この記事では3Dスキャン・3Dスキャナーの概要やの種類、撮影方法、具体的な活用事例をご紹介します。iPhoneでできる3Dスキャンアプリのご紹介もしているので、気軽に3Dデータ作成にチャレンジしてみましょう。
そもそも3Dスキャンとは?
3Dスキャンとは、3Dスキャナーなどの専用器具を使って物体の三次元計測をおこなうことを指します。
物体や環境など、あらゆるものの“形”に関するデータを集め、現実世界のモノをデジタルデータに変換することができます。
主な活用用途としては、製造業における品質検査ツール、リバースエンジニアリングによる解析、歴史的な遺産や文化財のデジタル化(アーカイブ)などが挙げられます。
これら以外にも、学校教育の現場でも3Dスキャンが活用されており、個人の設計者やエンジニアなど幅広い層にも利用されるようになっています。
「モノはあるけど、3Dデータが作れない」という方にとって3Dスキャンはとても便利です。
3Dスキャナーの基本原理
3Dスキャンは、実世界の物体から詳細な形状情報を取得し、それを3Dモデルとしてデジタル化する技術です。
ライトやレーザーを物体に投影し、反射された光をセンサーで捉えることで、物体の形状を縦・横・高さの3次元で計測できるのです。
測定する対象の凹凸を読み取ることで、高さや横幅、奥行きなどの情報を正確に取り込めます。
なお、形状が複雑でスキャンしづらい箇所がある場合は、情報修正ソフトを用いるなどして修正や編集をおこなうケースもあり、逆に不要な箇所を除去することでデータを軽くすることがおこなわれるケースもあります。
3Dプリンターとの関係性
3Dプリンターは、3Dスキャンによって得られた3Dデータを実物化できます。
そのため、3Dスキャンと3Dプリンターは、物体のデジタル化と物理化のプロセスを実現するために併せて使われるケースがほとんどです。
3Dスキャンが「モノをデジタルデータ化するための技術」であるのに対し、3Dプリンターは「データ化したモノを現実化するための装置」といえます。
スキャンした3Dデータを少し修正すれば、現物のサイズや色などを変えて3Dプリンターで簡単に出力できるのも魅力です。
3Dスキャナーの種類と撮影方法の違いは?
ここでは、3Dスキャナーの種類と撮影方法の違いによる特徴について解説します。
DMM.makeでは産業用にも十分お使いいただける高性能なスキャナーを取り扱っています。
接触式と非接触式の違いについて
3Dスキャナーには、大きく分けると「接触式」と「非接触式」の2種類があります。
【3Dスキャナーの種類】
- 接触式3Dスキャナー:物体に直接触れることで形状を測定する
- 非接触式3Dスキャナー:レーザーやカメラを使って物体から距離を測定する
それぞれの特徴について解説していきます。
接触式3Dスキャナー
接触式スキャナーは、センサーやプローブ(指針)を用いて物体表面に直接触れて測定をおこないます。
古くから用いられている手法ですが、接触式でなければ測定不可の対象物も存在するため、現在でも頻繁に利用されているスキャン手法です。
接触式のメリットは、物体に直接接触して凹凸を測定するため、より高精度のデータ収集が可能な点です。
一方で、複雑な形状やデリケートな物体の3Dスキャンには不向きで、測定が完了するまでに時間がかかる点がデメリットといえます。
非接触式3Dスキャナー
非接触式スキャナーは、光や音波を使用して物体の形状を測定します。
「三角法方式」「TOF(タイムオブフライト)方式」「位相差方式」など、さまざまな方式による測定方法があります。
いずれの方法も、レーザーや光、音波を測定対象に向けて発射し、それが反射して返ってくるまでの時間などを使って計測をおこないます。
非接触式の3Dスキャナーを用いると、接触型では測定が難しい物体でも3Dデータを収集できる点がメリットです。
一方、レーザーや光の反射を用いることから、乱反射によるノイズなども収集してしまい、データが非常に重くなりやすい点がデメリットといえます。
撮影(スキャン)のコツ
3Dスキャンで正確なデータを収集するにはコツがあります。
以下のポイントをおさえておくと、より良い結果が得られるようになるので、ぜひ参考にしてみてください。
大型のものや複雑形状のものは、高度なテクニックが必要です。プロの手にぜひお任せください!
