DMM.makeの3Dプリントサービスをお使いのお客様の事例を紹介する本連載。今回は、タイルや壁紙、ハンドメイド用の布地や和風のお菓子作りなど、アイデア次第でどのようなものにも使えるステンシルを製作されているすみれ様です。
3Dプリンターを使った製作活動について
お時間いただきましてありがとうございます。
さっそく、3Dプリンターを使ってどのようなものを作っているのかをご紹介いただけますでしょうか。
私は様々な文様をくり抜いた「ステンシル」という型を作っています。
DIYのためのタイルや壁紙、ハンドメイド用の布地など、いろいろな素材に模様を写せるものとして販売しています。
どういった経緯で現在のご活動をされるようになったのでしょうか。
私はもともと23年ほど、インテリアコーディネートの仕事を続けてきました。
2020年頃にコロナ禍となって、世界が同時に変わり始めたのを感じまして、今までの仕事のやり方や生き方を見直すきっかけになりました。
このままの仕事のやり方で良いのかと考えていたときに、海外では3Dプリンターで住宅を造れるようになったと知って「なるほど!」と思ったんです。
調べてみたら、海外では自宅に3Dプリンターを持っていて、小さなものならデータをオンラインで購入して、自分で造形している方もいらっしゃることがわかりました。
「そういった需要があるのなら、私も3Dプリンターで造形できるデザインデータの販売に取り組んでみよう」と思ったのがきっかけですね。
なるほど。今後の事業を検討する上で、3Dプリント用のデータを作ってみようと思われたのですね。
そうですね。
手始めに家庭用の3Dプリンターでも作れる小さな物、なおかつ、これまで取り組んできたインテリアと関係があるものを作ろうと考えました。
そこで思いついたのが、いまDMMさんのクリエイターズマーケットで販売させてもらっているステンシルだったんです。
ステンシルの具体的な用途をご説明いただけますでしょうか。
ステンシルは「アイデア次第でどのようなものにも使えるもの」として販売しています。
たとえばタイルや壁紙に模様をつければ、DIYでリノベーションのデザインのアクセントにできますし、無地の布にステンシルを使って模様をつければ、オリジナルのハンドメイド作品を作ることもできます。
あとは、お料理のデザインとして取り入れることもできますね。
日本の伝統的な文様なので和風のお菓子作りに使える、という形で動画も撮影して紹介させてもらっています。
ステンシルはこちら側で用途を指定せず、様々な使い道があるものとして販売されているのですね。
動画まで作られているのは素晴らしいです……!
いずれはインテリア的な使い方でも動画を撮影したいと思っていますが、今は誰でも飛び込みやすいお料理、お菓子作りにステンシルを使うご提案をさせていただいています。
使っている3DCADについて
もともとはインテリアコーディネーターとして、建築関係のお仕事をされてきたのですよね。3Dデータを作成するCADは、以前から利用されていたのでしょうか。
建築CADの勉強はしていましたが、自分でインテリアの設計をするときは、すべて手書きでやっていました。3Dプリンター用のデータを作るようになって初めて、3DCADの「Fusion 360」を勉強しました。
Fusion 360 をお使いになってみて、いかがでしたか?
難しかったですね。
あまり複雑なものは作れないと思ったので、簡単にできるステンシルを選びました。
和柄などのパターンが繰り返されると、CADが重くなりそうな印象ですが、その点はいかがですか?
