サンプル品や治具製作で3Dプリントサービスを活用 インフィニジャパン株式会社

インフィニジャパン株式会社の青柳憲司様よりお話を伺いました。スイスで開発されたMMP Technology®という表面仕上げ、磨き技術の受託サービス加工の事業を展開しています。サンプル品の造形や対象物を固定する治具製作で、3Dプリントサービスを活用されている事例のご紹介いたします。

青柳憲司様 プロフィール
インフィニジャパン株式会社 専務取締役。
三菱重工業株式会社、ケンマージャパン株式会社にて勤務。2017年にインフィニジャパン株式会社設立。翌年工場稼働開始。

金属造形品のサポート材除去が大変だった。サポート材を一つ一つ除去して金やすりで削る作業が必要で、休日がつぶれてしまった。

サポート材の除去をしてもらった。また、チタンの価格が驚くほど安かった。

造形物のサポート材の除去を、高い技術で丁寧におこなってもらえていることに感心した。

スイス発の表面仕上げが強みのインフィニジャパン様

まずはインフィニジャパン様の会社概要をご紹介いただけますか?

弊社は、スイスのBinC Industries社と契約を結び「MMP Technology®」という表面仕上げ・磨き技術の受託サービス加工を長野県松本市でおこなっています。
この技術はジュエリーの会社から生まれたこともあり、美しい表面加工を可能としています。

MMPとは何でしょうか?

マイクロ・マシーニング・プロセス(Micro Machining Process)の頭文字を取っています。
粗さレベルの細かな凹凸をせん断破壊で除去し、表面を平滑にしていく技術です。

具体的には、どういったものを磨かれていますか?

たとえば、金属で作られたタービンブレードや歯車などです。
お客様から磨かれていない部品をお預かりして、鏡面など、必要なレベルまで磨いてお返ししています。


手前がMMP Technology®で表面仕上げしたサンプルで、奥が加工なしのサンプル。
DMM.makeで造形。

MMP Technology®について

インフィニジャパン様のMMPは、どのような技術でしょうか?

我々の技術は表面の磨き技術と申し上げましたが、厳密には表面の波、凹凸を周波数ごとに選択的に取り除く技術です。
表面上の凹凸だけを取り除けるので、素材本体の形を維持したまま鏡面のように磨ける技術です。

具体的には、どのようなプロセスでしょうか?

簡単にご説明しますと、MMP処理タンクという箱に、対象部品を治具でしっかりと固定していき、企業秘密のマイクロツールと触媒という処理メディアを入れます。
あとは機械のスイッチを入れると、多くの粒がタンク内で一気に動き始めて、凹凸を削り取って、物理的な作用で磨いています。


MMP工程の概要
このとき、中に入れた粒同士が結合して小さな塊を形成しますが、ユニークかつ都合のいい特性を持っているんです。
小さな塊の表面の凹凸が、対象部品の表面の凹凸にフィットする特性がありまして、マジックテープのように食いつきます。

装置の駆動力によってタンク内では粒同士が横から押し合っていき、せん断方向に力が加わることで表面の凹凸ごと削り取っていく仕組みです。

なるほど。通常の研磨における研磨剤の粒子の違いと同じですか?

研磨剤の場合は小さな砥石による砥粒摩耗の現象で磨いていきます。
そのため、砥粒が当たりやすいエッジなどの形状が崩れやすい傾向があります。

一方、MMPは凹凸をもぎ取る技術で、粒の大きさを変えれば削る凹凸の大きさも変えられます。
表面粗さレベルの凹凸だけを取ることで、比較的形状を維持したまま、鏡面に見えるところまで磨けるという技術です。

MMPを使えば職人レベルの磨きを1万個でも加工できる

通常の研磨と比べて、MMPを使うメリットは何ですか?

一点物であれば、上手な職人さんに依頼したほうがスムーズに進められると思います。
ただ、たとえば1万個の部品を、まったく同じ品質で磨いて欲しいといわれたら、手磨きだとなかなか難しいですよね。

MMPによる表面処理は、ある程度の数をまとめて一気にMMP処理タンクの中で加工できます。
中量産品の表面加工をする場合は、MMPにメリットがあると考えています。

なるほど。
職人さんのような熟練したスキルが不要で、まとめて量産できることがメリットといえそうですね。
一度のMMPで、どれくらいの大きさの部品を加工できますか?

MMP処理タンク1つが直径45~60cmぐらいの大きさです。直径30cmぐらいある3Dプリントされた金属部品を加工したことがあります。一方で数cm程度のものを、1回のMMPでたくさん処理することもあります。

3Dプリンターでマット仕上げや鏡面仕上げが一目瞭然

こちらはDMM.makeで造形したもので、インフィニジャパンの技術力をお客様に分かりやすく手に取っていただきながら示せるサンプルです。
「123D Design」でデータを作成し、御社に「MMP」と立体物を出力してもらいました。左側から、未処理・マット仕上げ・鏡面仕上げと加工しました。


左側から、未処理・マット仕上げ・鏡面仕上げにMMP加工。
全く見え方が違いますね!
この「Ra」の数値が鏡面に見えるかどうかに関係してくるのですか?

