DMM.make 3Dプリントで扱える素材を紹介する本シリーズ。今回のテーマは「AGILISTA」です。造形サンプルを見ながら、AGILISTAの特徴やオススメ用途などを解説していきます。
AGILISTA基本スペック

モックアップに適した4種の樹脂です。靭性と剛性に優れた透明樹脂のAR-M2、高耐熱樹脂のAR-H1、シリコーンゴム低硬度のAR-G1L、シリコーンゴム高硬度のAR-G1Hから、用途に合わせてお選びください。 サポート材が水溶性なので、流路のような配管構造も可能です。
得意なジャンル | 工業系モックアップ、機能検証用モックアップ |
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カラー | AR-M2:若干黄色みがかった透明 AR-H1:オレンジ(紫外線の影響で退色します) AR-G1L、AR-G1H:半透明 |
価格帯目安 | やや高い |
質感 | なめらか |
中空構造 | 可。ただし、サポート材料を抜くため直径2.5mm以上の穴が必要です。また穴が開いていてもモデルの構造上、製造できないことがあることを予めご了承下さい。 |
造形可能な最大サイズ | 縦297mm×横210mm×奥行200mm |
発送目安 | 6~10日 |
再現性・質感


形状先端は最小幅で0.5mm程度まで再現可能。質感は素材によって異なります。
・AR-M2、AR-H1:天面と底面はなめらか、側面は積層によりざらざら
・AR-G1L、AR-G1H:なめらか
カラー



・AR-M2:若干黄色みがかった透明
・AR-H1:オレンジ(紫外線の影響で退色します)
・AR-G1L、AR-G1H:半透明
AGILISTAは樹脂をUV照射によって硬化させ、一層ごとにローラーで均し、 それを繰り返すことで造形を行います。積層やローラー痕が残るのでAR-M2、AR-H1を塗装の際は研磨が必要です。AR-H1は紫外線の影響でオレンジ色が抜けていきますが、退色による性質の変化はございません。
素材別特性

AGILISTAの4つの素材について、それぞれ特性を紹介します。
名称 | 特徴 | カラー |
AR-M2 | 靭性と剛性に優れた透明樹脂 | 若干黄色みがかった透明 |
AR-H1 | 高耐熱樹脂 | オレンジ(紫外線の影響で退色します) |
AR-G1L | シリコーンゴム低硬度 | 半透明 |
AR-G1H | シリコーンゴム高硬度 | 半透明 |
AR-M2(透明樹脂)
靱性と剛性に優れており、スナップフィットや嵌合はもちろんセルフタッピングネジでも割れません。4種の中で最も精度が高く強度も強いので、設計の検討や機能検証に最適な素材です。天面と底面は透明性が高いため、内部状態を確認しながらの機能検証が可能です。側面は積層が目立ち透明性は落ちます。また積層痕が残りやすいため、フィギュア原型のような微細な表現には不向きです。
AR-H1(高耐熱樹脂)
4種の中で最も高耐熱の樹脂です。発熱性を伴う部品を組み付けての評価、また熱風・熱湯を通しての機能検証が可能です。AR-M2に比べて靱性が低く割れやすいので、細かい部品には向いていません。微細形状の再現性も低くなります。造形終了時の耐熱温度は約70℃ですが、熱処理を加えることで更に耐熱性を向上させることが可能です。反りの抑制や表面状態の均一化のため造形時に「シェル(バリのような形状)」 が造形されます。シェルは後処理時に除去しますが、形状によっては取り切れない可能性があります。
AR-G1L・AR-G1H(シリコーンゴム 低硬度/高硬度)
インクジェット方式では世界初のシリコーンゴム素材です。弾力性、耐候性が高いためギュッと押し込んでも避けにくく、これまでの材料ではできなかった組付けの評価等が可能です。硬度は用途に合わせてお選びいただけます。
・AR-G1L ショアA硬度:35 …… 消しゴム程度の硬さ
・AR-G1H ショアA硬度:65 …… タイヤ程度の硬さ
特性 | 単位 | AR-M2 | AR-H1 | AR-G1L | AR-G1H |
引張強さ | MPa | 40-55 | 16.1-31.4 | 0.5-0.8 | 2.0-2.5 |
曲げ強さ | MPa | 60-80 | 43.6-65.6 | – | – |
破断伸び率 | % | 5-35 | 0.8-1.5 | 160 | 160 |
ショアA硬度 | – | 85-86 | 86.7-87.1 | 35 | 65 |
荷重たわみ温度 | ℃ | 52-54 | 67.4-72.3 | – | – |
吸水率 | % | 0.35 | 0.33-0.38 | 0.4以下 | 0.4以下 |
その他の細かな条件はデザインガイドラインを参照してください。
サンプルチェック

ここからは、AGILISTAの造形サンプルを見てみましょう。まずは4種の素材を並べてみます。AR-M2(透明樹脂)・AR-H1(高耐熱樹脂)と、AR-G1L・AR-G1H(シリコーンゴム 低硬度/高硬度)で見た目はかなり異なっています。

左のAR-H1(高耐熱樹脂)は退色の途中なのか、ややオレンジがかっており、AR-M2(透明樹脂)の透明度は高く見えます。造形の精度はどちらも高く、触ってベタつくようなこともありません。


AR-G1L(左)とAR-G1H(右)は白みがかった半透明な色合いで、表面は少し粉っぽい仕上がりです。AR-G1Lは簡単に曲げられるほど柔らかく、AR-G1Hはコシのある硬度で、畳もうとした後にもそのまましばらく自立するような素材感でした。
利用事例
AGILISTA をカメラの筐体のモックアップ製作にご利用いただいています。透明度の高さや丈夫さを活かし、製品カバーとして活用されていました。
おすすめの用途
4種の素材が選べるAGILISTAは、透明度や耐熱性が高いもの、柔らかいものまで個性があります。サポート材が水溶性であることも含め、さまざまな製品のモックアップづくりで効果を発揮するでしょう。
ぜひみなさんも、AGILISTAの特性をいかしたものづくりに挑戦してみてください!