CAD・CAE・CAMの違いをシンプルに説明|『All3DP Pro』翻訳・転載記事

※ この記事はLucas Carolo氏によるAll3DP.com掲載の記事「CAD / CAM / CAE: The Differences – Simply Explained」を翻訳・転載したものです。

CAD・CAE・CAMという似たような略語に混乱している方のために、異なる機能を持ちながらも関連性のある、これらのプロセスを個別に紹介します。

 

計算能力

設計、テスト、製造のデジタル化はあらゆる業界に革命をもたらした(出典:Materialise via Digital Engineering

略語は専門的な環境ではとても便利ですが、多くの場面で使われるので時には戸惑うこともあるでしょう。3Dプリンティングやエンジニアリング、製造業の世界では、CADCAECAMという言葉を耳にしたことがある人も多いでしょう。しかし、それらの意味を正しく理解しているでしょうか?

この3つの略語はすべて、アマチュアからプロフェッショナルまで、ものを作る人々をサポートするためのソフトウェアに関連する用語です。全てに共通する「CA」は「Computer-Aided(コンピュータによる支援)」を表し、最後の文字はそれぞれ「Design」「Engineering」「Manufacturing」といった具体的なサポート内容を示しています。

CADは、おそらくこの3つの中で最もポピュラーなもので、80年代に初めて確立され、今では(すべてではないにせよ)ほとんどのエンジニアリング分野で必須のツールとなっています。部品や製品をデジタルで設計できるようになったことで、私たちのものづくりは大きく変わりました。また、計算工学的解析を統合し、ものの生産方法を改善するためのプラットフォームも提供されています。

この記事では、製品開発におけるCAD・ CAE・CAMの違いを探ります。実例として、エアーコンプレッサーのローターを設計・製造するために必要なステップをいくつか紹介しながら、これらのソフトウェアが実際の現場でどのように関係し合っているかを確認していきましょう。

CADによる設計

CADは手間と時間のかかる手書き設計を代替した(出典:Lucas Carolo via All3DP)

CAD(Computer Aided Designコンピュータ支援設計)は、設計や技術文書制作のために使用されるソフトウェア技術であり、手作業による製図に取って代わるものと定義できます。デジタルな”製図”ボードは、迅速で柔軟な設計環境を提供するだけでなく、異なる設計者やエンジニアを交えてもドキュメントの一貫性を保ちます。

CADはどのように役立つか

当初、CADツールは2Dの手描き製図に取って代わったに過ぎませんでした。CADが導入される以前、製品がどのように作られていたかを想像してみましょう。そこでは、巨大な部屋にいるデザイナーが手描きで、建物全体や自動車といった複雑なもののディテールを描いていたのです。

しかし、ソリッドモデリングサーフェスモデリングなどの3Dモデリング技術や、それらを扱うソフトウェアの登場により、デジタルデザインは文字どおり別次元のものとなっていきました。CADツールのために開発された3D環境は、他のコンピュータ支援ツールの基礎を築いていきます。

一般的に、CADは品質と生産性を大幅に向上させ、世界中のチーム間で迅速なコラボレーションを可能にします。その主な利点は、開発サイクルを短縮し、新製品の市場投入までの時間を短縮することです。また、CADは設計プロセスの多くを効果的に自動化するため、高いレベルの標準化にも寄与しました。

主要なCADソフトウェア

SolidWorksは、専門的に使用される最も一般的なCADソフトウェアの1つですが、他にも多くの種類があります。たとえば、CATIAは自動車産業や航空宇宙産業における開発の標準とされています。趣味でCADを使う人には、AutodeskのFusion 360が人気です。

ローター開発での実例

ローター開発の例であれば、設計チームは最初の構想から最終的な製品設計までCADツールを使用できます。単一の部品である今回は使用しませんが、アセンブリ(組み立て)をおこなう場合、CADはBoM(部品表)と呼ばれる必要な部品の完全なリストも提供します。

