エンジニア・デザイナーのためのCADソフトウェア｜『All3DP Pro』翻訳・転載記事

※ この記事はAll3DP.com掲載の記事「The Best CAD Software for Engineers」を翻訳・転載したものです。

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クラウドファイルの共有、ライセンス、フォーマットの互換性など、企業全体で考慮しなければならないことがあるため、どのCADツールがプロフェッショナル用途に適しているのか、判断に迷うことがあります。

現在のトップクラスのソフトウェアの中には、デザインの創造的な探求と3Dレンダリングに重点を置くものもあれば、強力なシミュレーションツールを使った機械的解析に使用されるものもあります。特定の業界に特化したものもあれば、トポロジー最適化やジェネレーティブ・デザインなど、特定のツールに強みを持つものもあります。

これを念頭に置き、互換性のあるオペレーティングシステム、ユニークな機能、そしてもちろん価格など、関連性の高い情報を詳述した洗練されたCADツールのリストをまとめました。

CADが初めての方や、基本的なプログラムで腕試しをしたい方は、Top 10: The Best Free CAD Software in 2023 や CAD for Kids: The Best 3D Modeling Software for Children の記事をご覧ください。

概要

選定のポイント

市場にはプロ仕様の優れた CAD 製品が数多くあります。それぞれの製品は、同じコア機能を共有しながらも、ツールセットやユーザー体験は多少異なります。業界特有の機能やチームコラボレーション能力など、これらの違いを知ることが、正しい決断をするための鍵となります。

このことを念頭に置いて、私たちは客観性を保ち、リストを広げすぎないために、プロフェッショナル向け製品についていくつかの基準を設けました。以下に紹介するソフトウェア群は次の条件を満たしています。

・3Dと2Dの両方の製図機能がある。
・1つまたは複数の産業分野での使用実績がある。
・パラメトリックモデリング機能を持っている。

AutoCAD 2024

AutoCAD は、おそらく史上最も有名なCADプログラムです。CADソフトの祖父と呼ばれるこのアプリケーションは、1982年に初めて発売されました。それ以来、その豊富な機能は非常に多用途なツールであり続け、そのアップデートはCADの最先端を走り続けています。

Autodeskは2023年のアップデートで、ユーザーのCADソフトウェアの使い方に基づいてワークフローを改善するために機械学習を使用していることをアピールしており、それは特に新しいMacro Advisor 機能に現れています。

AutoCADは、建築、エンジニアリング、グラフィックデザインなど、さまざまな産業で使用されています。製造業界では、製品設計用のCADプログラムと、工場のフロアプランやレイアウトに使用するための別のCADプログラムを使うのが一般的で、後者はほとんど常にAutoCADです。

年間サブスクリプションは1,955ドルですが、学生や教育関係者は1年間無制限に無料で利用できます。Windows版とMac OS版では機能セットが多少異なるので注意しましょう。

Inventor 2024

Inventorは、オートデスクが開発した数多くの設計プログラムの1つです。多様なモデリングツール（パラメトリック、ダイレクト、フリーフォーム）、ドキュメント作成、シミュレーション機能をオールインワンで提供しています。

競合ソフトウェアよりも若干ユーザーフレンドリーであると考えられており、そのためエンジニアリングのバックグラウンドを持たない設計者がよく使用しています。しかし、Inventorが強力なツールでないわけではありません。その逆に、 Inventorは、主に建築や製品設計などのプロフェッショナルな用途向けです。

Inventorは産業界でよく知られており、20年以上にわたって市場に存在しており、SolidWorksなど他の有名な選択肢と競合しています。ここで疑問に思うかもしれませんが、AutoCADとInventorの違いは何なのでしょうか？簡単に言えば、Inventorはデジタルプロトタイピングとシミュレーションに特化したプログラムです。製造に焦点を当てており、ユーザーはオブジェクトの性能を知るために可能な限り実世界に近い体験を得ようとするのです。詳細な違いについては、Autodesk Inventor 2024の記事をご覧ください。

他のAutodeskソフトウェアと同様、学生や教育関係者は無料で利用できます。

SolidWorks 2023

SolidWorksは、Windowsのみで動作するソリッドモデリングおよびコンピュータ支援エンジニアリング（CAE）ソフトウェアです。もともとは90年代初頭にMITの卒業生が作ったもので、現在はフランスのDassault Systèmes（3DS）が開発・販売しています。

最も人気のある3Dモデリング・プログラムのひとつであることは間違いありません。3DSの他の製品とは対照的に、SolidWorksは造船、産業機器、建築、さらには医療やエネルギー分野など、より幅広い業界を念頭に置いて設計されています。そのため、SolidWorksのポテンシャルを最大限に引き出すには、幅広いトレーニングが必要であり、エンジニアリングの知識が役立つことは間違いありません。

