多品種少量生産とは?トヨタも実践した生産方式、3Dプリンターの活用可能性は…?

トヨタも実践した多品種少量生産と3Dプリンターの可能性

製造業・ものづくりおける重要キーワード「多品種少量生産」とはどんなものかをクローズアップします。トヨタの実践例や3Dプリンター活用の可能性まで、これからのものづくりに携わる方は必読です!

多品種少量生産とは

多品種少量生産は、製造業の生産方式のひとつで、様々な種類の製品を少量ずつ生産する方式のことです。
従来の製造現場では少品種大量生産方式を採用するケースが一般的でしたが、近年では個々のニーズへの柔軟な対応が求められるようになり、多品種少量生産を採用する企業が増加傾向にあります。

生産スケジュールや作業工程の煩雑化、生産コストの増大などの懸念点はあるものの、多品種少量生産を採用することで、より細かな顧客需要に対応でき、物品販売におけるロングテール理論の実現が可能となります。

「多品種小ロット(型)生産」ともいわれます。反対の概念が「少品種大量ロット生産」ですね。

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多品種少量生産が求められる背景

「顧客の要望の多様性」「Industry 4.0(インダストリー4.0)」「マスカスタマイゼーション」の3つが、多品種少量生産の浸透の要因として挙げられます。

これまでの製造業においては、同一製品を大量に生産すれば十分な需要が見込まれましたが、近年では消費者のニーズが多様化しており、同一製品の大量生産だけで安定した需要を確保することが難しくなっています。
それぞれの顧客の要望に合わせた商品を提供することが理想的ですが、ニーズに合わせて製品を改良するとその分だけコストが上昇してしまう問題もあります。
そこで注目されているのが、AIやIoTを活用したエコシステムの構築を主眼とする「インダストリー4.0」と呼ばれる、2011年にドイツが提唱した製造業振興策です。

インダストリー4.0の主眼は、スマート工場を中心としたエコシステムの構築である。人間、機械、その他の企業資源が互いに通信することで、各製品がいつ製造されたか、そしてどこに納品されるべきかといった情報を共有し、製造プロセスをより円滑なものにすること、さらに既存のバリューチェーンの変革や新たなビジネスモデルの構築をもたらすことを目的としている。
引用:総務省「平成30年版 情報通信白書」(インダストリー4.0とは)

IT技術を駆使して生産性の向上や多様な市場ニーズに対応する方向性で、市場に超える競争力を向上させる企業が増加傾向にあります。

また、インダストリー4.0の実現を目指すための方向性として、「マスカスタマイゼーション」という考え方が登場しました。
マスカスタマイゼーションとは、大量生産における効率性と受注生産の柔軟性や低コスト性を組み合わせた生産スタイルのことです。
従来の生産ラインを活用しながら顧客の個別受注に対応するイメージで、マスカスタマイゼーションを実現するための手法のひとつとして、多品種少量生産を採用する企業が増えています。

多品種少量生産のメリット

多品種少量生産には、次のようなメリットがあります。

【多品種少量生産のメリット】

  • 消費者の個別ニーズへの対応
  • 製品の多様化・製品ラインナップの拡充
  • 市場や顧客ニーズへの迅速な対応
  • 在庫コストの削減・効率的なリソース利用

多品種少量生産は、様々な品目を少量ずつ生産する方式であるため、多様化する様々な顧客ニーズにも柔軟に対応できるようになります。

また、在庫過多の防止や効率的にリソースを利用できることから、生産性を向上させながらもコストカットの効果も期待できます。
多品種少量生産は企業にとって価値ある生産戦略となっており、消費者の満足度向上、市場競争力の強化、効率的な資源利用に役立つことが特徴です。

