アバターのフィギュア化に3Dプリントサービスを活用 株式会社広済堂ネクスト

株式会社広済堂ネクストの谷岡慶一様とトイメディアデザイン代表の森山弘樹様よりお話を伺いました。2社が協働しアバターやVTuberをフィギュア化する新規事業にてDMM.make3Dプリントを活用された事例をご紹介いたします。
(※掲載内容は2023年2月取材当時のものです)

谷岡慶一 様 プロフィール
株式会社広済堂ネクスト
マーケティングイノベーション部
森山弘樹 様 (@Somnium
トイメディアデザイン代表

細部まで再現できるサービスは限られている。

発色などの品質やサービス対応に満足している。

発色も含めて、極端に問題が発生したことがなく満足している。

協業で「3Dプリントでアバター造形」広済堂ネクスト様とトイメディアデザイン様

まずは広済堂ネクスト様の事業内容をお聞かせいただけますか?

弊社は、印刷業を祖業として70年以上の歴史を持つ会社です。
現在は印刷事業に加えて、IT・デジタル・BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)・イベント・動画制作などの事業リソースがあります。
お客様の課題を解決するため、様々なソリューションを提供しています。

谷岡様はどのような業務を担当されていますか?

私はマーケティングイノベーション部に所属しています。
役割としては大きく3つあり、1つ目は営業部と一緒に顧客の課題解決の施策提案です。
2つ目は営業部門が受注した案件の業務対応、3つ目は外部リソースを活用した新たなサービスの事業開発をおこなっています。

私自身は営業部門とともに施策のご提案、外部リソースを活用した新規サービスの開発を主に担当しています。
そのなかで3Dプリンターを使った事業として、トイメディアデザインの森山さんと一緒にお仕事をさせていただいています。

続きまして、森山様のお仕事内容をお聞かせいただけますか?

私はトイメディアデザインという会社の代表と、神戸電子専門学校の教員もしており、現在は二足のわらじで仕事をしています。

私は3Dゲームのなかに出てくるアバターを、どうすればダイレクトに3Dプリントできるかという技術的な挑戦を長年続けて参りました。
昨年2022年の春頃にアルゴリズムを確立しまして、NICOGRAH論文コンテストのパネル部門での発表やバーチャル学会、その他VR空間上でのトークイベントでの発表を経て現在にいたっております。

森山様が3Dプリントに携わるようになったきっかけは何でしょうか?

2002年頃から3Dプリンターに関わるようになりました。大阪大学が導入した光硬化型の造形装置で、私が作ったデータを変換して3Dプリントするテストに参加したことがきっかけです。
そのあと多くの場所で3Dプリンターに関わっていたところ広済堂ネクスト様と知り合い、協業して事業をおこなうというお話になりました。


みずたに🙂様の3Dフィギュア
顔の星印など細部まで再現
(DMM.makeで造形)

アバターの3Dフィギュア造形を福利厚生として活用される企業も

3Dプリンターでは、どのような作品を作られていますか?

2019年頃から、VTuberさんのデータ変換と3Dプリント事業をはじめました。
現在はプロダクションに所属されているVTuberさんのフィギュア化を中心に、15cm級のフィギュアのデータ変換と出力を10件以上担当しています。
2023年になってからは、VRチャットのアバターを変換してフィギュア化する事業も展開し始めています。

森山様がCGデータのフィギュアデータを3Dプリント用に変換して、広済堂ネクスト様が事業の窓口で活動されているのですね。

おっしゃるとおりです。
現在は森山さんと協業で、BtoB案件で2019年10月に「クイックフィギュア」という3Dフィギュア製造サービスを開始しました。オンデマンド3Dプリントにて一点から製造を請け負っています。

実際にご利用いただいているスマートフォン向けメタバース「REALITY」を運営されるREALITY株式会社様では、福利厚生の一環で「REALITY」で100時間配信した社員にアバター3Dフィギュアを贈られています。そちらのCEOのDJRIO.eth @ REALITY様からも「今までに試したどんな福利厚生より喜ばれてる気がしてうれしい」とお褒めの言葉をいただきました。

自分のアバターがフィギュアとして手に取れるのは喜ばれそうですね! 「森山様のアルゴリズムを使って協業していこう」となったきっかけは何だったのでしょうか?

2018年におこなわれたGTMFというゲーム系の発表イベントがきっかけです。
そこではソフトウェア関係の会社が一同に会して、展示会や技術発表をしているなか、ライトニングトークの機会をいただいたんです。
3Dキャラクターデータから3Dプリント可能なフィギュアデータへの変換プログラムの説明をしたところ、広済堂ネクストのご担当者の方からご連絡をいただいて、事業展開が可能かどうかを尋ねられました。


営業終了大魔王様の3Dフィギュア
家具や小物のディテールまでリアルに

DMM.makeなら「細部まで再現できる」

森山様が変換されたデータをDMM.makeに発注したきっかけは何ですか?