2023年の新しいアップデートに含まれるのは、アセンブリの最適化とアセンブリワークフローの合理化で、作業をより速く、よりスマートに行うことができます。より複雑な構造を容易にするために、ユーザーエクスペリエンスも向上しています。また、新バージョンでも幾何公差が制限され、図面の標準化が改善されています。

SolidWorksのライセンスは3,995ドルで、サポートとアップグレードのための年間サブスクリプションは1,295ドルです。すべてのコア設計機能を備えた学生版も、年間99ドルでご利用いただけます。SolidWorksを無料で使用する方法については、こちらの記事「SolidWorks 2023: Free Download of the Full Version」をチェックしてください。

興味深いことに、3DSから直接ライセンスを購入することはできません。3DSはリセラーを通じてのみライセンスを販売しており、通常、リセラーはトレーニングやサポートも提供しています。実際、これはCAD業界では標準的な慣行となっており、そのため価格は国やリセラーによって異なる可能性があります。

Fusion 360

AutodeskのFusion 360は、プロフェッショナル向けの堅牢なCADソリューションで、トポロジー最適化やジェネレーティブデザインなどの新しい技術ソリューションも搭載しています。また、製品設計と製造のためのクラウドベースの3Dモデリング、CAM、CAE、PCBソフトウェアプラットフォームでもあります。

このソフトウェアは、ユーザーのAutodeskアカウント内にすべてのファイルとスタディを自動的に保存します。他のCADソフトウェアとは異なり、ネイティブのF3Dファイルには、CAMで生成されたツールパスやシミュレーションを含め、設計からアセンブリまで、プロジェクトに関連するすべてが含まれています。さらに、Fusion 360は、レンダリングやジェネレーティブデザインのような重い処理タスクをクラウド上で実行します。

このCADは、スタートアップ企業や小規模企業（設立3年未満、従業員10人未満、年間売上10万ドル未満）向けに無償ライセンスを提供しているため、起業家にとって理想的です。また、学生や教育者は、シミュレーションやCAMを含む全機能を利用できる3年間の無料ライセンスを取得できます。有料ライセンスも年間約550ドルと非常に経済的です。

Inventorとの比較については、Fusion 360とInventorの比較記事「comparing Fusion 360 and Inventor.」をご覧ください（この記事が最初に掲載された後、Fusionはいくつかのアップグレードを行っています）。

NX Core Designer

産業用製造業の巨人Siemensによって開発されたNXは、入手可能なプロフェッショナルCADツールの中でも最高峰に位置します。NXにはNX for DesignとNX for Manufacturingの2種類があり、これらはシームレスに統合されています。

NXの設計バージョンに含まれるモジュールには、以下のようなものがあります。NX Core Designer：コンポーネントのソリッドモデリング、アセンブリモデリング、シートメタルデザイン、フリーフォームモデリング、および収束モデリングが含まれます。NX Advanced Designer：Coreに加えてルーティング、サーフェス解析ツールなどが含まれています。NX Mold Designer：金型パーツデザイン、ツールアセンブリレイアウト、ツールデザイン、およびツールの検証が含まれています。NX Scan to Part：インポートされたスキャンされた3Dデータを完全な機能を備えたソリッドまたはサーフェスパーツに変換する機能が含まれています。NX Drafting & Layout：NXスケッチツールを使用して、3Dパーツとアセンブリのエンジニアリング図面、または2Dデザインレイアウトを作成する機能が含まれています。

Siemensはこれらのモジュールを個別に価格設定しており、必要な機能だけを購入することができます。

NX for Designでは、トポロジー最適化機能が拡張されました。Siemensは、トポロジー最適化を将来のエンジニアリング手法として注力しており、基本的な設計上の検討事項から、部品生成、積層造形、機械加工全体にトポロジー最適化を織り込んでいくことに移行しています。新しいNX Topology Optimizerは、新しいパーツを自動的に作成し、3Dプリントする前にテストと検証を行うワークフローです。

このCADは、さまざまな業界、特に自動車業界では標準とされており、ゼネラルモーターズ、フィアット・クライスラー、日産、スズキが使用しています。NX Core Designerだけで始める場合、年間4884ドルです。すべてのモジュールを含むFull NX for Designの価格は約40,000ドル以上です。

CATIA R2023x

CATIAは、Computer Aided Three-Dimensional Interactive Applicationの頭文字をとったもので、3次元CAD、CAM（Computer Aided Manufacturing）、CAEの3つの機能を備えたマルチプラットフォームツールです。

