難燃性・難燃グレードとは? 3Dプリンターで使える難燃性の高い素材も紹介

難燃性・難燃グレードとは?3Dプリント素材についても解説

「難燃性」とは素材の物質特性で、火災リスク軽減や変形予防に欠かせない要素です。この記事ではものづくりの場面で必要とされる難燃性や素材の知識について概要を分かりやすく説明します。3Dプリンターでは主に樹脂(プラスチック)素材が使用され、そのため難燃性素材に関するお問い合わせが多く寄せられています。この記事では、3Dプリント時に適切な素材を選ぶ際のヒントも提供します。

難燃性・難燃性能とは

「難燃性」とは、物質が炎や高温に晒された場合の燃えにくさや燃焼を遅らせる性質のことを指します。
高温や火器の近くなどといった場面で素材・部品が使用される場合は、必要に応じて「難燃性」をチェックし、安全性の高い製品づくりをおこないましょう。

たとえば、金属やガラス、コンクリートなどの材料は、その高い耐熱性から一般的に不燃材料と考えられますよ。

特に電子機械やOA機器、医療器具などを取り扱う分野では、安全性を考慮して高い難燃性を持つ素材が重視されています。

プラスチックにおける「難燃性」

難燃性とはプラスチックだけでなく、他の多くの材料にも適用される概念ですが、活用シーンが幅広いプラスチックにおいては難燃性の等級が「UL94規格」「酸素指数(OI)」など細かく定められています。

【プラスチックにおける燃えにくさの評価】

  • 一切の火がつかない「不燃性」
  • そもそも燃えにくい「難燃性」
  • 熱源から離れると火が消える「自己消火性」
  • 燃焼速度が遅い「遅燃性」

現在は3Dプリンターで出力可能な樹脂素材の中にも難燃性に優れた素材が登場しています。

たとえば、金属パーツを難燃性の高いプラスチック素材の3Dプリントパーツに置き換えて軽量化・コストカットをはかるといった活用方法があります。

難燃グレード

難燃グレードとは材料の燃えにくさ(難燃性)の度合いを表すランクです。プラスチックには難燃性の高い材質もあれば、反対に可燃性の高い材質もあるため、製造業における難燃性の材料評価は欠かせない重要な指標となっています。
難燃グレードを表す際は、アメリカの製品安全認証機関(Underwriters Laboratories=UL)が定めた「UL94規格」が用いられるのが一般的です。
UL94規格では、プラスチックの試験片に規定の位置から様々な角度で火を当てる「水平燃焼試験」や「垂直燃焼試験」をおこない、試験片の燃焼具合からグレードを判別しています。

【UL94規格に基づく難燃グレード】

  • 5VA
  • 5VB
  • V-0
  • V-1
  • V-2
  • HB

上記の中で最も難燃性が高いのは「5VA」、難燃性が劣る「HB」は自己消火性がないものの、遅燃性があることを示しています。
家電製品で難燃性の材料を使用する場合はV-0以上が望ましいとされており、ABS樹脂の難燃性の基準としてはV-0、V-2、HBが一般的です。

一方、難燃性の最高レベルに当たる「5VA」「5VB」は基準が厳しく、電化製品の大型装置や情報処理装置など、非常に限定された分野でしか用いられません。
実用的なレベルの難燃性を得るためには、難燃剤を添加して、燃焼速度を遅くしたり自己消火性の特性を付与したりします。

なおJISで定められている「酸素指数(Oxygen Index)」で難燃性を表す場合もあり、OIの値が大きいほど燃えにくく、一般的には27%以上の物質は難燃性があると分類されます。

各グレードに分類される代表的な材料

難燃性の各グレードに分類される代表的な材料をご紹介します。
なお、ここでは一般的な用途で使われることが多いV-0〜HBに絞って代表的な材料をまとめています。

【各グレードに分類される代表的な材料】

V-0PEX(架橋ポリエチレン)、RTV(室温加硫シリコンゴム)、PI(ポリイミド)、PPSU(ポリフェニルスルホン)
V-1PPO(ポリフェニレンオキサイド)
V-2PA(ポリアミド)、PC(ポリカーボネート)
HBPMMA(アクリル)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)

難燃エラストマーとは

難燃エラストマーとは、難燃性を持つ柔軟性・伸縮性のあるエラストマー(ゴム状の高分子材料)のことです。通常のエラストマーはゴムのように伸縮性があり、元の形に戻る特性を持つ物質ですが、炎にさらされると燃えやすいという特徴があります。そこで難燃剤や特定の化合物を添加し、エラストマーに難燃性を付与したものが難燃エラストマーと呼ばれています。

この難燃エラストマーは、火災のリスクがある場所や高温環境下での使用、たとえば電線の絶縁材、ガスケット、シールなどの部品に用いられます。
エラストマー固有の伸縮性や柔軟性を保持したまま難燃性が付与されているため、多くの産業分野で活用されています。

難燃性の燃焼試験

こちらはUL94規格のプラスチックの燃焼性試験の動画です。

たとえば、燃焼性の試験ではこのようなことがチェックされます。

  • 節煙後の燃焼時間
  • 複数回設炎したあとの燃焼時間の合計
  • ドリップの落下による脱脂綿の燃焼
  • 難燃性の評価は、燃焼時間(秒数)だけではなく、材料が燃える速度や燃え広がり方、燃えた後の残り方など、さまざまな要素に基づいて行われます。

    3Dプリント素材にも難燃性対応の素材はある!

    3Dプリント用の樹脂素材にも難燃性の高い素材はあります。金属などの従来の素材から3Dプリント品に置き換えることで、軽量化やコストカット、複雑形状の一体造形による時間短縮などが叶えられるでしょう。

    DMM.makeにて取り扱いのある難燃性が高い3Dプリント素材

    DMM.makeの3Dプリント出力代行サービスにおいては、約50種類以上の素材の取り扱いがあり、その中でも難燃性の高いプラスチック素材のご用意があります。

    特に難燃性が高い素材はこちら! エンジニアリングプラスチックの「ULTEM」の2種類で、難燃グレードは「UL-94 V-0」です。

  • ULTEM9085|FDM
  • ULTEM1010|FDM
  • 難燃性素材、その他物性についてはこちらの物性表からご覧になれます。

    物質特性とは?|機械・物理・化学的性質の基礎知識【3Dプリント用物性表・物性値の見方付】

    まとめ

    「難燃性」とは、物質の燃えにくさや燃焼を遅らせる性質のことを指します。UL94規格によって物質の難燃性を示す6種類の難燃グレードが定められていおり、ものづくりをする際の素材には難燃性をチェックするようにしましょう。
    製品の安全性と品質向上に向け、難燃性の重要性を理解を深める一助となりましたら幸いです!

    「●●●の用途で難燃性の高い素材を選びたい!」「3Dプリントではどんな素材や造形をするのがベスト?」 このような疑問があったらお気軽にこちらよりお問合せください。

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