REACHとは
「REACH規則」とは、欧州連合(EU)によって発効された「化学品の登録・評価・認可および制限に関する規則」のことです。
Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals の頭文字を取って「REACH(リーチ)」とも呼ばれています。
この規則では、EU域内で製造または輸入される物質において、欧州化学品庁による「登録(Registration)」「評価(Evaluation)」「認可(Authorization)」「制限(Restriction)」の義務が課されます。
参考:経済産業省『欧州の新たな化学品規制(REACH規則)に関する解説書』
J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]「REACH規則の概要」
REACH規則の概要
REACH規則には、主に次の3つの目的があります。
【REACH規則の目的】
- 人の健康と環境の高レベルの保護
- EU市場での物質の自由な流通の確保
- EU化学産業の競争力と革新の強化
REACH規則は、2006年12月18日に欧州理事会で採決された後、2007年6月1日に発効されました。
制定された背景には、人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を2020年までに最小化する化学物質管理に関する指針「ヨハネスブルグ実施計画(2002年)」の採択など、化学物質を適切に管理するための国際的枠組み作りの進展などが挙げられます。
つまり、EU市場における流通の確保や化学産業の強化を図りながら、人の健康と環境を高いレベルで保護することを目的に、化学物質の登録や評価のルールを決めたものが「REACH規則」です。
REACH規則においては、「物質」・「調剤」・「成形品」で製品をとらえます。そして世界に存在するほぼすべての化学物質が対象となっており、大きく分けると次の3項目で規制されています。
制限物質
REACH規則の「制限物質」とは、人の健康や環境への悪影響が到底受け入れられないほどの高いリスクを持つ物質のことです。
制限物質は「REACH規則 附属書ⅩⅦ 」の「Restrictions(制限)」の項目に記載されており、原典には52種類の制限対象(物質、調剤)および10種の付録(発がん性区分、変異原性区分、生殖毒性区分、アスベスト含有成形品など)があります。
これらの物質は、EU全域で制限条件が付与されたり、場合によっては使用が禁止されていたり、非常に厳しい制約が定められています。
もともとはEU指定76/769(危険な物質及び調剤の上市と使用に関する制限司令)で制限されていた50種類の化学物質が引き継がれましたが、さらに約50種類が追加されています。
環境省の公式ホームページでは附属書の仮訳が掲載されていますが、制限物質が記載されている附属書ⅩⅦは省略されているため、原文を翻訳するか市販の翻訳資料を購入する必要があるので気をつけましょう。
認可対象物質
REACH規則の「認可対象物質」とは、人の健康や環境への影響が懸念される認可対象候補物質(CL物質)の中で、技術的・社会経済的な検討を経た上で「REACH規則 附属書ⅩⅣ」に記載された物質を指します。
- 四エチル鉛(登録番号55)
- 4,4′-ビス(ジメチルアミノ)-4”-(メチルアミノ)トリチルアルコール*(登録番号56)
- ジオクチルスズビス(2-エチルヘキシルチオグリコラート)(DOTE)(登録番号58)
*ミヒラーケトン(EC No. 202-027-5)、またはミヒラー塩基(EC No. 202-959-2)を0.1%以上含んでいる場合
REACH規則のRegistration(登録)では、EU域内で年間1t以上の製造または輸入する場合に化学物質の登録を義務付けていますが、認可対象物質を使用または上市する場合は、1t未満であっても特定の用途ごとに化学品庁から認可を得る必要があります。
認可対象物質にはSunset Date(日没日・期限日)が設けられており、Sunset Date以降は認可を受けないと上市ができませんが、18ヶ月前までに認可申請をすれば、認可が決定されるまでは継続上市が可能となります。
一方、「研究開発の用途」や「化粧品における使用」など、特定の用途においては認可の適用が除外されるので覚えておきましょう(REACH規則第56条より)。
高懸念物質(SVHC)
REACH規則の「高懸念物質(SVHC)」とは、REACH規則 附属書ⅩⅣに記載される認可対象物質の候補とされる物質です。
2023年6月14日公表分から抜粋すると、次のような物質が高懸念物質(SVHC)とされています。
- ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(登録番号234)
- ビス(4-クロロフェニル)スルホン(登録番号235)
SVHCには、人の健康に影響を及ぼすCMR物質(発がん性、変異原性、生殖毒性)、環境に影響を及ぼすPBT物質(難分解性、生物蓄積性、有毒性)やvPvB物質など、項目ごとに分類して定義されています(REACH規則第57条)。
SVHCに該当する物質が0.1%以上及び1企業につき年間1t以上を含む製品については、化学品庁への通知が義務付けられています。
また、SVHCに該当する物質が0.1%以上含まれている場合は、SVHCリストに掲載された日付から45日以内に製品に関する安全性の情報及び製品への物質名記載が求められます。
REACHを気にするべき事業者は?
REACH規則は、EU域内で製造または販売する場合に適用される法律なので、日本国内の事業者に対して直接的な拘束力はありません。
ただし、日本企業がEU域内で製造または製品の輸入を行っている場合は、REACH規則への対応が必要です。
また、国内で製造した部品や素材を用いた完成品がEUに輸出されている場合は、EU域内の輸入業者がREACH規則に対応しなければならず、その際に輸入業者からREACH規則への対応を求められるケースも考えられます。
日本国内の製造業者に対して全くの影響がないというわけではないため、製造業に携わる事業者はREACH規則への知識を身に着けておく必要性があります。
REACH規則は人の健康や環境への悪影響を抑えることを目的としていることから、肌に長時間触れるようなアクセサリー類(ピアスやイヤリング、ネックレスなど)を製造・販売している企業、数多くの部品群が用いられる自動車業界は特に注意が必要です。
3Dプリント素材にもREACH対応の素材はある!
REACH規則に準じた「成形品」を製造しようとしたとき、どの素材を使うかを考えなければいけません。
それは3Dプリント製品においても同様です。
DMM.makeではREACH規則に対応した素材も扱っております。たとえば、「ABSライク|MJT|J750」「PA12Wホワイト|MJF」がそれに当たります。
まとめ
REACH規則は、EU域内で製造または輸入される物質において、化学品庁による登録や評価、認可、制限の義務を課すための法律です。
日本国内では直接的な影響はありませんが、製造した部品を使った成形品がEUへ輸入・販売される場合には、国内事業者であってもその対応が求められる場合があります。
具体的な対応が必要な場合は、経済産業省や中小企業庁などの最新情報を確認のうえ、対応するようにしてください。