DMM.makeの3Dプリントサービスをお使いのお客様の事例を紹介する本連載。今回は、スマホグッズを制作されているM&S DESIGN様です。
3Dプリンターを使った制作物の概要と作り始めたきっかけ
本日はよろしくお願いいたします。
それでははじめに、M&S DESIGN様が3Dプリンターで作られている物について、簡単にご説明いただけますでしょうか。
よろしくお願いいたします。
私が作っているのは、iPhoneを保護するためのケースやバンパーです。
そういった物をデザインして、DMMさんのクリエイターズマーケットに出品させていただいています。
ありがとうございます。
iPhoneのケースを作り始めたきっかけは何だったのでしょうか。
最初のきっかけは、自分が欲しい物だったからですね。
iPhoneケースは手帳型が多いと思うんですけれども、落としてしまった場合のカバーとしての用途とは別に、iPhoneをなるべくそのままの形で使いたいという想いがありました。
そこで市販品をいろいろと探したのですが、いまいちピンとくる商品がなかったので、「それなら自分で作ってしまおう」という感じでスタートしたのが始まりです。
なるほど。
iPhoneを裸に近い形で使いたいので、出品されている物はバンパー系が多いイメージでしょうか。
最初の取っ掛かりはバンパーのような簡単な物を作りました。
ただ、作っているうちに段々と欲が出てきて、バンパーだけではおもしろくないと思うようになりました。
なので、いまは装飾的な部分だとか、ケース状の形でなにかおもしろい物を作れないかと思って、いろいろなデザインを試しています。
使っている3DCADソフトについて
データは3DCADで作られていると思いますが、作成はどちらのソフトをご利用されているのでしょうか。
私はRhinocerosを使っています。
部分的にBlenderを絡ませることはありますが、基本的にはRhinoceros一本で作っています。
もともと、お仕事などでCADソフトの経験があったのでしょうか。
私はもともと、福井でメガネメーカーのデザイナーをしています。
昔はすべて手書きで設計していましたが、途中からCADソフトを使って二次元のデータを作るようになったのが、CADに触れるきっかけでした。
その後に独立したのですが、偶然、メガネ関係のお客さんから3Dのデータを作って欲しいという依頼をいただいたんです。
それが大体14〜15年ほど前の出来事で、そこから3Dのソフトを触るようになりましたね。
アナログからデジタルに移行して感じた変化
CADを使うようになってから十数年、かなり長い期間利用されていますね。
手書きで設計していた頃と比べて、CADを使うようになって感じた変化などはございますか?
手書きでメガネの設計をしていた頃に経験したことですが、正面から見た形とサイドから見た形の辻褄を合わせるのが意外と大変なのです。
正面と横、それぞれでキレイなラインを描こうとすると、最初の形が崩れてしまうことが多かったんですが、その当時はサンプルを作ってくれる職人さんの感覚でうまくつなぎあわせてくれることがありました。
一方、3Dデータの場合は、正面とサイドの見え方の辻褄をすべて自分で合わせないといけません。
作り始めた最初のほうは、正面は良くてもサイドが微妙ということが多々あって、それを合わせるのが感覚的にずっと悩んでいる部分でした。
二次元と三次元の最も難しい部分かもしれませんね。
そうですね。慣れるまでにかなり苦労しました。
ただ、扱い方に慣れてくると、三次元的な見え方がわかるようになってきました。
二次元の頭では考えつかない形の発想だとか、意外とこういう形も作れるんだなという発想が湧いてきたので、とても有効的に使わせてもらっています。
作品の制作過程について
作られているiPhoneケースについて、具体的にお話を伺いたいと思います。
iPhoneの図面などはAppleから公開されているかと思いますが、iPhoneケース自体はRhinocerosのCAD機能などを使って、作られているのでしょうか。
iPhoneの図面自体はAppleのデータを参照しています。
自分でもiPhoneを使っているので、それに当てはめて辻褄を合わせながらケースを作っています。
DMMの受託サービスの性質上、試作品からの微調整という工程はなかなかスピーディーに行えない部分があるかと思います。
ご自身でも3Dプリンターをお持ちで、そちらをご利用されることもあるのでしょうか。
自分では3Dプリンターを持っていません。
なので、DMMさんで実際に発注して、自分のiPhoneで仕上がりを見ながら微調整の繰り返しという形で制作しています。
なるほど。
どれくらいテストを繰り返されているのでしょうか。
大体2〜3回ほどテストをしている感じですね。
データをアップロードすると担当の方からご指摘をいただけるので、その注意点を考慮しながら設計しています。
ただ、自分では「大丈夫だろう」と思っていた部分がガイドラインに引っかかること、実際に使ってみないとわからない部分も多々あります。
サンプルなり試作品を作ってみないと、実際にデータを販売するのは難しいので、自分でプリンターを持っていない分、タイムラグが生まれている現状があります。
使用している素材や制作物のデザインについて
iPhoneケースで使用している素材は何が多いのでしょうか。
基本的にはナイロン系です。
出品しているケースのデザインは着色が難しい構造になっています。
なので、自分で塗装や染色を試して、そのやり方をYouTubeにアップしています。
染色の仕方などは、自分のホームページやDMMさんのショップページからリンクする形にしています。
ご自身でYouTubeに動画を上げられているのですね。
弊社でも一応ナイロンの染色オプションをご用意しています。ですが、出品されているようなiPhoneケースだと、DMM.makeのデザインガイドラインでは長辺10cm以内が染色可能なのでギリギリ入らなそうですね…。
そうなのです。
あと、まだ実際に試せてはいませんが、アクリル系の素材には興味があります。
ちょうどいま、2種類ほど新しいiPhoneケースを設計していて、それをアクリルや他の素材で試してみたいと考えています。
アクリルに興味があるというのは、フルカラーで出力されたいからでしょうか。
もしくは精度的な意味合いが強いのでしょうか。
どちらかといえばカラーリングですね。
いまは「糸を絡ませたような形状のもの」、「二重構造で2つのパターンを組み合わせて立体的に見えるようなもの」など、特殊な形状のiPhoneケースを考えています。
DMMさんで提案されているカラーがすべてキレイに出せるなら全色展開も視野に入れていて、どの色が一番マッチするのかと試行錯誤している最中です。
単色のカラーリングで全色展開ということですね。
糸を絡ませた形状というと、CADでのデータ作成が難しそうですね。
かなり難しいですね。直径1mmくらいの線形を絡ませたようなデザインをイメージしているので…。
最初は鉛筆を使ってフリーハンドで線を書いて、それを模倣してデータを作るという感じでした。いまだに自分の頭の中で混乱する部分が多いですね(笑)
それをCADでゼロから作るのは大変な作業ですね。
そうですね。
ただ、私のデザインは基本的にバンパーをベースにしています。ボタンやスピーカー、Lightningジャックの部分は、バンパーの位置を調整して設計しています。
最初の形さえ決まってしまえば、あとの装飾は付随して作れるのでそこまで難しくはないですね。
塗装の様子
制作活動を始めて大変だったこと・良かったこと
CADを使った制作活動を始めて、大変だったことや苦労していることはございますか?
