AI電動義手にDMM.makeの3Dプリントを利用。「安く、軽く、より多くの人へ」NPO法人電動義手の会

NPO電動義手の会DMM.make3Dプリントサービス導入事例インタビュー

NPO法人電動義手の会・理事の山野井 佑介様にお話を伺いました。AIを活用した最新の電動義手にDMM.makeの3Dプリントサービスを活用いただいた事例をご紹介します。

山野井 佑介
電気通信大学大学院 情報理工学研究科 特任助教、国立成育医療研究センター 小児外科系専門診療部 整形外科 研究員などを経て、現:東京理科大学 工学部 電気工学科 嘱託助教。
NPO法人 電動義手の会 理事。

技術的な難易度が高く市場も小さいので民間企業には手が出せない分野である。製作費用をできる限りおさえる必要があるが、試作や改善を重ねる必要がある。海外の事例では重さゆえに電動義手を使わなくなってしまう患者さんもいた。

研究室の3Dプリンターで試作を繰り返し、きれいに長く使ってもらう物はDMM.makeへ外注した。ナイロンを使い、強度と軽さが叶うAI電動義手が完成した。

患者さんに利用いただいている義手のパーツの半分は3Dプリントしたものです。大手サービスでありながら、DMM.makeの価格は他社と比べても1/4~1/5程度と圧倒的に安かったことも決め手になりました。

「日本に電動義手を広めたい」NPO法人電動義手の会

NPO法人電動義手の会ロゴマーク

まずは「NPO法人電動義手の会」の団体概要を教えてください。

研究者や医師、義肢装具士など立場の違う人々が協力して、「電動義手」について研究・開発されてきたことを社会に役立つように広めようとしている団体です。
私自身も現在は大学教員をしています。学生時代から筋電義手を専門とされる横井浩史先生のもとで、電動義手について研究をしていました。

実際に電動義手を製作し、患者さんの声を聞きながら改善を重ね、利用いただいています。
国内で認可を受けている電動義手の製造元は私たちのグループと海外メーカーの3社だけです。

なぜNPO(特定非営利活動法人)という形態をとっているのですか?

上肢切断者は国内でおよそ8万2千人以上います。しかし技術的な難易度の高さにくわえ、企業が電動義手を開発し販売するには市場が小さすぎて参入を積極的におこなおうとしません。
だからこそ私たちが研究を続け、電動義手を広げていく意義があると考えています。

そもそも「義手」とはどのようなものでしょうか?

義手は装飾用義手、作業用義手、能動義手、電動義手の4種類に大きく分類されます。
残存している手の状態は患者さんごとに大きく異なります。そのため,義手は医師の診断を受け、義肢装具士さんが患者さんの身体の大きさや動きを見ながらオーダーメイドで一つひとつ作ります。

特にソケット部分に関しては患者さんの体に密着する部分なので、義肢装具士さんの高い専門性が要求されます。
一方で手先具やグローブなど患者さんに依らない部分に関しては、私たちや義肢装具メーカーが製造した国の認定を受けたパーツを利用して構成する仕組みになっています。

日本では機能性はなく腕があるように見せる装飾用義手が一般的です。
一方、私たちは本人の意思で腕や指を動かせる「電動義手」に注目しています。
まだまだできる動きは簡単なことに限られていますが、物を掴んだりキャッチボールができたりといったことができます。

たとえばアメリカやドイツでは戦争で手を失った軍人の方を中心に、社会制度も整えられ、電動義手が広まってきました。日本は「電動義手」においては遅れをとっているのが現状です。

どのような仕組みで動いているのですか?

たとえば手を動かす時、脳からの命令が電気信号として神経を伝って筋肉に流れると手が動かせます。
その電気を皮膚に貼ったセンサーでキャッチし、「どのように動かしたいのか?」をコンピューターで推測し、動作としてアウトプットしているのです。

電動義手の指の3Dデータ
3Dデータ
外装を外したロボット状の電動義手
複数の3Dプリント製パーツが使われている
ここ十数年はコンピューターやモーターなども小型化され、ウェアラブルな電動義手が日常生活でも使っていただけるようになってきました。
さらに3Dプリンターなどの技術革新もありました。これにより製作期間や製作費がおさえられ、電動義手を必要とする人が誰でも使える物になるように日々努めています。

2017年に完成、「AI電動義手」に DMM.makeの3Dプリント製品を

電動義手の全パーツ、この中に3Dプリンター製の部品も半分以上ある
電動義手の会が製作した「AI電動義手」

さらに皆様が作られている電動義手は「AI」も活用されています。これはどのようなものでしょうか?

