RoHS(ローズ)指令:特定有害物質使用制限をわかりやすく解説!3Dプリント対応素材も紹介

RoHS指令とは

RoHS指令とは

RoHs(ローズ、ロース)とは、Restriction of Hazardous Substances(危険物質の制限)の頭文字から成る言葉で、日本語では「特定有害物質使用制限指令」と呼ばれています。

特定有害物質の使用を制限するためのEU(欧州)の法律で、制定された背景には電気・電子機器の廃棄物の急増と機器に含有される有害物質による健康・環境への影響が挙げられます。

RoHs指令の目的

RoHS指令には、大きく分けて2つの目的があります。

  • 廃棄する電気・電子機器のリサイクルを簡単におこなえるようにすること
  • 最終的に埋め立てや焼却処分する時にヒトと環境に影響を及ぼさないようにすること

この目的を達成するために、人や環境に対して悪影響を及ぼすと考えられる有害物質の使用を制限するために制定され、2003年2月の初公布から数年にわたり、制限物質の追加をするための改正がおこなわれています。

なお、RoHS指令はEU加盟国に対する制限規制であるため、日本国内で製造・販売する場合にはRoHs指令が適用されることはありません。

ただしEUを含むグローバルな市場への展開を考えている製造業においては、EU加盟国への輸出や販売を想定し、国内事業者であってもRoHS指令を遵守した製造・販売をおこなう必要があるといえます。

より詳しく知りたい方はこちらの動画もあわせて参考にしてみてください。

RoHs2(RoHsⅡ)とは?

RoHs指令は数年ごとに改正がおこなわれており、2023年時点で発効されているRoHs指令は「RoHs2(RoHsⅡ)」と呼ばれています。

当初のRoHs指令(2002/95/EC)は2003年2月13日のEU官報で公布、2006年7月1日に施行されました。

その後、2008年12月に欧州委員会からRoHs改正案が公表されて以降、2年にわたって協議がおこなわれ、2011年7月1日にEU官報で公布、7月21日に改正RoHsが発効されます。

改正RoHs指令の発効に伴い、旧RoHs指令は2013年1月2日に廃止され、翌1月3日から改正RoHs指令に置き換わっています。

その後、RoHs2の制限物質を定めた2011/65/EUのAnnexⅡ(附属書Ⅱ)を置き換える官報が2015年6月4日に公布、2019年7月22日から適用され、現在のRoHs指令として制限物質が10種類に拡大されました。

なお、RoHS指令の新規規制物質の追加や適用除外の申請検討は、EU委員会より委託されたOko-Institut e.V.(ドイツ・フライブルク)が一任しています。

参考:“RoHS Exemptions”

RoHSの製造者の義務

RoHs指令では、EU加盟国の製造者に対して、次の4つの義務を課しています。

II. 生産者の義務
1.改正RoHS指令は、CEマーキングを義務付ける指令のひとつとされたため、対象となる製品の製造者は改正RoHS指令への適合性評価を実施して適合宣言をし、製品を上市するまえにCEマークを貼付することが必要です。適合の根拠を明示する技術文書(整合規格はEN50581)を作成し、適合宣言書とともに10年間保管することが求められます。(カテゴリ11「その他の電気・電子機器」については2019年7月22日より適用開始、それ以外の全てのカテゴリの製品については既に適用済み)
2.設計変更や整合規格などの変更では適切に対応し、製品の適合状況を適切に維持管理することが求められます。
3.製造番号など製品識別に必要な情報、および製造者の名前、登録商標、住所および連絡先を製品または包装や添付文書に表示することが必要です。
4.上市後に不適合があれば製品をリコールし、加盟国の所轄当局にただちに通知しなければなりません。
引用:日本貿易振興機構(JETRO)「RoHs(特定有害物質使用制限)指令の概要:EU」

2006年に施行されたRoHs1では製造業者のみに法的義務を課していましたが、2015年に公布されたRoHs2では製造から販売までに至るすべての事業者(生産者・輸入者・販売者など)に義務が課されています。

RoHs指令違反による罰則としては、5,000ポンド以上の罰金及び製品の回収義務、場合によっては以降の製品輸出の拒否といった厳しい処罰が下される可能性があります。

RoHs 10物質

2011年の改正RoHs指令の発効より、規制対象が10物質となりました。

  1. 水銀
  2. カドミウム
  3. 6価クロム
  4. PBB(ポリ臭化ビフェニル)
  5. PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)
  6. フタル酸ビス(DEHP)
  7. フタル酸ジブチル(DBP)
  8. フタル酸ブチルベンジル(BBP)
  9. フタル酸ジイソブチル(DIBP)

それぞれの規制対象物質には「wt%(読み方:ウェイトパーセント)」として最大許容濃度が定められています。
「wt%」は製品の重量を基準とした含有率の単位で、0.1wt%は100gの製品に0.1g含まれていることを示します。
それぞれの最大許容濃度はカドミウム0.01wt%(重量比)で、そのほかは0.1wt%です。

参考:J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]「RoHS指令の概要-RoHS指令の基礎」

RoHS指令の対象製品カテゴリー

RoHs指令の対象となる電気・電子機器の基準は「定格電圧AC1,000V、DC1,500V以下」と定められています。

具体的には、現時点で11カテゴリーに分けられていますが、RoHS指令の規制条項には製品群の例示がないため、FAQで企業が決定するとしています。

【対象製品カテゴリー】

  1. 大型家庭用電気機器
  2. 小型家庭用電気製品
  3. 情報技術・電気通信機器
  4. 民生用機器
  5. 照明機器
  6. 電気・電子工具
  7. 医療機器
  8. 農業用を含む監視及び制御機器
  9. 自動販売機
  10. 上記カテゴリに入らないその他の電気電子機器

たとえば「民生用機器」はテレビや電子楽器、「産業用を含む監視および制御機器」には煙検出器やサーモスタットなどが挙げられます。

引用:富士フイルムビジネスイノベーション「RoHS(ローズ)指令とは?規制対象となる10物質を詳しく解説」

RoHS適用除外について

RoHS指令の附属書III及び附属書IVでは、特定有害物質の除外規定が定められています。
たとえば、規制対象に含まれる「鉛」は、下記の用途で使用される場合はRoHs指令の適用が除外されます。

【RoHs指令の適用除外(一例)】

  • 鋼材に含まれる0.35wt%までの鉛
  • アルミニウムに含まれる0.4wt%までの鉛
  • 真鍮に含まれる4wt%までの鉛

なお、RoHs指令の適用除外となる物質は、技術的・化学的に代替不可とされる用途の物質に限られています。
適用場外に期間が設けられており、期限が過ぎた場合は適用除外の解除または延長の検討がおこなわれます。

3Dプリント素材にもRoHS対応の素材はある!

RoHS指令に準じた造形物を製造しようとしたとき、どの素材を使うかを考えなければいけません。
それは3Dプリント製品においても同様です。
DMM.makeではRoHS指令に準じた素材も取り扱っております。

【RoHS指令対応3Dプリント素材例】

まとめ

昨今では私たちの暮らしをより快適にするため、さまざまな電気・電子機器が製造販売されていますが、それらに含有される有害物質による人の健康や環境への悪影響が考えられます。
RoHs指令では、そのような有害物質の使用を制限するため、EU加盟国に対して課せられた法律です。

日本国内のみで製造販売する場合に適用されることはありませんが、グローバルな市場への展開を考えている製造業においては、国内であってもRoHs指令を遵守することが求められます。

DMM.makeではRoHS指令に対応した3Dプリント素材をご用意しています。用途に合わせた素材選びや証明書の発行についてはこちらからご相談ください。

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