北海道胆振東部地震の現状を伝えるため地形の3D模型を造形 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 林業試験場

3Dデータの作成方法について

ドローンでデータをスキャンされる際は、どのような設備になるのでしょうか。

ドローンに搭載された高精度GPS付きカメラで、角度を変えながら何枚も撮影することで、対象となるエリアの精度の高い3Dデータをつくっています。

撮影した写真を室内のコンピュータに読み込み、数百枚の写真を合成して物や範囲を精確に計測するための点群にする「SfM-MVS」という技術で、撮影データを高精度3Dデータとして復元します。

有料の「Metashape(メタシェイプ)」というソフトを使って3Dデータを作っています。

ただ、ドローンを活用すると、写真の枚数が多いときは3Dデータもあわせて数ヶ月で1TBのデータが生成されてしまいます。

それほどの巨大なデータを拵えて、写真の情報で色を貼り付けたり面にしたりして、発注する際の3Dデータを作っています。

社内にデータの加工の得意な方がいて、発注時にAutodeskの「Meshmixer」というフリーソフトでデータのトリミングなどもしています。

作成中の3Dデータ
作成中の3Dデータ

Metashapeのフォトグラメトリという方法でデータを作られているのですね。

大容量3Dデータの頂点数の削減などもMetashapeで行われているのでしょうか。

Metashape とMeshmixerの両方で、データのトリミングやサイズの調整を行っています。

ただ、ハイパワーのパソコンを使わないとダメで、過去に一度、ゲーム用のグラフィックボードを買い替えた記憶があります(笑)

Meshmixer自体は無料ですが、マシンスペックのために結局コストが掛かってしまうという…(笑)

ドローンの活用はその点が大きなネックですね。

恐らく大多数の人が「ドローンは便利」と認識されているかと思いますが、データが重すぎる点で私どもも大変苦労しています。

研究のためとはいえ、ドローンやパソコンの購入費用は予算的に理解していただくのが難しそうですね…。

そうですね。私達もトータルで200万円以上はかかってしまいました。

新しい手法とはいえ、コストが非常に大きいですし、森林では野鳥などと接触して故障するリスクも少なからずあるので、メンテナンスに関してもネックだと感じています。

最近はiPadのLiDARセンサーを使用する3Dスキャンアプリで撮影したデータや、身近なスマートフォンで撮影可能な3Dデータを活用しています。

なるほど。コストや維持費を削減するためにそういった工夫もされているのですね。

ドローンは、撮影だけでなくデータ整備にも金銭的なハードルがやや高かったので、3Dスキャンができるアプリを使うなど、iPadのアプリはほぼ無料の運用をしています。

小さい範囲ならデータも重くならないので、無料で使えるソフトも活用するようになりましたね。

iPadを活用される場合は、現地でiPadを抱えながら歩くようなイメージでしょうか。

はい、iPadを構えて現地調査を行うイメージです。

通常、現地測量をしっかり行う場合は「トータルステーション」という非常に大きな機械を背負わないといけません。

トータルステーションは数ミリ単位の測量が可能ですが、そこまで精度が求められない現場の測量の場合は、iPadは非常に軽量なので、周囲からもすごく好評です。

一方で歩いていけない場所や危ない場所は、今でもドローンを活用しています。

ドローンで測量している様子
実際に使用しているドローン(DJI社製, Phantom 4 RTK)

DMM.makeを知ったきっかけ

DMM.makeを知ったきっかけは何だったのでしょうか。

知り合いの研究者からご紹介いただきました。

北海道大学准教授で地形学を専門に研究されている方と、当時、林業試験場で働いていた研究員のお二方です。

ありがとうございます。

会社としても3Dプリンターを購入されたとのことですが、弊社との使い分けはどのような形でしょうか。

あまり意識して使い分けはしていません。

当試験場では予算面を考慮したのと、好きなタイミングで造形できるので3Dプリンターを導入しました。

あと、職員の中に3Dプリンターを持っている者や着色の得意な職員がいたので、彼らにお願いして自社で複数個作るような運用をしています。

なるほど。
DMM.makeではフルカラーの模型が欲しい場合にご注文いただくのでしょうか。

そうですね。どういう風に色が付くかわからなかったので、それも含めて試したというのが最初です。

石膏*とフルカラープラスチックで注文させてもらいました。

*編集部注:石膏素材の造形は現在サービスを終了しています。

DMM.makeで造形した被災地の3D模型(緑色が森林、黄土色が地すべり跡地)

DMM.makeの造形サービスの使用感

現在は石膏の取り扱いが終了していますが、フルカラープラスチックの品質等々はいかがでしたか?

