知っておきたい!製品開発プロセスと3Dプリンターの活用方法をDMMが解説

近年ではものづくりの開発プロセスにおいて、3Dプリンターが活用されるケースが増えています。
そのため、これから製造業やものづくりに携わる技術者・開発担当者の方々には、ものづくりの開発プロセスと3Dプリンターの活用方法を理解したうえで、製品開発の効率化と品質向上につなげることが求められます。
そこで本記事では、従来の開発プロセスと3Dプリンターの具体的な活用方法などをDMM.makeの技術営業が分りやすく解説していきます。

ものづくりの開発プロセスについて

会社やプロダクトによって細かな差異はありますが、ものづくりの開発プロセスの大まかな流れは次のとおりです。

【ものづくりの開発プロセス】

  1. 商品企画・要件定義
  2. 設計(要件定義書・仕様書・試作図面等の作成)
  3. 開発(原理試作・機能試作)
  4. 検証(設計検証試験・生産検証試験)
  5. 量産試作・量産

自社の新製品を開発するには、上記の流れで開発プロセスを踏んでいくのが一般的です。

DMMの3Dプリントサービスでは3の「原理試作」時に3Dプリントを活用いただくケースが多いです!

「新製品の開発コストは商品企画段階でほとんど決定される」といわれており、顧客の要望を取り入れつつ、営業や開発、製造チームとのコミュニケーションを密にしながら製品開発をすることが大切です。

これらの開発プロセスにおける重要なポイントをそれぞれ解説していきます。

1.商品企画と要件定義

ものづくりの第一ステップは商品企画です。新商品の企画に限らず、リニューアルの場合も顧客の声を聞き、要件定義からおこないます。
マーケティング部門と連携することもあるでしょう。

要件定義の重要性と具体的な方法

ものづくりにおける開発プロセスでは要件定義が重要です。
要件定義とは、簡単にいうと開発者目線で、顧客の要望を取り入れながらプロダクトの目的や範囲を明確にし、コストやスケジュールを具体的にすることです。
要件定義により、開発する製品が達成すべき目標と、そのために必要な作業内容を明確化できます。
作業内容を明確化できれば、開発に必要なリソースやスケジュールを見積もれ、開発が進むなかで問題点を早期に発見できるようにもなるでしょう。

また、要件定義にて、顧客の要望をより深く理解できれば、開発プロセスの手戻りを減らす効果も期待できます。

【要件定義の具体的な方法】

  • 顧客の特定:その製品の顧客を特定し、ユーザーのニーズと要望を明確にする
  • プロダクトの明確化:プロダクトの目標や範囲を明確にしながら、開発チームのリソースを割り当てる
  • 要件の文書化:ここまでの要件を「プロダクトの概要」「ユーザーの要求」「目標・範囲」などに細分化して、仕様書・要件定義書を作成する

以降は、作成された要件定義書や仕様書をもとにして新製品を開発していくことになります。

2.設計(要件定義書・仕様書・試作図面等の作成)

要件定義を終えたあとは、新製品の設計や原理試作をおこなっていきます。

【設計段階での注意点】

  • 要件定義を参考にして機能面などの正確な設計をする
  • 寸法違いやサイズ間違い、部品選定間違い、相互干渉、指示出しなどが起きないようにする
  • 必ずミスは発生するものとして、ダブルチェックを怠らない
  • これらの注意点を意識しながら製品設計をしたら、設計を元にして原理試作へと進みます。

    3.開発(原理試作・機能試作)

    ここから設計に沿ったものづくりをおこない、試作と修正を重ね、エンドユーザーの手に渡る製品として耐えうるものへ精度を上げていきます。

    原理試作とは

    原理試作とは、設計段階で機能や性能の検証を目的としておこないます。

    【原理試作の役割】

  • 機能や性能の検証:製品の機能性や性能を確認することで問題点の早期発見につながる
  • 設計の改善:問題点が確認されれば設計段階で改善ができる
  • 顧客要求の確認:顧客の要望が反映されているか確認ができる
  • スケジュールの最適化:製品の開発プロセスを最適化できる
  • コスト削減:製品の開発プロセスを最適化することで、コストの削減にもつながる
  • 原理試作は、機能や性能を検証するための物であり、外観などは重視されない傾向にあります。

    反対に「外見を中心に確認するための試作」はモックアップと呼びます。こちらは実際には動かない模型であるため、原理試作とは異なり機能や性能を確認することはできません。モックアップもよく3Dプリントで製作されています!

