ラティス(Lattice)とは英語で「格子」を表す言葉。3次元上に格子が周期的に敷き詰められた形状はラティス構造と呼ばれ、3Dプリントの相性が良いことから多くの場面で採用されています。そんなラティス構造の特徴や、3Dプリントでの活用事例について見ていきましょう。
ラティス構造とは
ラティス構造は、枝状に分岐した格子が周期的に並んだ立体形状のことを指します。この構造の特徴としては、外形の形状を維持しながら中身を空洞化し、軽量化が図れることが挙げられます。強度と軽量性が両立する構造ですが、その形状の複雑さゆえに既存の加工法での採用には制限がありました。
一方、3Dプリントは造形可能な形状の自由度が高く、ラティス構造を用いても造形の難易度が大きく変わらないため、さまざまな事例で採用されています。ラティス構造を持つデータは直接モデリングするほか、最小のパターンとして登録した構造を任意の箇所に適用できるモデリングソフトなどを用いて制作できます。
ラティス構造のメリット
ラティス構造で設計・製造するメリットとはなんでしょうか? 3つのポイントを見ていきましょう。
- 強度を保ちつつ軽量化が図れる:格子の太さや形状を工夫することで、強度と軽量化を両立できます。
- 通気性や冷却効果が高い:格子の中に空間があるため空気を通しやすく、密度の高い立体よりも通気性や冷却効果に優れています。
- 弾力性を持たせられる:柔軟性のある素材で造形すれば、バネやスポンジのような弾力性が生まれます。
これらの特性が活躍する分野として、航空宇宙産業や自動車産業における機械部品や、医療分野における人工骨や装具などが挙げられます。製品の軽量化や強度向上、身体にフィットする形状の開発などにラティス構造が寄与しています。
トポロジー最適化とラティス構造
トポロジー最適化とは既存の形状を与えたうえで、その範囲内で条件を満たすような形状を生成するモデリング技法のこと。そこで導き出される形の多くは、元々の形状の一部が省かれたものとなるため、強度と軽量化を両立するラティス構造と同じような効果を持っています。
トポロジー最適化で導き出した形状にラティス構造を適用することや、ラティス構造自体をトポロジー最適化で作ることなど、2つの技術を重ねて利用することも可能。いずれも複雑な形状を造形できる3Dプリントと相性の良い技術と言えるでしょう。
ラティス構造の種類
ラティス構造は3Dモデルの内部に適用するパターンと、表面だけに適用するパターンに分けられます。
モデルの内部に適用する
立体物の内部をラティス構造の繰り返しによって埋めるもの。汎用性は高いですが、有機的な形状などを扱う場合、立体の端ではパターンが途中で途切れてしまうこともあります。
モデルのサーフェス(表面)に適用する
表面形状(サーフェス)に合わせてラティス構造を生成するもの。形状が途中で途切れることはありませんが、内部の構造は空洞になるか、別途定義する必要があります。
ラティス構造と3Dプリント
多くのメリットがあるラティス構造を造形するために、3Dプリントの技術が活躍しています。軽量化や通気性、柔軟性などのメリットを生かすほか、ラティス構造の形状を工夫させることで、これまでにはない特殊な物性を生み出すような研究も進んでいます。
金属多孔質体(ポーラスメタル)とラティス構造
ラティス構造のように多くの空間や穴を含んだ金属は、金属多孔質体(ポーラスメタル/ポーラス体)と呼ばれています。これまでは金属内にガスを発泡させる、スポンジのような製法で制作されてきましたが、ラティス構造や3Dプリントを用いることで、より意図的に多孔質の立体を制作でき、新たな機能を生み出すことができているようです。
ラティス構造のデザインを用いた活用事例
Aerojet Rocketdyneは宇宙空間で使うための部材にラティス構造を適用し、製造コストを抑えています。
SI-BONEはラティス構造を持つ3Dプリント性の金属インプラントを開発しました。
JINSはつるにラティス構造を用いたサングラスを開発しました。着用時に締め付けのないクッション性と通気性を兼ね備え、快適なフィット感を実現しています。
まとめ
この記事ではラティス構造の定義や実例を紹介しました。外形を維持しながら中身を空洞化できる、3Dプリントとも相性の良い構造によって、宇宙業界や医療業界などでの実用化が進んでいます。また、メガネなど身近な日用品にも使われており、生活のなかでラティス構造を目にする機会が増えていくかもしれませんね。