さっそくですが、3Dプリンターでどのようなものを造形しているのでしょうか?

主に会社の仕事で使っています。新製品を開発する際に、金型を制作するほどではない部品が必要な場合、まずは3Dプリンターで試作品を作って、問題がなければそのままDMMさんに造形してもらい、それを製品に組み込んで商品にしています。

実際の造形物

なるほど。他にはどのような使い方をされているのでしょうか。

部品の組み立てに使う治具も作っています。組み立てが楽になる治具を考案してDMMさんで3Dプリントし、組立作業の効率化を図るような使い方が多いですね。

組み立ての際には治具があると便利ですよね。3Dプリンターを使った試作や治具作成を始めた理由を教えていただけますか?

3Dプリンターを使う以前の製品開発では、2D図面を描いて金型屋さんと打ち合わせして試作金型を作っていました。ただ、どんな小さな金型でも100万円単位のコストがかかってしまいます。とうぜん大きな失敗が許されないので、無難なことしか試せないし、プレッシャーも辛かったですね。
さらに、試作の結果を見て修正せざるを得なかった場合、金型ベースだと、どれだけ早くても3ヶ月くらいの時間がかかります。新製品の開発には試行錯誤が必然だと思っているので、ここまでのコストと時間がかかるのは非効率だと感じていました。そういった理由から、金型以外の造形方法を模索する中で、3Dプリンターに出会って今に至ります。

金型は修正するだけでも、途方もない時間とコストが掛かりますよね。

そうですね。金型屋さんもある程度は融通が効きますが、それでも試作の結果で設計の不備が原因となりますと、その修正だけでも1〜2ヶ月程度の時間がかかっていたので、非常に大きな壁になっていました。

リーズナブルで素材も多い、DMMの3Dプリント

3Dプリンターを使い始めたきっかけや、使い始めた時の感想をお伺いしたいです。

たまたまAmazonで「ダヴィンチ」シリーズの3Dプリンターを見つけたのですが、当時は価格が6〜7万円くらいでした。この値段ならダメ元でいいから遊んでみようと思ったのが、自分で3Dプリンターを使い始めたきっかけです。
最初の頃は十分な強度のものが作れませんでしたが、3DCADの勉強をしながらいろいろと試行錯誤していたら、2〜3日程度で試作品を作れるようになりました。これまで3ヶ月かかっていた試作品が、たったの3日で造形できるようになったのはとんでもないことですよね。多少の難はあっても利用を進める必要を感じて、積極的に3Dプリンターの活用に取り組むようになりました。

3Dプリントの造形サービスは弊社以外にもありますが、DMM.makeを使い始めたきっかけはなんだったのでしょうか。

最初は他社の造形サービスを見つけ、その会社に発注していました。たしかに金型を作るよりもコストは下がるのですが、一度の依頼で確実に数万円のコストが発生してしまって。これはシャレにならないと思い、いろいろと探している中で、国内メーカーでDMMさんを見つけました。非常にリーズナブルですし、なおかついろいろな素材が選べるということで、今ではどっぷりお世話になっている次第です(笑)

買い切り型の3DCADを使いこなす

3DCADは何を使っていますか?

今は「ViaCAD」を使っています。有名どころの「Fusion 360」も試してみたいとは思っているのですが、いかんせんサブスクリプション型のサービスなので、買い切り型が理想だと思って手が出せずにいます。

最近は買い切りのソフトがどんどん少なくなっていますよね。

仕事で3Dプリンターを使っているので、なんとなく無料版だと居心地が悪く感じるんですよね。使える範囲が狭いなど、相応のリスクもありますし。その点、ViaCADはかなり当たりのソフトだと感じています。

正直なところ、ViaCADを使っているという人のお話はあまり聞かないです。ここ数年で3Dプリンターを始めるとなると、Fusion 360で取り組む人が多い印象です。

そうですよね。私の周りでもFusion 360しか名前を聞きませんから(笑)。ただ、慣れていることもありますし、部品を作るレベルであれば今のままで問題ないという判断で、いまのところはViaCADを使ってます。

データ作成中の画像

3DCADを使うにあたって、苦労したことや大変だったことはありますか?

以前は2Dで設計していたので、2Dから3Dに切り替えるときに、立体物を頭の中で想像するのが大変でした。他社さんが新しく3Dプリンターを使う際も、今までの2Dの脳みそを3DCADの捉え方に切り替えるのが大変なんじゃないかと思います。
ソフトによる癖の違いをクリアするのにも苦労します。今では2D図面ではやっていられないほどに3Dを便利に使うようになりましたが、ViaCADに乗り換えるときには3ヶ月くらいかかりました。

私も新しいソフトを触る機会がありますが、癖が違うと慣れるまでに時間がかかりますよね。

だからFusion 360も近寄りがたいと感じてしまいます(笑)