実は「電動義手にAIを用いる」ということは30年程前から研究が続けられてきた分野でした。

2017年に発表したしたものは、AIを搭載しその人独自の身体の動かし方が学習できるものです。

これまでの電動義手は手の平を握ったり開いたりといった単純な動きしかできませんでした。
AIを用いることで、その人独自の体の動かし方を学習させて、より複雑な動作ができるのです。

AIが人の動作をサポートして楽に動かせるようになったのも、患者さんにとって嬉しいポイントでしょう。

それはすごいですね。
DMM.makeで作成いただいた3Dプリントはどのような物でしょうか?

国に指定された本法人の義手は約10個程のパーツから成り立っていて、それらを組み立てると片腕分の義手ができあがります。
3Dプリントしたのはそのうちの半分ほどで、ロボットハンドやバッテリやコンピューターのケースなど様々な部分に使われており、実際に患者さんに使っていただいています。

最終製品として実際に使っていただけているのですね!

はい、大学でも3Dプリンターは保有しているのでそこで試作をして、きれいに長く使ってもらう物はDMM.makeへお願いするようにしていましたね。

DMM.makeの3Dプリントサービスを選んでいただいた決め手はどこにあるのでしょうか?

大手サービスでありながら、御社の価格は他社と比べても1/4~1/5程度と圧倒的に安かったこともあり、選ばせていただきました。

データのチェックのフィードバックが丁寧なことや完成品もきれいで、信頼ができると感じています。

ありがとうございます!

ナイロン製で白く3Dプリントされた電動義手の手と指

素材はナイロン素材を選んでいただいていますね。3Dプリントをするうえで、どういった点を気にしていますか?

「強度が十分で、軽量であること」でしょうか。
軽さというのは重要で、腕がない/なくなってしまった方にとって、何もなかったところに300g…つまり小型ペットボトル1本分以下の重さの義手を装着するだけでも、我々が想像を絶するほど重く感じるのです。
海外のメーカーは一部パーツに金属を使っているのですが、それが重く感じられ、患者さんが使わなくなってしまうこともあるようです。

なので、私たちは数十g、数g単位にこだわって軽量化を目指しています。

開発者の観点から、電動義手を作るうえで3Dプリンターを利用するメリットはどこに感じられていますか?

まず「人間の手の形」というのは非常に複雑なのですよね。
なので、試行錯誤が必要ですが、それを板金や削り出しでおこなうとなると非常にコストがかかります。
それが3Dプリンターであれば微修正や試行錯誤をスピーディーに繰り返せるのが良いですね。

また重さについても、金属だと重くなってしまいますが樹脂であれば軽量化が叶います。

「初めてキャッチボールができた」と涙を流す子も。もっと電動義手を知ってもらいたい!

電動義手があることによって、ペットボトル飲料を開けて飲めたり、テープを切ったり、タブレットを触ったりできる
電動義手のおかげで何気ない日常の動作ができるように

実際に電動義手を使われた患者さんからはどのような感想をいただいているでしょうか?

すごく感動してくださいますね!
これまで無くて当たり前だったこと、そしてできなくて当たり前だったことができるようになる喜びを感じていただいています。

たとえば、あるお子さんは義手があることで初めて「キャッチボール」や「コップを掴んで水を飲む」といったことができるようになりました。
涙を流して喜ぶ患者さんやそのご家族の姿を見て、私たちの技術が役に立っているなぁと胸が熱くなりますね。

そのようなものづくりにDMM.makeの3Dプリントが携われていることを誇らしく思います。
それでは今後挑戦されたいことはありますか?

3Dプリントに関連したことでいうと、関節部分はやわらかい素材を使い骨の部分は硬い素材を使うなど、様々な素材にトライしてみたいですね。

やはりまだ人の手に比べるとできることは少ないので、より複雑にたくさん動かせるように改善を重ねていきたいと思います。
最近の研究では手首のひねりなどもできるようにステップアップしています。
このようにして、できることをどんどん増やしていきたいです。

団体として目指していることはありますか?

まだまだ患者さん自身ですら、電動義手のことを知らない方が多いです。
必ず役に立つものだと信じて、日々研究をしていますので、ぜひ当事者の方や社会にも広く知っていただきたいと思っています。
PRも頑張ります!

3Dプリンターの使われ方だけでなく、「3Dプリント技術は人々の生活をより豊かに幸せにする」というメッセージも一層伝えていきたいと感じました。この度はありがとうございました!

NPO法人電動義手の会
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NPO電動義手の会DMM.make3Dプリントサービス導入事例インタビュー
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