大きいものをスキャンしたい場合
大きな物体をスキャンする際は、物体全体をカバーするためにカメラを適切な距離に配置することが重要です。
また、物体の全体像を捉えながら、正確なデータを収集するためには、さまざまな角度から複数回に分けてスキャンをおこなうようにしましょう。
小さいものをスキャンしたい場合
小さな物体をスキャンする際は、詳細を捉えるためにカメラを近づけ、高解像度で撮影することが重要です。
また、物体が動かないように固定し、照明を調整して影の影響を最小限に抑えます。
高精細なレンズを用いて接近することで、細部まで正確にスキャンすることができます。
人体を撮影したい場合
人体を撮影する場合は、いくつかのパートに分けて上から順番にスキャンしていくのがおすすめです。
1つのパートをぐるりと1周してスキャンを行い、順に下のパートへ移りながらスキャンを行いましょう。
最下層のパートまで行ったら、今度は上から順に反対周りに1周しながらスキャンをすると、より精度の高いスキャンデータを収集できます。
被写体が動かないように気をつけつつ、なるべく自然な光の下で複数回に分けて撮影することを心がけましょう。
ペットや赤ちゃんの思い出作りとして3Dスキャン、データ化、そして3Dプリンターでフィギュア化される方も少なくないですよ。
光沢や半透明な物体をスキャンしたい場合
光沢のある物体や半透明な物体をスキャンする際は、照明と角度を調整して反射や透過を適切に捉えることが重要です。
光沢や半透明な物体を3Dスキャンすることは非常に難易度が高いため、一般的には、非反射コーティングを使用するなどして対応します。
また、特殊なスキャン技術やソフトウェアを使用するケースもあります。
スマートフォンで手軽に3Dスキャンしたい場合
手軽に3Dスキャンを試してみたい場合は、スマートフォン用の3Dスキャンアプリを利用すると良いでしょう。
これらのアプリは、カメラを使って物体をスキャンし、手軽に3Dモデルを生成できます。
iPhoneの3Dスキャンの特徴について
2020年以降に発売されたiPhoneシリーズには、一部のモデルで3Dスキャンが可能な「LiDARスキャナ」が搭載されています。
LiDARスキャナが搭載されているiPhoneのモデルは、次のとおりです。
【LiDARスキャナが搭載されているiPhoneのモデル】
- 2020年発売:iPhone 12 Pro、iPhone 12 Pro Max
- 2021年発売:iPhone 13 Pro、iPhone 13 Pro Max
- 2022年発売:iPhone 14 Pro、iPhone 14 Pro Max
ここでは、iPhoneの3Dスキャンの向き不向きや、特徴について解説します。
メリット:簡単に3Dスキャンができる
通常、3Dスキャンをおこなうためには高額な機器とスキャンソフトを用意する必要があります。
一方、iPhoneの3Dスキャン機能を利用すれば、3Dスキャンをおこなうためのアプリをダウンロードするだけで手軽に3Dスキャンができるようになります。
iPhoneを活用すれば他に特殊な機器は不要で、リアルタイムで結果を見ながら短時間でスキャンを終えることができます。
デメリット:複雑なものは向いていない
一方で、iPhoneの3Dスキャンは、複雑な形状や細かいディテールを持つ物体のスキャンには向いていません。
高度な精度を求める場合は、専用の3Dスキャナーの使用を検討したほうが良いでしょう。
撮影範囲は5m程
一般的に、iPhoneの3Dスキャンの撮影範囲は約5mまでとされています。
離れた場所の物体を撮影するのには向いていないので、なるべく対象物に近付いてスキャンする必要があります。
また、スキャンする物体の大きさや形状、光の条件によって変わる場合もあるので注意が必要です。
特に苦手としているもの
iPhoneを用いた3Dスキャンでは、特定の条件下にある物体のスキャンを特に苦手としています。
【iPhoneの3Dスキャンが苦手としているもの】
- 光が反射するもの(例:鏡、磨き込まれた金属など)
- 透明なもの(例:ガラス、透明なプラスチックなど)
- 凹凸が少ないもの
また、iPhoneのLiDARスキャナは、基本的に5mの範囲内のもの限定であるため、大きさが5m以上のもの(建物など)のスキャンも難しいとされています。
iPhoneで3Dスキャンをおこなう際は、十分な明るさを確保したうえで、手ブレを抑えるために三脚などを使ってスキャンをおこなうようにしましょう。
iPhoneの3Dスキャンおすすめアプリのご紹介