仕事も趣味も。3Dプリンターで作っているもの

普段のお仕事では、どのような過程でものを作っているのでしょうか。

基本的には「こういうものを開発したい」というお客さんからの相談をベースにして造形しています。こちらで必要なスペックや形状を考えて、そのために部品はこういう風にする必要があるな、と詰めていく感じですね。毎回自分で形状寸法を考えて図面を描いているので、これといった形が決まっているわけではありません。

部品の画像

たとえば、これは最近造形したもので、メイン部分は金属の針、元の部分をDMMさんの3Dプリンターで作りました。もう少し手を加える予定ですが、金属の部品にネジがついた元の部品を付けた後、ストロー状の鞘を被せて完成品となります。消毒してから袋詰めして、商品としてお客さんに発送します。
まだ大して売れるものではないので、3Dプリンターでの造形のおかげで大幅に初期コストを下げられます。

他にも作ったものがあったら見せていただきたいです。

趣味というか、私用で作ったものですが、ペットボトルのフタにはめて簡単に開けられるようにするパーツを制作しました。私の母が高齢で力がなくなり、ペットボトルが開けられないと相談されて作りました。結構苦労しました。

ペットボトルの蓋を開けるための治具

ペットボトルのキャップについて調べてみると、メーカーによって微妙な違いはあるものの、大まかにはアメリカで定められた規格に基づいて作られていました。つまり、一つ作れば汎用性があります。
キャプをはめる内面に筋を入れて食い込ませ、全体に弾力を持たせた上で少しきつめに作ることで、どのメーカーのペットボトルも対応して開けられるように工夫しました。
さらに、キャップにつけっぱなしにして飲み切るまでそのまま何度も開け閉めすることもできます。これが結構便利。

握力が弱い人にはとても便利なアイテムですね!

安くて丈夫、ナイロン素材の魅力

Porco様はナイロン素材を多く使っている印象ですが、商品化するにあたってナイロン素材が適しているのでしょうか。

純粋に、価格が安い(笑)。
それ以上に、ナイロンは物性的に強度があって硬く、その上弾力性もあって簡単に折れたりもしません。毒性もなく、耐熱性もあって100度くらいまでは耐えられるので、非常に優れた素材だと思います。ナイロンを選べるという点で、DMMさんは非常にありがたい存在になっています。

ナイロン素材は安くて使いやすいのが大きなメリットですよね。

そうですね。ただ、欲を言えば粉を取るのが大変だなと……。最近は非常に安いナイロン素材が出たので、そちらにも期待しています。

エコノミーナイロンですね。かなり安く、コストを抑えられるのがポイントです。磨きオプションもご用意しているので、そちらもお試しいただけると幸いです。

逆に、レジン系は総じて耐熱性が弱く、価格も高い印象です。

レジン系でも耐熱性に特化した素材を取り扱っていまして、たとえばAGILISTAという素材はPorco様の製品に適しているかもしれません。

弊社でデザイン・造形
弊社でデザイン・造形
弊社でデザイン・造形
弊社でデザイン・造形

3Dプリンターを使い始めて良かったこと

3Dプリンターを使い始めて良かったことを教えてください。

開発にかかる時間がとても短くなったことです。3Dプリンターは一度慣れてしまえば楽ですし、なにより早い。私自身の年齢が高くなってきたこともあり、ゼロから立ち上げて開発できる回数は限られていますが、3Dプリンターを使い始めたことでそのプロセスを加速できるようになりました。
3Dプリンターならどんどん試作ができて、試作品の欠点がわかったらすぐに修正もできます。DMMさんに発注しても試作サイクルを10日程度で回せるようになったので、今では3Dプリンターを使わない手はないというレベルの必需品になりました。

一年間でどれくらい新製品を開発されているのでしょうか。

後任に引き継ぐためにも、以前に開発したもののブラッシュアップをする機会が多いので、そこまで新製品の件数が多いわけではありません。ただ、3Dプリンターを使っていることで、残された期間の中でもまだまだ開発ができるな、と実感しています。

3Dのノウハウを活かした新しい仕事へ

今後やってみたいことや、作ってみたいものはありますか?

いい歳なので、そろそろ会社の仕事からは一線を引くつもりなのですが、製品の開発自体は今後も取り組んでいきたいですね。正直、3Dの設計ができて、3Dプリンターを扱う技術のある人は多いわけではないと思っています。個人で仕事を引き受けられるようになれたら嬉しいと考えています。

我々も、技術を持っている人はそこまで多くないと思う一方で、「作りたいけど作れない」と困っている人も多いと考えています。Porco様であれば、これまでのノウハウを活かしてどんどん新しいお仕事に繋がっていきそうですね。

そうですね。ある意味でパソコンひとつあればできる仕事でもあるので、お客さんとディスカッションしながら、お互いにアイデアを出しあって開発していけたら嬉しいです。

この記事をご覧になっている方でもお仕事があれば、ぜひご相談ください。

ありがとうございます。ただ、退職はまだ先なので、来年以降でご相談いただけたらと思います(笑)

それでは本日は以上とさせていただきます。お時間いただきまして、ありがとうございました。

ありがとうございました。

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