実はRaの数値と鏡面に見えるかどうかは別の概念です。
Raはあくまで粗さの平均値であって、表面のかたちを表すパラメーターではないのです。同じRaの数字でも細かい凹凸があれば曇って見えるし、なだらかな凹凸であれば鏡面っぽく見えることがあります。

「Ra=0.02μm以下イコール鏡面」と認識されているお客様も多くおり、「鏡面とは?」「Raとは?」を説明するために、こちらの造形物は、すさまじく重宝するサンプルになりました。
凹凸感を残しながらピカピカにする仕事を、MMPではできます。

ちなみに、さまざまなお客様から「3Dプリントされた金属製品を磨いてほしい」と仕事をいただきますが、よくある粗さはRa=8μm~15μmくらいで、ときどきRa=20μmオーバーのものもあります。
Ra=6μm程度で部品を納入してくれた御社は「丁寧な造形や後処理をしているなぁ」と感じています。

ありがとうございます! 非常によくイメージができました。
弊社で出力したものがお役に立っていてよかったです。

「1桁違うのではないか」と驚いたDMM.make「チタン」の価格

今回はチタンを使っていただきましたね。素材を選んだポイントとしては金属磨きのサンプルとしてわかりやすいからですか?

その通りです。
一般的に「チタンの磨きは難しい」と言われているんですよね。
「インフィニジャパンの技術ならチタンの磨きも問題ない」とアピールできる良い材料でした。

確かに通常のチタンは粘りがあるのでうまく磨けないと言われていますね。
御社の加工技術を証明するためのよい良い事例になりそうです。

それから当時のDMM.makeでのチタンの価格が異常なほど安かったのも大きな理由です。
数字を1桁間違えているんじゃないかと疑ったくらいです(笑)

他にも以前、MJFで造形したPA12ナチュラルでもご注文いただいたかと思いますが、どのようにご活用されましたか?

お客様からの依頼でMMP処理をする際、対象物を固定するための治具として使いました。それは非常に小さな部品で、いろいろと制約の多い部品でした。
治具を作るにも社内では到底作れない大きさだったので、御社に造形してもらいました。

【軽量で丈夫!】DMM.make 3Dプリント素材紹介「チタン編」

オバマ元大統領のスピーチで3Dプリンターに興味、当時から情報発信をしていたのはDMM.makeだけ

DMM.makeをご利用いただくようになったきっかけは何ですか?

2012年頃、アメリカのオバマ元大統領が「3Dプリンターが流行する!」と大々的なお話をされたときがあって、その頃に興味をもち始めました。
それから実際に作ってみたいものが思い付きまして、インターネットで検索して御社のホームページに行き着いたのがきっかけです。
当時はAutodeskの「123D Design」のダウンロード方法や使い方など、細かな部分まで紹介されていて勉強になりました。

ありがとうございます。
その当時から、インフィニジャパン様でMMPの受託加工はされていたのでしょうか?

当時はしていません。インフィニジャパンの工場ができたのが2018年で、MMPの受託加工はそれからの取り組みです。海外の姉妹会社では、すでにAM*造形品へのMMPビジネスを開始していました。
3Dプリンターは、私の個人的な趣味で情報を集めていましたね。

お仕事で造形される際、他社と比較せずに弊社へご注文されましたか?

御社が当時から様々な情報を発信していたのでそこで学んで、そのまま発注させてもらいました。
当時は個人向け造形サービスをやっている会社が2〜3社くらいしかなかったのですが、その後にデザインしたもので、相見積もりを取ったことがあります。
ただ、目が飛び出るくらいの価格差だったので、御社にお願いしました。

個人的な趣味でもDMM.makeの情報を頼りにしています。
樹脂やプラスチックの造形に興味があって、ナイロンなどで注文させていただくことがありますね。
造形品の強度や精度もよいので、がんばってモデリングすれば電子部品を組み込むこともできます。素人の自分でさえプロっぽいものが作れるので、ありがたい限りです。


青柳様が個人で製作された造形物。電子部品も組み込まれています。
趣味でもご活用いただいているのですね! ありがとうございます。

*AM(Additive Manufacturing):3Dプリンティングなど、材料を一層ずつ重ねて物質を加えていくことによって、形状の複雑な部品やデバイスを直接製造する技術のこと。

休日を潰して気づいたDMM.makeのサポート除去技術の高さ

今もDMM.makeをご利用くださっている理由は何でしょうか?

造形物のサポート材の除去を非常に丁寧におこなっていることに驚かされました。
実はチタン製のサンプルをDMM.makeに発注したあと、他の施設で同じデザインのものを造形したことがあります。

1が他の施設で造形、2がDMM.makeで造形、3がMMP処理をしたサンプル
ところが、その施設は造形サービスとワイヤーカットまでの対応だったので、サポート材が付いたままの状態だったんです。
仕方がないので自分で部品を傷つかないように工夫したバイスで挟んで、サポート材をペンチでプチプチと除去して、金やすりでゴリゴリ加工して…とものすごく大変な思いをした経験があります。

サポート材の除去はなかなか大変ですよね。
しかも、素材が金属だとサポート材も金属だから、余計に取るのが大変ですよね。

そうなんです。チタンは他の金属よりやわらかい素材ですが、それでもどれだけ休日を潰したかわかりません(笑)
当時は何もわかっていませんでしたが、あとから御社の造形物を眺めると、「これだけキレイにサポート材を除去するなんて、スゴイなぁ」と感心しきりでした。
技術の高さや素晴らしさに気付いたので、今も御社に発注しています。

そのように仰っていただけると我々も大変うれしいです。
コスト面はもちろん、サポート面でもご満足いただけているということですね。

はい。
本当に御社には助けていただいております。

ありがとうございます、MMPの技術も勉強になりました。
貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

インフィニジャパン株式会社
ホームページ:https://www.infinijapan.com/

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