そうなんですよ。なので、最初はすごく時間がかかってしまいました。
どうしたら短時間で作れるか、だいぶ試行錯誤しましたね。
直線的なものであれば、寸法を決めて数字入力でスケッチを描けばきれいに作れそうですが、家紋など曲線が複雑なものでは苦労しそうですね。
モデリングに使うSVGなどのデータも、ステンシル仕様にしないと模様が抜け落ちてしまうので、その辺りは少し工夫してデザインし直しています。
アナログからデジタルに移行して変化したこと
アナログな手描きからデジタルなCADに移行して、どのような変化があったでしょうか。
私の場合は、手描きにこだわっていた理由があるんです。
実際に手を動かすことによって、そのときにひらめくものがあったんですよ。
何気なく引いた線からインスピレーションが湧いたりしますよね。
そうです、そうです。
手を動かしていると、描いているうちにひらめきがあるんです。ただ、デジタルの場合はそれがまったく無くて、機械的な作業というか、CADが理解できる言葉で指示するみたいな感じじゃないですか。
きっと、アナログとデジタルとで頭の使い方が違うからだと思うのですが、私の場合はCAD上で何かが発展して発想につながることはないんです。
発想を膨らませるためには、アナログのほうが向いていたのですね。
データを作る際には、和柄などを調べた上で、直接CADを使って描いているのでしょうか。
そうですね。直接CADを使ってモデリングして作ったものをDMMさんにお願いして、テストプリントしてから販売しています。
DMM.makeで選んだ素材について
ステンシルの3Dプリントには、どんな素材を選ばれていますか?
「ナイロン」と「アクリル(Ultra Mode)」です。
クリエイターズマーケットで販売しているので、この2つからお客様に選んでいただく形になります。
これらの素材を選ばれた理由はなんだったのでしょうか。
食材や絵の具などがステンシルに付くので、洗えるようにと思って選びました。
あとは、和柄の紋様は意外と細かいので、最小の幅や厚さに求められる仕様をクリアできる素材として、ナイロンとアクリル(Ultra Mode)の2つに絞り込みました。
ただ、こうした素材を選ぼうとすると、種類がかなり絞られてしまうことが気になっています。
アクリル(Ultra Mode)は高精細なのできれいに出せるかと思いますが、ナイロンも想定した寸法が出せるということでお使いいただいているのですね。
細かい部分などは、弊社のガイドラインをご覧いただきながら調整いただいているのでしょうか。
そうです。元のデザインをできるだけくずさないよう、線を太くしたりする作業がだいぶ大変でした。
ご注文いただいたデータを造形することが難しい場合、弊社のオペレーターから連絡をさせていただいています。そういった修正も何度かされているのでしょうか。
それはもう、ほぼ毎回のように(笑)
多分、とてもご迷惑をおかけしているかと思うんですが、こちらとしてはすごく助かっています。
3Dプリンターを使い始めて大変だったこと
3Dプリンターを使った製作活動を始められて、大変だったことは何かございますか?
最初は自社で3Dプリンターを購入して、自分のところで作ろうと思っていたんです。
でも、いざやってみたら絶対にこれは自分じゃできないと思いましたね。
なるほど。今もご自身では機材を購入されてはいないんですよね?
もともとは買う予定で、機種の選定までしましたが、直前で購入をとりやめました。
メーカーさんがテストで1枚作ってくれるとのことでお願いしたのですが、1枚作るのに丸1日、24時間くらい経っていて、しかも何回もやり直してくださったみたいで……。
これを自分でやったら大変なことになると思ったので、外注できる先を3Dプリンターの情報サイトやニュースサイトで探して、DMMさんを知りました。
うまくDMMを見つけていただいて良かったです(笑)
「自分が考えているステンシルは、果たして3Dプリンターで造形できるのか?」がわからなかった最も初期の段階では、自分で3Dプリンターを持っていらっしゃって代理で造形しますよ、という個人の方にお願いしていました。
クラウドソーシングサイトなどで探されたのでしょうか?