    原理試作として製品を作ることで、顧客からのリアルな感想やフィードバック、さらなる要望を引き出すこともできます。
    また、早い段階で問題点を発見できる可能性もあるため、以降の開発プロセスでの手戻りを未然に防ぐ役割も担っています。

    原型試作(機能試作)とは

    原理試作を終えたら、さらに詳細な設計を進めていき、原型試作(プロトタイプ)を開発していきます。
    機能試作ともよばれ、開発された製品が要件定義で定めたとおりに動作するかどうかを確認する検証も実施します。

    機能試作は、さまざまな工程に分けられることが多く、技術検証試験(Engineering Validation Test)の頭文字を取って、EVT1〜3のように段階を踏んで試作品を作ります。

    【機能試作の目的】

  • EVT1:実際の使い心地、大量生産時のコスト、動作検証、デザイン検証などをする
  • EVT2:EVT1の結果を踏まえて課題点の対策と実証をする
  • EVT3:EVT2の結果を踏まえて再検証をおこなう
  • 原理試作は機能や性能を検証することを目的である一方、原型試作は外観や素材なども考慮して、完成品の試作を作ることを指します。

    製品開発における「プロトタイプ」とは? 意味やメリット、3Dプリンター活用事例までを紹介

    4.検証(設計検証試験・生産検証試験)

    機能試作の手順を踏んだあと、さらに設計検証試験(DVT)や生産検証試験(PVT)を経て、実際に市場へ出すための量産準備へと入っていきます。

    設計検証試験(DVT:Design Validation Test)とは、国際ルールや規格に照らし合わせた検証や、耐熱や圧力など使用環境下を想定したなかで性能の確認をおこないます。

    試作のなかでも最もパワーを割くステップです。ここで部品の金型を多品種かつ大量に必要とする場合も。

    生産検証試験(PVT:Process verification Test)は、「製品が本当に製造できるのか」を確認する量産フェーズに入る直前のプロセスです。

    5.量産試作・量産

    さまざまな検証工程を経て、要件通りの動作が可能であり、かつ問題がないと判断されれば、いよいよ本格的な製造準備へと取り掛かります。

    製造準備から量産試作、量産までの流れは次のとおりです。

    【製造準備から量産までの大まかな流れ】

    1. 製造準備:製造プロセスに必要な設備や資材、スケジュールを計画して製品の具体的な製造手順を作る
    2. 量産試作:検証を経て問題のない製品を50〜100台程度の少数で量産し、大量量産に移行して問題が生じないかを確認する
    3. 量産:ここまでの開発プロセスを経て完成した製品を大量生産し、市場へ売り出す

    製造準備後は、50〜100台程度の少数で量産試作(Pre-Production)をし、量産時に起こり得る問題点を調査したうえで改善をおこないます。
    製品の品質を確保するためにも、必ず量産試作を経た上で大量生産へ移る必要があるでしょう。

    量産試作とは?製造業の新常識!3Dプリント活用についても解説

    3Dプリンターを活用した開発プロセスの効率化のために

    このように新製品の開発にはさまざまな工程を経る必要がありますが、これには多大な時間とコストがかかります。
    なかでも、機能や性能を確認するための試作を作るだけでも数ヶ月の時間がかかってしまうことも多く、人件費や開発費用などのコストも馬鹿になりません。
    その一方で、近年の製造業ではデジタル技術の活用が進んでおり、製品の開発サイクルが短くなったことで「開発機関の短縮」及び「品質向上」が求められています。

    そこで3Dプリンターなどのデジタル技術をうまく取り入れることで開発プロセスの効率化が見込めます。
    たとえば、3Dプリンターを利用すれば、原理試作や機能試作のスケジュールを短縮しながら、試作評価と再設計をより短いサイクルで回せるようになり、品質設計も高められます。

    DMM.makeの3Dプリントサービスをご利用される方のケースには…
    ・最終製品は金属部品の物を原理試作では価格の安い樹脂で出力する
    ・機能試作では公開している物性などを確認しながら実際に使用する素材に近い素材を出力する
    …などプロセスによって使い分けをされていますね!

