DMM.make 3Dプリントで扱える素材を紹介する本シリーズ。今回のテーマは「Antero800NA|FDM」です。造形サンプルを見ながら、特徴やオススメ用途などを解説していきます。ストラタシス・ジャパン社のプロダクト&サービス部 プレセールスアプリケーションエンジニアより一言解説もいただいております。
「Antero800NA|FDM」基本スペック
Antero800NAとはストラタシス社の3Dプリンター「F900」でFDM方式にて出力できるスーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)の一種です。PEKK(ポリエーテルケトンケトン)ベースの樹脂素材で、高い耐久性をもち、厳しい環境下でも使用できます。
得意なジャンル | 航空宇宙、機能試作、工業製品、治具、最終製品 |
特徴 | 高機能、耐熱性、耐薬品性 |
カラー | ナチュラル(単色) |
価格帯目安 | お問合せください |
質感 | ざらざら |
中空構造 | 基本指定不可(※内部充填率の希望がある場合はお問い合わせください。) |
造形可能な最大サイズ | 縦914×横607×奥行914(mm) |
発送目安 | 6〜16日 |
形状先端は最小幅で形状先端は最小幅で0.254mm程度まで再現可能です。
(※肉厚は1mm以上を推奨します。)
その他の細かな条件はデザインガイドラインを参照してください。
PEKKとは?
Anteroの原料となるPEKKとはポリエーテルケトンケトンの頭文字をとったもので、芳香族ポリエーテルケトンの一種です。
PEEK(ピーク材)も同じく芳香族ポリエーテルケトンのスーパーエンジニアリングプラスチックです。
名称だけでなくその特性も似ているこれら2つの材料は、高い機械的強度、高温耐性、疲労耐性、低可燃性などの特性をもっています。
PEKKとPEEKの違い
PEKKはPEEKと比較して、より柔軟で、融点が高くなります。
また、PEKKは化学流体に対してより耐久性があり、誘電安定性が良く、有害な煙を出さないため、航空宇宙材料として有用です。
どちらの材料も滅菌できるため、医療用途にも使用できます。
PEEKは物性をコントロールできませんが、PEKKは原料の比率を変えることで結晶化度・ガラス転移点・融点をコントロールできます。
参考:3Dnatives“PEEK vs PEKK: Which High Performance Material Should You Choose?”
岡畑興産株式会社「PEKKやPEEKとは?その特徴や用途、違いを詳しく解説します!」
Antero(アンテロ)の3つの特徴
Antero(アンテロ)とは非晶性スーパーエンジニアリングプラスティックであるポリエーテルイミド(PEI)の樹脂素材です。
DMM.makeでは現在こちらの「Antero800NA|FDM」と「Antero840CN03|FDM」の取扱いがあります。
「Antero800NA|FDM」について詳しくみていまきましょう。まず注目すべき3つの特徴はこちらです。
- 高強度(強靭性・耐摩耗性)
- 高耐熱性
- 低ガス放出特性・優れた耐薬品性
高い強度(強靭性・耐摩耗性)
「Antero800NA|FDM」は高い強度を誇り、強靭性・耐摩耗性にも優れています。
各物性の数値は以下の通りです。
引っ張り強さ(XZ方向) | 73.0 Mpa |
引張弾性率(XZ方向) | 3070±60 Mpa |
破断伸び(XZ方向) | 6.1% |
高耐熱性
「Antero800NA|FDM」は耐熱性にも優れ、各荷重たわみ温度は以下の通りです。
荷重たわみ温度 (0.45MPa) | 150℃ |
荷重たわみ温度(1.82MPa) | 147℃ |
低ガス放出特性・耐薬品性
さらに「Antero800NA|FDM」は低ガス放出特性(アウトガス特性)も誇り、再凝縮物質量比は0.01%とULTEM(ウルテム)素材と同等またはそれ以上の性能をもっています。
ULTEMよりも強度や耐薬品性が必要とされるシーンでの活用がおすすめです。
また耐薬品もあるので、オイルや薬品などが使われる過酷な環境下での使用も可能です。
そのため航空宇宙、自動車・モータースポーツなど要求水準が高いシーンでも活用いただける素材です。
利用事例・オススメ用途
「Antero800NA|FDM」は高機能である分、価格も汎用的な樹脂素材と比較して高価でもあるため、ジェット燃料や油圧作動油が利用される箇所での最終製品としての活用がオススメです。
より具体的には、ストラタシス社では以下のような業界・用途で利用された実績があります。
- 航空:洗浄薬品、燃料、作動油、高温にさらされる部品
- 宇宙:宇宙船、組み立てやテスト飛行中などの地上での支援ツール
- モータースポーツ:ボンネット下部品や燃料系コンポーネント、高温のブレーキ冷却ダクト
- 業界問わず:薬品や高温、オイルやガスにさらされる産業機器や部品
スーパーエンジニアリングプラスチックを3Dプリントするメリットは…
- 過酷な環境下での長期間使用
- 複雑形状
- 少量生産
といった場面で発揮されます。
「オイルやガスなど特殊なシーンで強度のある素材が必要」「1パーツだけ作ってみたい」といったご希望がありましたら、DMM.make にて「Antero800NA|FDM」をご活用ください!