このソフトウェア群もDassault Systèmesが開発していますが、自動車や航空宇宙などの分野で必要とされる非常に詳細な部品やアセンブリを扱い、シミュレーション・ソフトウェアでテストするよう特別に設計されています。実際、CATIAはフォード、ホンダ、ルノー、さらにはテスラなど、ほとんどの自動車メーカーが最初に選択するCADとなっています。また、ボーイング社が777旅客機や新型の787シリーズを開発する際にも使用されました。

CATIAは間違いなく高度なエンジニアリングツールであり、市場でトップのCADソフトウェアの一つです。SolidWorksと同様に、地域のリセラーを通じて商業化されており、最新のV5基本ライセンスは現在約12,000ドルで、年間サブスクリプションが2,000ドルかかります。追加のモジュールにも追加料金がかかります。

Creo 10

米国PTCのCreoは、他の多くの企業と同様に、エンジニアが製品を想像し、設計し、作成するのを支援するためのさまざまな機能と性能を備えた拡張可能なツールです。アディティブ・マニュファクチュアリング、ジェネレーティブデザイン、IoT（モノのインターネット）、モデルベース定義（MBD）、拡張現実（AR）のためのモジュールを含んでいます。

​​Creoは、ライバルのFusion 360やSolidworksに対して、特に2023年6月8日に発売されるバージョン10に見られる最新のアップデートの山で、じりじりと追い上げています。一言で言えば、Creo 10はスピードに焦点を当てています。コア機能の強化により、より短時間でより優れた設計が可能になりました。最新のアップデートには、新しいコンポジットツールや、電化製品および人間工学設計、MBD、シミュレーション主導設計、製造のための機能強化が含まれます。  SaaSとして利用可能なCreo+は、リアルタイムのコラボレーションを実現するクラウドベースのツールを提供し、ライセンス管理と展開を合理化します。

PTCはまた、Ansysの先進的なマルチフィジックス解析をCreoシミュレーション・ポートフォリオに組み込むことで、シミュレーションとジェネレーティブ設計の機能を強化しました。このアプリケーションは、すでに強固なジェネレーティブ設計技術であり、新しい機能も追加され、設計時の安全率と固有周波数制限を考慮した最適化スタディを定義することができます。

Onshape

同じくPTCのOnshapeは、バージョン管理やオンラインチームでの共同作業を必要とするプロフェッショナルユーザーを対象とした、エンタープライズグレードの強力なCADソフトウェアです。

業界初の純粋なSaaSプラットフォームは、コンピュータ支援設計とデータ管理、コラボレーションツール、リアルタイム分析を一体化します。このクラウドネイティブ・ソリューションは、リモート設計チームの柔軟性を必要とする企業を対象としており、エンジニアがいつでも、どこからでも、どんなデバイスでも一緒に作業できるようにしました。

このCADソフトウェアの最も興味深い特徴のひとつは、コラボレーション・モードです。インストール型のCADやPDMとは異なり、OnShapeはクラウドを通じて、チーム全員が同じCADワークスペースと同じデータに一元的に即座にアクセスできます。もう1つの優れた機能は、コピーを保存したり、多数の異なるファイルバージョンを追跡したりする必要なく、マスター設計を管理できることです。

2023年の新機能として、Part Studioには相互トリム機能や穴の公差と精度の向上などの改善があります。アセンブリに挿入されたスケッチが表示されるようになりました。パーツとアセンブリの非表示線はアイソメトリックビューで正しく表示されるようになり、半径寸法線には選択された円弧または円内に表示するオプションが追加されました。これらはいくつかのアップグレードの例です。

Solid Edge 2023

SiemensのSolid Edgeは、NXのスターターバージョンと言えるでしょう。Solid Edgeの方が習得が簡単で、機能がシンプルであることは言うまでもありません。別の言い方をすれば、柔軟性と使いやすさ（およびコスト）のトレードオフです。それでも、Solid Edgeは、PLMソリューションとの統合や、同様のCAMおよびCAE機能を提供しています。

Solid Edgeは、パラメトリック・モデリングとダイレクト・モデリングの両方をミックスしたモデリング手法であるシンクロナス・テクノロジーで最もよく知られており、後者のシンプルさとヒストリーベース・モデリングが提供するハイレベルな制御を活用しています。ただし、通常のパラメトリック・モデリングとダイレクト・モデリングも可能です。

2023年バージョンでは、ユーザーインターフェイスが改善され、ワークフローが合理化されました。この最新バージョンでは、Solid EdgeのデータをXcelerator製品との間で転送することが、これまで以上に簡単になりました。新しい柔軟なライセンスオプションにより、必要なときに必要なアドオンを選んで支払うことができます。

Shapr3D

Shapr3Dは、CADソフトウェアの新しいカテゴリーを立ち上げた、おそらくモバイルプラットフォーム向けに特別に設計された最初のプロフェッショナルCADアプリケーションです。ごく最近までiPad用のみでしたが、MacOS版がリリースされ、Windowsベータ版も徐々にリリースされています。