    試作~最終製品までも3Dプリントで

    また、3Dプリンターで出力した部品をそのまま完成品に組み込む企業も増えています。

    たとえばDMM.makeでは宇宙産業や農業ロボットのパーツを製作いただいた事例があります。

    DMM.make活用でロケットのアジャイル開発が可能に! インターステラテクノロジズ株式会社 山岸尚登様

    ピーマンの吊り下げ式自動収穫ロボット部品をMJFで製造 AGRIST株式会社

    さらに、近年では金属やシリコンの出力も可能で、ものづくりに携わるすべての会社で3Dプリンターの採用を検討する余地があるといえます。

    3Dプリンター活用で得られるメリットと注意点

    3Dプリントは用途や各プロセスごとに求められる優先事項に照らし合わせることで、大きなメリットをもたらします。

    しかし必ずしも全てのプロセスにおいて3Dプリンティングが万能だとは言えません。どのような使い方ができるのか、詳しく見ていきましょう!

    3Dプリンター活用のメリット

    ものづくりにおいて3Dプリンターを活用のメリットは、次のとおりです。

    【3Dプリンターを活用することで得られるメリット】

  • 3Dプリンターを活用すると金型よりコストを抑えられる場合が多い
  • 試作や製品開発のリードタイムを大幅に短縮できる
  • 3Dデータの調整で複数のデザインに対応可能
  • 従来の工法では難しい複雑な形状の量産にも対応
  • チーム内でのコミュニケーション促進につながる
  • 試作品の使用感やフィードバックを短いサイクルでおこなえる
  • 従来の開発プロセスで試作のために金型が必要な場合、試作の金型を作るだけで数ヶ月以上の時間が必要です。
    さらに、試作の金型を作るだけでも莫大なコストがかかるほか、期間が長引くことで人件費もかさむため、最終製品が完成するまでのトータルコストが高額化する要因となります。
    量産数によるものの、3Dプリンターを活用したほうが金型よりもコストを抑えられる場合が多く、多くの場面で試作や製品開発におけるリードタイムを大幅に短縮できます。
    これにより短い期間で試作品を作り出せるので、それをもとにしたリアルな使用感やフィードバックで、より質の高い製品開発も可能です。

    さらに3Dプリンターを活用すれば、従来の造形方法では難しかった複雑な形状も簡単に造形できます。
    造形方法や形状の問題で諦めていた設計も、難なく開発可能になる点が大きなメリットといえるでしょう。

    3Dプリンターを活用の注意点

    一方で、3Dプリンターを活用する際にはいくつかの注意点もあります。

    【3Dプリンターを活用するうえでの注意点】

  • 3Dプリンターの導入コストや設備投資が高額(家庭用で数万円、産業用で数千万円ほど)
  • CADソフトの操作方法や3D CGスキルの習得に時間がかかる
  • 量産数によっては金型のほうがコストを抑えられる場合もある
  • 使用する素材や積層方向によって強度的な問題が出る場合もある
  • サポート材の除去などに時間がかかる
  • 3Dプリンターを活用することで、これまでの開発プロセスを大幅に短縮しつつ、製品が完成するまでのコストも削減できる一方で、3Dプリンターや関連設備を導入するための費用が高額になりやすく、CADソフトや3D CGのスキルを習得するのに時間がかかる点には注意が必要です。

    また、製品の量産数によっては、3Dプリンターよりも金型を使った製造方法のほうがコストを抑えられる場合もあります。

    製品開発において、3Dプリンターは画期的な技術として注目されていますが、従来の切削加工や解析ソフトによる評価のすべてを代用できるわけではありません。

    DMM.makeの出力代行サービスであれば、「設備投資」「人材コスト」「後処理などの手間」などの課題が解決できます!

    3Dプリントの内製と外注はどう違う?メリットとデメリットをともに紹介

    まとめ:開発プロセスに3Dプリンターを取り入れれば期間とコストの両方を削減できる

    ここまで開発プロセスと3Dプリントの活用法についてお伝えしてきました。3Dプリンターは製品開発に役立つひとつのツールとして取り入れ、要件定義を満たす製品を開発するために、他の技術と併用して活用するのが良いでしょう。

    これまでの開発プロセスを見直し、3Dプリンターの活用を検討することで、製品開発の効率化や品質向上が期待できるかもしれません。
    3Dプリンター活用は、よりスピーディーな試作品作成や製品開発プロセスの効率化が可能になるため、今後ますます重要な技術となることが予想されます。

    3Dプリンターをいきなり購入するのにハードルを感じる方は、手軽に使えるDMM.makeの3Dプリント受託造形サービスもぜひお試しください。

    「こんなシーンに3Dプリントが使えないだろうか?」といったご相談も歓迎です。
    3Dプリンターを使ってものづくりを加速させる使い道を共に見つけていきましょう!

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