民間企業でロケットの開発・製造・打ち上げサービスを行うインターステラテクノロジズ株式会社、安様からお話を伺いました。前回はメカトロニクスグループの山岸様からお話を伺いましたが、今回はロケット発射場のある北海道広尾郡大樹町で勤務される安様にインタビューいたしました。3Dプリントを利用したことによって、スピード感のある開発を実現できる事例をご紹介いたします。
前回のインタビューはこちら
安 晋一(あん しんいち)様 プロフィール
開発部 構造グループ グループリーダ
2017年にIST入社。観測ロケットMOMOの構造・艤装設計、高圧ガス設備の設計に従事。
2018年より構造系の取りまとめを担当。
切削等でも製作出来る部品に対しては、納期や価格面で課題がある
納期短縮、低コスト化の実現
DMMさんは納期が早くて柔軟に依頼できるので、急にパーツが必要になったときとか、困ったときに活用させていただきたいと思っています。
安様について、3Dプリンターを利用するシチュエーション
お時間いただきましてありがとうございます。
本日はよろしくお願い致します。
よろしくお願い致します。
早速ですが、安様が担当されているお仕事の内容からお聞かせいただけますでしょうか。
私はインターステラテクノロジズの中でも「構造グループ」と呼ばれる部署に所属しています。
いわゆる“機体構造”と呼ばれる、ロケットの骨組みなどを設計しているグループの取りまとめと、機体内の配管設計を担当しています。
ありがとうございます。
安様のお仕事の中で、実際にDMMの3Dプリンターを利用して作られている部品は何になるのでしょうか?
観測ロケットMOMOに搭載する、液体酸素タンクのカバーをDMMさんの3Dプリンターで製作しています。
タンクの中に液体酸素を入れるのですが、すごく冷えるのでそのままでは表面に霜が付いてしまいます。
それを防ぐためにカバーを付けて、その中に窒素ガスを導入しています。
カバーを3Dプリントされる際の素材は何になりますか?
MJF(マルチジェットフュージョン)のPA12だったかと思います。
MJFを使っている理由は、社内で知見があったからという理由で選ばせていただきました。
素材の物性や用途的にも、タンクのカバーとして使うには十分なスペックでした。
実際にお使いいただいて、素材の品質や出力された造形物のクオリティについてのご感想はいかがでしたか?
イメージしていたよりキレイに造形できるんだな、と感じました。
穴がずれて組み立てられないなどのトラブルもなく、納期も早く、クオリティの高い製品を作っていただけたので大変満足しています。
DMM.makeを使ってみてよかったこと、苦労したところ
DMM.makeを使った3Dプリントで、良かった点はございますか?
メールでのやり取りがスムーズにできたところですね。
サイト上でデータをアップロードして、造形可能かどうかがすぐに確認できるので非常に助かっています。
造形物の精度が高いので、こちらの開発スケジュール的にギリギリの期日で発注しても、ほとんど修正なしで使えているというのもありがたいです。
ありがとうございます。
ちなみにタンクのカバーを作る上で、3Dプリンター以外の製造方法を採用されることもあったのでしょうか?
構造的に金属や樹脂の切削だとコストがかかってしまうので、最初から3Dプリント一本に絞っていました。
なるほど。
逆に、3Dプリントを使っていて苦労したことや大変だったことはございますか?
特に苦労したことはありませんでした(笑)
既に社内で山岸さんがDMMさんを利用していたので、事前に情報を共有していただいて、それに合わせて設計を行いました。
社内に知見がある人がいるのはだいぶ楽ですね(笑)
かなり楽です。
はじめは不安な部分もありましたが、山岸さんに色々と助けていただきました。
事前に山岸様から大型のものを造形されていると伺っていますが、弊社の3Dプリンター以外で大型部品を使っている箇所はどこになるのでしょうか?
先程お話したタンクのカバーも、全体としては500×500×200mm程度の比較的大きな部品なんです。
ただ、MJFのPA12だと一体で造形出来ないサイズになるので、造形可能なサイズに分割して製作しています。
ありがとうございます。
分割なしで造形できたほうが良かったのでしょうか?
使用する箇所にもよりますが、大きなモノを一体で造形出来ると軽量に作ることが出来るので嬉しいです。
ただ、重量よりもコストを優先する箇所もあるため、分割したほうが安く早く作れるようなら分割を選択するかもしれません。
3DプリンターやDMM.makeを使い続けている理由
最初から3Dプリントで検討されていたとのことですが、それ以外の方法と比較した時の3Dプリンターの良い点・悪い点は何かございましたか?
切削等でも製作出来る部品に対しては、納期や価格面で課題があると感じています。
前に配管系の部品で金属の3Dプリントを検討した際は、納期と価格が折り合わず、見送ったことがあります。
3Dプリントならではの付加価値を設計に織り込んだ上で採用する必要があると考えています。
価格と納期はどれくらいだったら採用されていたのでしょうか?
そのときはDMMさん以外のメーカーと相談をしていたのですが、発注してから納品されるまでに3ヶ月程度とのことでした。
当時は納期重視で急いでいたこともあって、それだと厳しいということで見送りました。
造形するモノにもよりますが、理想は依頼してから届くまでが1ヶ月程度だと大変助かります。
ありがとうございます。
その部品はかなり大型のものだったのでしょうか?
いえ、特に大きな部品では無かったのですが、。海外で造形する必要があり、それで納期がかかってしまうとのことでした。
ありがとうございます。
安様がDMM.makeを使い続けている理由は何かございますか?
最近は類似サービスも登場してきていますが、DMMさんはかなり早くからサービスを始めている印象があります。
私自身、学生の頃から利用させてもらっているので、そういう意味で使い始めるまでのハードルが低いかなと思っています。
今後の展望やDMMに希望すること
今後のお話として、次にやっていくお仕事の中でも3Dプリンターは使えそうでしょうか?
DMMさんは納期が早くて柔軟に依頼できるので、急にパーツが必要になったときとか、困ったときに活用させていただきたいと思っています。
ありがとうございます。
ちなみに造形物は試作用として使われるのでしょうか?
試作用で使うこともありますが、実際に宇宙に飛ばす製品として使ってもいます。
これまでの実績もあるので、心配なく使用できています。
なるほど、参考にさせていただきます。
他に使ってみたい素材などのご要望等はございませんか?
使ってみたい素材は…悩みますね(笑)
エンプラのような高強度のプラスチックは試してみたいと思っています。
わかりました。
それでは本日は以上とさせていただきます。
お時間いただきましてありがとうございました。
ありがとうございました。
インターステラテクノロジズ株式会社様 ホームページ https://www.istellartech.com/