自分でプリンターを持っていないので、設計からリリースまでにどうしても時間がかかってしまう点ですね。
DMMさんに発注をしても、納品されるまでに一週間くらいの時間がかかります。
それから自分で試しに使ってみて、データの微調整や修正をして、それからのデータ販売となるので、どうしても1か月半〜2か月くらいの時間がかかってしまいますね。
そのあたりのスピードを早められれば、さらに多くのデザインを出品したいのでしょうか。
私のアイデアが続く限りは、ラインナップを増やしていきたいです。
自分で設計した物がそのまま出てくるので、ある程度の形は想像できますが、それでも「もっと厚みがあったほうが使いやすいな」などの感想が出てきますね。
設計上はこの厚みでいいかなと思っていても、実際にiPhoneに取り付けてみたら厚さが足りなかったということはありそうですね。
そうですね。そのあたりの改良のスピードを上げるために、DMMさんの即納サービスを利用したこともあります。
発注してから納期までのタイムラグを、できるだけ縮めたいなという想いはありますね。
ありがとうございます。
逆に、この活動をしていて良かったことは何かございますか?
自分の思い通りの物が、そのまま形として出てくるところが最大の魅力だと思っています。
それをショップ内で売るという部分は試行錯誤の真っ最中ですが、それも含めて楽しい部分ですね。
あと、3Dデータのことでいうと、知り合いのメガネメーカーが3Dプリンターを使ってフレームを作っていて、その3Dデータを作るという仕事にもつながっています。
最近は、シリコンの成形に必要な3Dデータを作って欲しいという要望もいただいていて、自分が個人的に使い始めた3Dプリンターの知識が、仕事にもつながっているのはおもしろいところだと思っています。
DMM.makeの利用は個人の活動でも、それが実際のお仕事に活用されていて、相互で良い関係にあるのですね。
DMM.makeを知ったきっかけと使い続けている理由
DMMを使い始めたきっかけは何だったのでしょうか。
iPhone用のケースを作ろうと思ったとき、御社のテレビCMでビートたけしさんが出られていて、それが印象に残っていました。
何社か調べたのですが、DMMさんのほうが3Dプリンターについてわかりやすくて、ショップも盛んにやられていたので、一度参加してみようと思ったのがきっかけです。
ありがとうございます。
他社もご検討されたとのことですが、DMMを使い続けている理由はございますか?
一番の理由は、国内大手で安心できるところですね。
他の人のショップも多く出ているので、そのあたりを眺めるだけでも大変参考になります。
これならしばらく続けていても大丈夫だなと感じたので、いまも利用させてもらっています。
今後の展開について
最初はご自身が欲しいという理由からiPhoneケースを作られましたが、実際にショップの運営をされてみていかがですか?
正直、数字はあまり伸びていません。
ただ、それは自分のプロモーションの問題だと思っています。
いろいろ試行錯誤しながら、次に考えている第二弾、第三段をうまく出していきたいと考えています。
プロモーションの問題とのことですが、いまはどういった活動をされているのでしょうか。
SNSを使って活動したり、自分のホームページを使ったりとかですね。
これまでは、毎日定期的に情報を流すことが出来ていなかったので、いま開発中の物を小出しにするとか、そういう形で定期的にアップしていこうと考えています。
DMM.makeに対する要望
最後に、弊社に聞いてみたいことやご質問等はございますか?
先ほどのプロモーションのお話になりますが、ショップページのトップやヘッダーに動画を掲載できるようになると嬉しいですね。
私のiPhoneケースを実際に取り付ける動画や、15秒くらいのCMなどを載せられると、興味を持って見てもらえたお客さんにアピールできるかなと思いました。
ありがとうございます。
あとは、商品ページやショップページへの流入も増すのもいかがでしょうか。
そうですね。SNSやホームページをうまくリンクさせて、ショップに飛べるようにしたいです。
その上で、ショップのページでおもしろい映像が見られる形に持っていけたら、私の作品に興味を持ってもらえるのかなと思っています。
それでは、本日は以上とさせていただきます。
お時間をいただきまして、ありがとうございました。
ありがとうございました。
M&S DESIGN様:
クリエイターズマーケット:https://make.dmm.com/shop/237549/