「硬質ゴムライク」から「高反発ゴムライク」への移行・比較ガイド

これまでDMM.make 3Dプリントでは、Formlabs社のForm 4を活用した柔軟性パーツ向けにFlexible 80A V1.1を用いて「硬質ゴムライク|LFD|Form 4」をご提供してまいりました。

この度、メーカーより原材料廃盤のお知らせを受けて、大幅に物性が強化された後継素材「Flexible 80A Resin V2」を採用し、「高反発ゴムライク|LFD|Form 4」として新たにラインナップへ追加いたしました。

現行の半透明レジン(V1.1)も当面の間は並行して提供いたしますので、用途や設計要件に応じて選択していただけます。(26/8/10現在)※最新の取り扱い状況は弊社素材一覧ページをご確認ください。

今回、弊社が 高反発ゴムライク として採用した素材は、「Flexible 80A Resin V2」 となっており、一見すると硬質ゴムライクで採用していた「Flexible 80A Resin V1.1」からバージョン表記が少し上がっただけにも見えてしまいますが、実態は大きく物性が異なっており、別の素材と言って差し支えありません。

単なるマイナーチェンジにとどまらない、新世代ゴムライクレジンの真価と、実際の設計・試作現場にもたらすインパクトを公表データから紐解いていきます。

スペック数値のから読み解く「物性の違い」

※以下はメーカー公表のTDS(テクニカルデータシート)数値を基にした、編集部でのデータ分析・見解となります。

特性項目硬質ゴムライク
(Flexible 80A V1.1)
高反発ゴムライク
(Flexible 80A V2)
V2素材の特徴
カラー半透明ブラック意匠性の向上・エッジ再現性の強化
ショア硬度80A83Aわずかに剛性感・保持力が向上
破断伸び120%210%(約1.8倍)強引な組み込みでも破断しにくい
引裂強さ24 kN/m28 kN/mノッチ(切れ込み)からの裂けにわずかに強い
ベイショア復元力28%58%(反発力飛躍)潰しても一瞬で元に戻る高レスポンス
ガラス転移温度 (Tg)27 ℃-49 ℃低温・室温環境下でのしなやかさ維持
最大引張強さ8.9 MPa10.0 MPa引っ張ってちぎれるまでの強度の向上

【項目別】Flexible 80A V1.1(旧)と V2(新)の物性比較と解説

1. カラー(外観)

  • 違い:半透明 ➔ ブラック
  • 詳細:半透明からブラックに変更されました。色が変わっただけでなく、不透明色になったことによりプリント時のUV光の余計な拡散が抑えられ、エッジや文字など、細部の造形精度がシャープになりやすくなっています。そのため、完成品・実用品としての外観クオリティも向上します。

2. ベイショア復元力(反発性)

  • 違い:28% ➔ 58%(約2倍に向上)
  • 詳細:V2最大の進化ポイントの一つであり、高反発ゴムライクという名称の由来です。押し潰したり変形させたりした後に「一瞬で元の形状に戻る力」が大幅に強化されました。V1.1が「衝撃をゆっくり吸収する・やや遅れて戻る」ような挙動だったのに対し、V2は「バネやゴムのように素早く弾き返す」非常にレスポンスの良い弾力性を発揮します。
※同程度折り曲げて手を離した直後の様子。V2(高反発ゴムライク)がすぐに元の形状に戻っている様子が見て取れる。このあと、V1.1(硬質ゴムライク)もゆっくりと元の板形状に戻ってゆく。

3. 破断伸び(耐久性・伸縮性)

  • 違い:120% ➔ 210%(約1.8倍に向上)
  • 詳細:千切れるまでにどれだけ伸ばせるかを示す数値です。1.8倍以上に向上したことで、パーツを強く引っ張ったり、狭い溝へ強引にはめ込んだり(スナップフィットやオーバーモールドなど)する際の「無理な引っ張りによる破断」が著しく起こりにくくなりました。

4. 引裂強さ(ちぎれにくさ)

  • 違い:24 kN/m ➔ 28 kN/m
  • 詳細:切り欠き(ノッチ)や傷が入った部分から裂けていくことに対する抵抗力です。この値が高いほど繰り返しの屈曲運動や、ピン角・角部が存在する構造であっても、傷口から裂けて破壊されるトラブルを防止します。

5. ガラス転移温度:Tg(耐寒性・温度変化への強さ)

  • 違い:27 ℃ ➔ -49 ℃
  • 詳細:高分子材料はガラス転移温度(Tg)を下回ると分子の運動が止まり、固くなります(ガラス化)。
    • V1.1(27 ℃):Tg が常温付近にあるため、冬場や少し涼しい室内(20℃前後)では分子運動が固くなり、本来の柔軟性が損なわれやすい傾向がありました。
    • V2(-49 ℃):Tg が氷点下まで大幅に下がり、一般的な室内や冬場の屋外であっても常に「しなやかなゴム状態」を安定して維持できるようになります。

6. ショア硬度 & 最大引張強さ

  • 違い
    • ショア硬度:80A ➔ 83A
    • 最大引張強さ:8.9 MPa ➔ 10.0 MPa
  • 詳細:基本となる硬さや引張強度も全体的に底上げされています。手で触った感覚としては同じショア80A台ではあるものの、V2の方が反発力が高いため、実際のショア硬度よりもやや硬めに感じます。

まとめ

両素材が並行して選択できる現在の期間において、どちらを選ぶべきかの判断基準をまとめました。

  • 「硬質ゴムライク(V1.1 / 半透明)」を選ぶべきケース
    • 流路確認、内部パーツの噛み合いチェックなど、透過性が必要な場合
    • すでにV1.1での評価データが蓄積されており、条件を同一に保ちたい場合
  • 「高反発ゴムライク(V2 / ブラック)」を選ぶべきケース
    • 「千切れやすさ」や「組み立て時の破損」を心配する場合破断伸び210%のV2が安心 
    • 「形状の戻りの早さ」や「動的な動き」が必要な場合復元力58%のV2が圧倒的に有利
    • 最終製品と同等の見た目・質感を求める場合 ➔ 黒ウレタンやTPUパーツの代替、機能評価モデルとして

新素材の「高反発ゴムライク(Flexible 80A V2)」は、ブラックへのカラー変更により造形のエッジ感が向上しただけでなく、復元力(反発力)や破断伸び、引裂強さが大幅に強化されています。これにより、変形後の素早い形状復元や強引な組み込み時の破断防止、傷からの亀裂進展を効果的に防ぎます。さらに、ガラス転移温度が27℃から-49℃へと劇的に低下したことで、冬場や室内でも本来のしなやかなゴム状態を安定して維持します。全体的な引張強度や硬度も底上げされており、よりタフな機構部品や緩衝材の試作・実用品として高いパフォーマンスを発揮します。

ぜひこの機会に新しい素材のパフォーマンスをお試しください。

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