ここでは、iPhoneで3Dスキャンをおこなう際におすすめのアプリをご紹介します。
おすすめのアプリとしては、主に3つが挙げられます。
【iPhoneで3Dスキャンをおこなう際におすすめのアプリ】
Polycam
Polycamは、リアルタイムで3Dスキャンが可能なアプリで、直感的な操作感で使えることが特徴です。
物体や空間のスキャンが可能で、生成したモデルは直接3Dプリントすることもできます。
LiDARスキャナの通常モードと詳細モードの両方に対応しており、大きさに限らず空間に至るまでの3Dスキャンが可能です。
価格 | 月額:3,000円 年額:12,000円 Polycam Pro:70,000円 ※価格はApp Storeで購入する場合 |
スキャンタイプ | LiDARスキャン、LiDARスキャン(詳細モード)、フォトグラメトリ |
出力形式 | メッシュデータ:obj、glb、usdz、dae、stl、Sketchfab 点群データ:dxf、ply、las、xyz、pts フロアプランデータ:dae |
Scaniverse
Scaniverseは、ARKitを活用した3Dスキャンアプリです。非常にシンプルな操作感で、高品質な3Dモデルを作成できます。
また、スキャンしたモデルを直接AR空間に配置することも可能で、より具体的なイメージにつなげられます。
さらに、LiDARスキャンを使わずに3Dスキャンができる「NoLiDARスキャン」に対応しており、幅広い機種でLiDARスキャナ搭載機と同等レベルでスキャンできる点も特徴です。
価格 | 無料(2021年8月11日より) ※価格はApp Storeで購入する場合 |
スキャンタイプ | LiDARスキャン、LiDARスキャン(詳細モード)、NoLiDARスキャン |
出力形式 | 出力形式 メッシュデータ:obj、fbx、glb、usdz、stl 点群データ:ply、las |
WIDAR
WIDARは、広範囲の3Dスキャンに適したアプリで、編集や加工機能も豊富な点が特徴です。
他のスキャンアプリよりも機能面が優れており、モデルの一部削除やメッシュの変形、エフェクトの追加などがアプリ上でできます。
さらに、大きな空間や建物のスキャンが可能で、クラウド上でデータを保存したり共有したりすることも可能です。
日本のベンチャー企業が開発したアプリなので、日本語でサポートが受けられる点も魅力的なポイントです。
価格 | WIDAR Pro 月間サブスクリプション:1,000円 年間サブスクリプション:7,000円 テスト用年間サブスクリプション:500円 ※価格はApp Storeで購入する場合 |
スキャンタイプ | LiDARスキャン、フォトグラメトリ |
出力形式 | 出力形式 メッシュデータ:obj、fbx、gltf、usdz、stl 点群データ:ply、laz(las)、xyz(txt) |
3Dスキャナーの活用方法と事例をご紹介
ここでは、3Dスキャナーの活用方法と事例についてご紹介します。
高精度測定で品質検査ができる
3Dスキャナーは、製造業界で品質検査に使用されることが多いです。
製品の寸法を高精度に測定し、設計図との差異を確認することができます。
リバースエンジニアリングで時間とコストの削減ができる
3Dスキャンは、既存の物体をデジタル化し、そのデータを基に新たなデザインを作成するリバースエンジニアリングにも利用されます。
これにより、製品開発の時間とコストを大幅に削減することが可能です。
3D測定を効率化しデジタルアーカイブできる
美術館や博物館では、貴重な芸術作品や文化財の3Dデータを作成し、デジタルアーカイブとして保存するために3Dスキャナーが利用されています。
遠隔地からでも貴重な文化財や芸術作品を3Dで鑑賞でき、3Dデータがあれば3Dプリンターでレプリカを作り出すことも可能です。
まとめ
3Dスキャンは、多くの分野で活用されている技術です。
昨今ではスマートフォンを活用することで誰でも手軽に3Dスキャンができるようになってきました。
ただし、その精度や使用環境には限界があり、目的に応じて最適な手法を選ぶことが重要です。
DMM.makeでは3Dスキャンから3Dプリントまでを一気通貫でご相談いただける「3Dスキャンパック」というサービスをご用意しています。
自社で3Dスキャンをおこなう環境を整備するのが難しい場合や、最終的に3Dプリントを活用することを想定されている場合はぜひ一度ご相談ください。
もちろん「3Dスキャンに限らず3Dデータを一から作って欲しい」といったご相談も承ります。お気軽にこちらのリンクよりご相談ください。