Shapr3Dはデザインのプレゼンテーションと視覚化に重点を置いています。2016年にハンガリーの企業によって開発されたShapr3Dは、直感的なデザインと携帯性を目指しています。SolidWorksと同じSiemens Parasolidエンジンを使用し、STEP、IGESなどの標準的なCADファイル形式とネイティブで連携し、堅固な基盤を提供しています。

タブレットとデジタルペンを使って製造用の精密なデザインを行うことは、かなり難しく、適さない場合もあります。ただし、Shapr3Dは初期の概念設計に重点を置いており、迅速で簡単な反復が求められる段階での使用に向いています。

iPadの画面を通じてアイデアを伝えることも非常に効果的であり、デザインプレゼンテーションでプロジェクトの核心を伝える可能性が高くなります。その後、より複雑で精密なCADソリューションに進む前に、重要な要素を示すことができます。Shapr3Dのサブスクリプションは年間239ドルから499ドルまでの範囲で、学生や教師向けに無料版も提供されています。

nTop4

時代は変わりつつあり、新しいテクノロジーには新しいツールが必要です。ニューヨークを拠点とするnTop社（旧社名：nTopology）は、”高度な製造業のための次世代のエンジニアリング設計ツール “を構築することを目標としています。

nTopは、design for additive manufacturing（DfAM）のための設計プラットフォームとして多くの人に知られていますが、ジェネレーティブデザイン、多機能最適化、軽量部品開発などのユニークな機能も組み込まれています。このソフトウェアは、他のCADやCAEソリューションと並行して動作するように開発され、すべての主要なCADおよびメッシュフォーマットとシームレスに動作します。

このソフトウェアは、アディティブ・マニュファクチュアリング技術とアルゴリズミックデザインに重点を置いている点で、従来のCADツールとは異なります。また、日常的な製図作業や文書作成には向いていませんが、航空宇宙やロボット工学などの産業分野のエンジニアに使用されています。

全体として、nTopologyは、アディティブ・マニュファクチュアリング技術がもたらす設計の自由度を専門家が活用するためのユニークなツールです。従来の CAD ツールと並行して使用することで、CAD 開発の既存の構造を維持しながら、進化する作業プロセスに対応することができます。

他のツールや選択肢

これまで紹介したのはトップクラスのオールラウンドなCADツールですが、特定の業界に特化したものも数多く存在します。

3Dモデリングの世界は広く、多様です。以下のプログラムは、私たちの最初の基準をすべて満たすものではありませんでしたが、宝飾品、アニメーション、インテリアデザインなど、明確な業界で使用されている実戦的なプロフェッショナルツールであることは間違いなく評価に値します。

Cinema 4D

Cinema 4Dは、ビジュアルエフェクトやアニメーションのための非常に人気のある3Dモデリングプログラムで、直感的でユニークな機能を数多く備えています。実際、Cinema 4D は比較的使いやすく、ユーザーフレンドリーなインターフェースで知られています。Maxonによって開発・発行され、いわゆる永久ライセンスは3,850ドルまでで、月額サブスクリプションは約115ドルです。

Rhino3D

WindowsとMacOSの両方でサポートされているRhino3Dは、テクニカルな3Dモデリングソフトウェアで、産業用途でよく使用されていますが、製品デザインツールも備えています。NURBSモデリングに基づいており、コンピュータグラフィックスにおける曲線や自由曲面の数学的に正しい表現を作成します。このため、Rhino3Dは機械設計の作成に最適なツールである反面、ワークフローが遅くなる可能性もあります。シングルユーザーの商用ライセンスは995ドルです。

Houdini

Houdiniは、ノードベースのワークフローを中心に設計された3Dモデリングツールです。パラメトリックモデリングに似ており、ユーザーは個々のパラメータ（ここではノードと呼ばれます）を編集することでモデル全体を変更することができます。これにより、一定の品質レベルで複雑なジオメトリを素早く生成することができます。Houdiniは、プロのゲーム開発や3Dアニメーションにおいて人気のあるツールで、永久ライセンスは最大4,495ドルの価格帯で提供されています。

SketchUp

初めてSketchUpを使うユーザーを驚かせるのは、その整然としたインターフェースです。直感的なツールのおかげで、学習開始から数時間で、簡単な3Dモデルをゼロから作成することが可能です。SketchUpは、主に建築やインテリアデザインのアプリケーションで使用されています。3D Warehouseと呼ばれる膨大なモデルのライブラリには、メーカーから提供された何百もの家具や装飾品が含まれています。Proバージョンは年間299ドルで販売されています。