御社は立ち上げ当時から存在を知っていました。
DMMの3Dプリント事業が立ち上がったとき、当時の西麻布の事務所に伺っていました。
その後、秋葉原に移転されたあともご挨拶に伺ったことがあります。

昔から我々のことを知ってくださっていたんですね。
広済堂ネクスト様と協業するお話になったときも、思い出していただけて光栄です。

はい、細部まで再現できるサービスは限られるので、御社に発注する話を進めました。


ようてん様の3Dフィギュア
動きのあるポーズもバッチリ

厚みのない3Dデータを3Dプリント用データに変換できるのが強み

森山様が確立されたアルゴリズムは、特殊で素晴らしいソフトウェアですね。VTuberやゲームの3Dデータは厚みがないので、3Dプリントに不向きとも言われます。
どのような形でデータを変換しているかを教えていただけますか?

おっしゃるとおり、ポリゴンで構成されたデータはポリゴン自体に厚みがないため、3Dプリントには向いていません。
3Dプリント用に変換する場合、厚みのないポリゴンに対して、強制的に厚みをもたせる作業が必要です。
変換プログラムの開発当時から認識していた問題でしたが、2015年頃にポリゴンをボクセル*に変換して厚みをもたせるアルゴリズムを考案しました。

やり方は医療系のCTスキャンの要領で、ポリゴンデータを上から下までスライスした画像を作ります。
それらの画像を1枚1枚編集して、中身を詰めた状態で画像を並べていきます。
そうすると、1枚の画像がボクセルの一層分に相当する形になるので、集めたボクセルでポリゴンを貼り直していくと、完全に中身の詰まったポリゴンデータに再構成できます。

なるほど。
ボクセルの厚みに対して再度メッシュを構成すると、厚みのない面のデータにも体積をもたせられますね。

そのとおりです。
完全に厚みのないポリゴンに対しては一個分のボクセルに変換できますが、3Dプリントで出力する際に強度不足で破損する問題が生じてしまいます。

あらかじめ強度が足りない部分を計算で求めておいて、自動的に厚みを追加する補強処理のプログラムを実装しました。
もともと強度が足りなさそうだなと思った場合は、その厚み分を追加すると、適度な厚みを持ったデータに変換して3Dプリンターで出力ができます。

*ボクセル:2次元の画像を表現する最小単位の「ピクセル」に対し、3次元の空間上のデータを表現するひとつの手法での最小単位。

変換データの整合性も保てる技術

CGキャラモデリングでは、ぶっさしモデリング*や、服で隠れている部分が省略されている場合があります。このようなデータをプリントする際、どのように整合性を保てるのでしょうか?

*ぶっさしモデリングの場合はそのまま出力できるようになっています。
CGデータでよくいわれる「スカートの中が埋まっている状態」も、しっかりと回避できるようにしています。

すばらしい技術ですね。

一方で透過PNGテクスチャを使ってポリゴンに穴を開けた状態でモデルを表現している場合は、透過部分を作り直す必要があります。
たとえば透過テクスチャで服のレース部分を作っている場合や、襟元が部分的に空いた表現をしているキャラクターなどです。

透過テクスチャは3Dモデリングをするうえで非常に頭が痛い問題の一つですが、私のアルゴリズムなら穴の空いた部分も含めてボクセル化して、厚みもつけられます。
ボクセル化をしっかりおこなえば、もともとCGで見えている状態のキャラクターに適切な厚みをもたせて、そのまま立体化できるメリットがあります。

なるほど。
現状、どのような形のフィギュアデータやキャラクターデータがきても、問題なく3Dプリント可能なソフトウェアが完成している状態でしょうか?

ほぼ完成していますが、メガネやヘルメットなどの透明な衣服を着ているキャラクターの表現は実験不足な点があります。
ボクセル方式の場合、透明なボクセルと不透明なボクセルを分けて計算することで、なんとか表現可能なレベルの設計はできています。
まだ煮詰めきれていない状態なので、時間を見つけて積極的にチャレンジしていきたいです。

*ぶっさしモデリング:3Dモデリングで胴体と腕などをつなぐ際に、腕を胴体に刺すだけで見た目を整え、実際にはキレイにつながっていないモデリングをすること。CGでの3Dデータ作成で使われる俗語。

アバターの3Dフィギュア造形を浸透させたい

広済堂ネクスト様として森山様の独自アルゴリズムを用いた事業展開で、何かハードルはありましたか?