もう十分でした。サイズ的にもイメージ通りのものが届いて、非常に満足度は高かったですね。

石膏は、少し欠けていたり割れていたりしましたが、プラスチックは丈夫で非常に好印象でした。

あと、自前だと反りが出てしまうのもきっちり調整されていて感動しました。

ありがとうございます。
気温の影響を受けるので、北海道では反りがかなり厳しいかと思います。

そうですね。
聞いた話だと、下の基盤をガッツリ焼いて、積層するというテクニックが必要だったみたいです。

北海道は気温が低いので、冬場はかなり反りやすいかもしれませんね。

暖房を強めに入れていただけると、反りも減るかと思います。

そうですね。ただ、暖房費がかかっちゃいますが(笑)

時間の面でも苦労しています。30cm×30cmくらいの大型のものだと、合計で48時間くらい必要なので…。

DMM.makeさんでそのサイズを頼むと結構な材料費とコストがかかってしまうので悩みどころです。

今後の展望について

今後、3Dプリンターを使って取り組んでみたいこと、今後の展望などがあれば教えてください。

前から続けている研究成果の普及啓発の活動はすごく重要なことだと考えています。

普及啓発は、森林管理者やその森林の利害関係者以外にも、一般の方への普及も必要ですが、広く関心をもってもらうにはまだまだ課題が多いです。

胆振東部地震の模型も含めて、防風林の効果を説明する際に模型は効果的ですが、誤解があってはならないので、 過大・過小な表現にならないようより精巧に作る必要があります。

林業試験場で作成した3D模型。盛り土(畝)の中にはじゃがいもが植えられている。
左は前日の強風で土が削られた畝、右は防風林に近く強風から守られた畝の様子。

模型を作る際は、理解しやすくなるように地形のモデルを誇張する場合があります。

ただし、現場の事実をそのままわかりやすく伝えるという私たちの意図としては、そういうことをしてしまうと、情報が歪んで伝わってしまうかもしれません。

正確性を担保しつつ、手法の精度や妥当性を評価して、正しい模型を使って普及活動を続けることにこだわりたいと考えています。

データの誇張というお話を聞いて、富士山を3Dプリントした経験を思い出しました。

国土地理院で取得できる3Dデータを3Dプリントする際に、富士山などの山の実際のスケールは、想像よりもかなり平らなんですよね。

趣味的な使い方をする際は、平べったいと迫力がないですし、見栄えも良くないので、高さ方向にデータを調整するケースがありますよね。

模型作りではよくある話だと思いますが、現状を正確にお伝えするためには、そういうデータの調整をしないよう心がけています。

被災地を撮影したデータも、高さ方向は一切調整されていないのでしょうか。

一切触れていません。

ご説明する際は、「模型は平べったく見えるかもしれませんが、こういう緩やかな場所ですら崩れてしまうほどの前代未聞の被害が発生している」と最初にお伝えするようにしています。

なるほど。
私自身も地形データを3Dプリントをしたことがあるので、とても考えさせられました。

子どもに見せるときは、大げさに見せたほうが良いときもありますよね。

退屈だと寝てしまう子も多いので、うまく使い分けていきたいと思っています。

大変貴重なお話を伺えて、勉強になりました。
本日は終了といたします。

お時間いただきまして、ありがとうございました。

ありがとうございました。

地方独立行政法人北海道立総合研究機構 林業試験場 

ホームページ:https://www.hro.or.jp/list/forest/research/fri/

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