CADでの設計が終わったら、次はローターが意図通りに動くことを確認する必要があります。

CAEによる解析テスト

デジタルシミュレーションは、エンジニアが設計上の重要な意思決定をするのに十分なデータを提供する(出典:Lucas Carolo via All3DP)

CAE(Computer Aided Engineering:コンピュータ支援エンジニアリング/解析)は、さまざまなタイプの工学的解析をサポートする計算ツールの使用を包括する用語です。CAEツールは実用的に、現実世界の条件をシミュレーションすることで、部品や製品の堅牢性や性能をチェックします。

CAEを用いたデジタル解析で得られるデータによって、設計の妥当性を裏付けることができるため、特に開発の初期段階において重要な役割を果たします。さらに、CAEツールは、製品の開発ロードマップ全体においても、エンジニアが設計を検証し、最適化するのに役立ちます。

CAEはどのように役立つか

CAEツールは、3Dモデルと解析を実行するためのプラットフォームを必要とするため、多くの場合CADと統合されています。一般的に、これらのツールは、構造解析、熱分布、流体の流れなど、さまざまな種類のシミュレーションを、部品に期待される役割に従って実行します。

その結果は、エンジニアがCADファイルに戻って、より質が良く、より効果的な製品を生産前に作成するのに十分なデータを提供するはずです。さらに、物理的な試作やテストが少なくて済むため、開発コストを大幅に削減できます。

主要なCAEソフトウェア

AltairのHyperWorksは、最もよく知られたCAEソフトウェアの1つであり、Ansysの様々なタイプのシミュレーション用パッケージソリューションがこれに続きます。前述のFusion 360もいくつかのCAEツールを提供していますが、これらは有料版と教育版でしか利用できません。

ローター開発での実例

ローターの開発では、設計段階でCADとともにCAEソフトウェアを使用しました。試作に先んじて最終設計を検証した上で、最終的な製造に移行します。

CAMによる製造加工

CAMツールは、部品形状から最適なツールパスを提供し、製造時間を短縮する(出典:Lucas Carolo via All3DP)

CAMとは、Computer-aided manufacturing(コンピューター支援製造)の略で、基本的に製造工程の自動化を意味します。CAMソフトウェアは、機械加工、フライス加工レーザー加工、3Dプリント、その他の数値制御製造システムなど、文字通りCNCシステムのあらゆる側面を制御します。

CAMが導入される以前は、熟練した機械工が手作業でCNC製造システムをプログラムする必要があり、それには多くの経験が必要でした。現在では、CAMソフトウェアは、複雑なタスクを達成するために必要なすべてのプログラミングを自動化することにより、このプロセスを合理化しています。

CAMはどのように役立つか

CAMは、効率性や一貫性、そして最も重要なスピードという、自動化のあらゆる利点をもたらします。ツールパスを最適化することにより、パーツを可能な限り速く製造することができるのです。

CAMは製造パートのみを扱いますが、CAMによる分析中に重要な洞察が得られた場合、製品に軽微な設計変更を加えることもできます。たとえば、細かなディテールや鋭利な角を取り除くことで、製造工程が改善される可能性があります。

要なCAMソフトウェア

MastercamPowerMillBobCAD-CAMは、様々な業界や製造工程で使用されているプロフェッショナルなCAMパッケージの素晴らしい製品です。繰り返しの紹介になりますが、Fusion 360も最大3軸制御のCAM環境を提供しています。

ローター開発での実例

デザインが検証されたローターに対し、チームはCAMツールと利用可能な機械を使って、製造する最善の方法を考え出すことになります。パーツの品質を損なうことなく、より速く。CAMソフトウェアは、エンジニアがそのスイートスポットを見つけるのを手助けする最高のツールであることは間違いありません。

まとめ

部品の設計と生産は簡単ではないが、コンピューター支援ツールは確実にそれを容易にする(出典:News Break)

ローターの開発・製造には、かなり多くの作業が含まれますが、このようなプロセスにおいてコンピュータ支援ツールがいかに重要であるかがお分かりいただけたでしょうか。さらに重要なことは、この記事は、CAD、CAE、CAMのその違いについて明確にスポットライトを当てたことにあるでしょう。

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