事業そのものが浸透しきれていないことは正にハードルだと感じています。
作った3Dデータの権利問題については、まだ法整備されていないのが現状かと思います。
たとえばVRチャットの中で作るデータとか、IPデータはどこに所有権があるのかはまだ定まっていません。

現状、元のデータはVTuber本人または事務所に帰属しているものの、3Dプリント用に作ったデータの権利がどこにあるのか定まっていない状態ですね。

そうですね。
そういった理由から、現状はBtoB向けに事業展開をしていますが、我々の中でもBtoBで続けるのか、BtoCに販路を拡大するのか模索している所です。

DMM.makeの造形物や対応に満足

DMM.makeではフルカラープラスチックで造形していただきました。造形物の仕上がりはいかがですか?


K725様の3Dフィギュア
洋服のひだなど細部までこだわれる

超簡単様の3Dフィギュア
チャームポイントのメガネも出力、「かわいい」とのお声も
仕上がりに関しては満足しています。
プログラムの開発途上でいくつか実際に出力してみて、強度不足で一部が破損していることがありました。
それが教訓になって、いまのプログラムの実装に活かされています。

ありがとうございます。
強度以外の品質面はご満足いただいていますか?

そうですね。
発色も含めて、極端に問題が発生したというパターンはありません。

品質に関しては広済堂ネクスト内でも非常に満足しています。
3Dプリンターによるフィギュア製造は複数社様にご依頼しておりますが、御社も対応がすごくよいので助けていただいています。


むくどりん / マンガ紹介VTuber様の3Dフィギュア
躍動感あるポーズも造形可能

アバターが取ったポーズを3Dプリントできるサービスの確立を目指す

広済堂ネクスト様と森山様の協業事業について、今後の展望や事業展開について教えていただけますか?

いまはVRチャット上で「メタバース3Dプリント計画」というプロジェクト名で告知をしています。
最終的な目標として、VRチャット上でアバターがポーズを取ったら、そのポーズのまま3Dプリンターで出力できるようなサービスの確立を目指しています。

このサービスが実現すれば、VRチャットとメタバースのアバターを使って、仮想世界で遊んだり交流したりしている人たちが、1人もしくは複数名で記念撮影的に自分の姿をフィギュア化できます。
サービスが認知されれば、将来的に、自分たちのフィギュアをお互いにトレーディングするような文化も生まれるのではないかと考えています。

非常に面白そうですね!!

本来、メタバースやバーチャルな姿は画面越しかVRのヘッドマウントディスプレイ越しにしか確認できません。
サービスがあれば仮想世界の自分を実際に手に取って遊べるようになり、機械を持っていない人でもアバターの姿を見るだけで個人を認識できます。
XRに沿った形で、3Dプリントの出力文化を組み込めるのではないかと考えています。

VRチャットとメタバース上から、直接3Dプリントをできるようにすることが第一段階です。
続いて、3Dプリントの造形物を使ったさまざまな遊びを提案していくことが第二段階。
将来的には、「3Dプリントで作ったアバターフィギュアを全世界に広めていこう」と考えているのが現状のメタバース3Dプリント計画の骨子になります。

リアルとメタバースの世界をつないでいく…夢がありますね!
広済堂ネクスト様はいかがですか?

パートナーとして森山様の想定されるイメージに沿って販売ができればと考えています。

もうひとつ考えているのが、アバターを創作されたクリエイターの方々が収益化できるような仕組みです。
たとえば、NFTを付けて販売するなど、業界全体が盛り上がっていけたらよいなと考えております。

ありがとうございます。
DMM.makeも3Dプリントによって造形したNFTアート販売をスタートさせました。新しいテクノロジーとの融合といった観点でもまたDMMがお力になれたらうれしいです。

今後もDMM.makeと協力していきたい

最後に、DMM.makeへのご要望がありましたら教えてください。

最近では3Dプリンターの機種や作例が非常に増えてきました。
大阪・日本橋でも、3Dプリンターで作ったドールやフィギュアのパーツが販売されるようになっていて、模型に対しての3Dプリンターの存在がじわじわと大きくなっているのを感じます。

3Dプリンターは、ハードウェアやモデリングの知識を持つ人だけが使えるサービスというイメージがありました。
今後はエンドユーザーが「3Dプリンターをどのように活用するか」「いかに楽しく遊べるか」という文化面を広げていかないと、3Dプリンターになかなかファンが定着しません。
そういった問題に積極的に切り込んでいく必要があると考えているので、いろいろと協力関係を築けていけたらなと思います。

ぜひDMM.makeも一緒に取り組ませていただければと思います。
お時間をいただきましてありがとうございました!

株式会社 広済堂ネクスト
ホームページ:https://www.kosaido-next.co.jp/
トイメディアデザイン
ホームページ:https://toymedia.jp/

クイックフィギュアにご興味のある方は、
株式会社広済堂ネクスト サービスサイトのお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。
https://www.kosaido-next.co.jp/
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