まさにそれです。
自分でもクラウドソーシングでサービスを提供していたことがあったので、まずはそのサイトで3Dプリンター関連のサービスを提供している方を探しましたね。
最近だとデータの作成をされている方もいらっしゃいますよね。
存在自体は知っていましたが、実際にご利用になられた方のお話は初めて伺ったので、大変参考になります。
3DCADの操作方法を覚えて、自分が作りたいものをちゃんと出せるプリンターを見つけるのは本当に大変でした。
3Dプリンター自体がもう少し安くなって、手軽に試せるような場があると嬉しいですね。
なかなか気軽に試せる場がないので、初心者が何を基準に選べば良いか、わかりにくい部分はあると思います。貴重なご意見、ありがとうございます。
3Dプリントに困っていたので、本当にDMMさんを見つけられて良かったと思っています。
注文後に造形できるかどうかデータをチェックしてもらえますし、「この部分が細すぎる」という具体的なフィードバックもいただけるので、必要最小限の試作品で済みました。
データチェックで指摘された修正箇所を直したあとは、ほぼ失敗なく造形できたでしょうか。
そうですね。あったとしてもほんの数点くらいでしょうか。
ありがとうございます。
3Dプリンターを使い始めて良かったこと
将来的な3D活用に向けてステンシルから取り組み始めたということですが、この活動をやっていて良かったことはございますか?
一歩前進したというか、視野が広がった感じがありますね。
あとは、もう少しいろいろな素材が使えるようになったら、もっと面白くなるかなと思います。
なるほど。
今後、作ってみたいものなどはありますか?
インテリア小物を作ってみたいですね。
たとえば、照明器具のランプシェードなどをガラスや陶器で作ってみたり。この辺りの素材が使えたら、オブジェやお花を生けるものは作れそうな感じがしますね。
ガラスや陶器となると弊社での取り扱いがないのですが、今と同じナイロンであれば、ランプシェードなどは作りやすいかと思います。
より立体的な3Dデータの作り方を覚えることは次のハードルかと思いますが、ぜひ挑戦してみていただきたいです。
DMM.makeを使い続けている理由
最初にDMMを見つけてから、今も使い続けている理由はございますか?販売にもクリエイターズマーケットをご利用いただいているので、その辺りのお話もお伺いしたいです。
本当は海外のECサイトでSTLデータを販売するつもりで始めました。
海外の方向けということもあって和柄の文様を選んだのですが、そのサイトが新たに導入した支払いシステムの関係で、日本からの出品が停止されてしまって。
そうなのですね! データの販売であれば、どの国かは関係なさそうなイメージですが……。
そうですよね。今も出品できない状態が続いていて、かれこれ半年以上は経っています。
なので、とりあえずは国内で販売してみようと思って、DMMさんのクリエイターズマーケットを使わせてもらっています。
なるほど。そうなると、クリエイターズマーケットが海外対応したらベストですね。
はい、海外向けにサービス展開していただけたらとても嬉しいです。
ただ、データを販売するとなったとき、著作権などの管理をどうすべきか悩んでいて。データを購入した人の目的が、商業利用かどうかを判断することってほとんど無理じゃないですか。
データとして販売してしまうと難しいですね。STL形式にすればデータそのものの編集はしづらくなりますが、権利を守るという方向性で考えると、やり方を考えないといけないですね。
海外販売になると、それがまず無理だなと思っています。次の段階としては、STLデータを話題のNFT化して販売する、みたいな流れも考えていました。
海外向けのデータの販売は、課題が多そうですね。
今後の製作活動で挑戦してみたいことやDMM.makeへの要望
将来的にデータ販売をしたいということですが、他にやってみたいことは何かございますか?
別の材料を使ってみたいですね。
まだ全部を見たわけではありませんが、金属系の素材は気になっています。
あと、先ほど申し上げた粘土など、セラミック系の素材は使ってみたいですね。
セラミックであれば、最近は精度の良いプリンターが増えてきていますね。
ただ、医療目的や電気関係目的で開発されているものが多いので、雑貨レベルまで価格がすぐに落ちるというのは難しいかもしれません。
やはり価格は大きなポイントですよね。
量産品と比べてしまうと、価格面ではどうしても勝てないとは思っています。
金属で始めやすいところですと、シルバーなどの貴金属系はいかがでしょう。雑貨向きのチタンやアルミなどもあるので、機会があればお試しいただければと思います。
それでは本日はこちらで終了とさせていただきます。
お時間いただきまして、ありがとうございました。
ありがとうございました。
すみれ様 クリエイターズマーケット