多品種少量生産のデメリット

多品種少量生産には数多くのメリットがある一方で、次のようなデメリットも存在します。

【多品種少量生産のデメリット】

  • 生産コストの増加やリードタイムの延長
  • 生産プロセスの複雑化・設備投資の増加
  • 品質や在庫管理の煩雑化

多品種少量生産は、数多くの品目を少量ずつ生産することから、生産プロセスの複雑化や新たな設備投資をおこなう必要性が出てくるケースも少なくありません。

また、従来では取り扱っていない製品をラインナップに加えることになるため、品質の維持や生産コストの増加、需要判断を見誤った場合に顧客への提供が遅れてしまう可能性もあります。
管理する製品数が増えることで在庫管理が複雑化することも予想されるため、適切な戦略と対策を講じた上で採用することが求められます。

「コストが高い」と言われる「多品種少量生産」ですが、1万個以下であれば3Dプリンターで生産するという手段もありますよ!
コストと手間をおさえながら、カスタムメイドやバラエティーに富んだ製品が作れます。
詳しくは記事の後編で…!

多品種少量生産が採用されている業界の例

多品種少量生産が採用されている業界の一例をご紹介します。

建築業界

建築・建設分野においても住宅に対する消費者ニーズが多様化していることから、多品種少量生産が求められています。
その実現のために3Dプリンターが重要な役割を果たしています。
従来のプレキャスト技術にくわえて、デザインの自由度が高い3Dプリント技術を活かす試みをしています。

参考:日経クロステック(xTECH)「建設3Dプリンター」

アパレル業界

アパレル業界では、顧客ニーズの多様化に伴い、様々なファッションやアクセサリー類が求められています。
同一製品でも数多くのサイズを取り揃えたり、季節を先取りしたデザインの商品を販売したりすることで、変化が激しいトレンドにも迅速な対応が可能となっています。

清原株式会社のアパレル事業部ではDMM.makeの3Dプリントサービスを使って、10種類のパターンの型を造形しました。
アパレル業界においては約1万点以上なければコストパフォーマンスの関係から金型でものづくりができないという障壁を突破し、同業他社ではできないような付加価値を提供しています。

アパレル事業で3Dプリンターを活用!実物で見本を見せる商品提案が可能に 清原株式会社

トヨタの多品種少量生産とは?

日本を代表する自動車メーカーであるトヨタ自動車株式会社では、多品種少量生産を実現して徹底した無駄を省くため、「トヨタ生産方式」と呼ばれる独自の生産・管理・経営の考え方を確立しています。
トヨタ生産方式では、大きく分けると2つの概念を柱として、顧客ニーズへの迅速な対応を可能としながら、従業員が楽に働けるように無駄を省くことを目的としています。

【トヨタ生産方式の2本柱】

  1. ニンベンのついた「自働化」
  2. ジャスト・イン・タイム

トヨタ自動車では「自動化」ではなく「自働化」という言葉を用いて、生産性の向上を図っています。
機械に異常が生じたら自動で機械が止まるようにすることで、不良品の発生をあらかじめ防止しています。

また、異常が発生した場合には「アンドン」と呼ばれる電光掲示板経由で管理者に異常が報告され、問題を解決してから生産作業を再開します。
そのため、従業員が常に機械を見張る必要がなくなり、様々なコストカットを実現しています。

「ジャスト・イン・タイム」の考え方では、無駄な在庫を抱えずに注文後の生産時間を短くすることに成功しています。

一般的には、前工程で製造された部品を後工程の工場へと出荷するため、後工程の現場では前工程で製造された部品が過剰在庫となる場合があります。

トヨタ自動車では真逆の考え方で自動車製造を行っており、後工程で使用した部品を「かんばん」と呼ばれる情報を伝達して前工程に発注することで、必要なものを必要な時に必要なだけ確保し、無駄な在庫を抱えるリスクを省いています。

これらの考え方を元にしたことで、トヨタ自動車では徹底した無駄を省きながらも高い生産性の確保を実現しています。

なんだか3Dプリンターを使ったものづくりのスタイルや考え方に似ている気がしますね…!

多品種少量生産をおこなうには?

多品種少量生産をおこなうためには、消費者の需要を予測した上で受注分析を実施し、生産方法を最適化することが必要不可欠です。
多品種少量生産の大きなメリットは、事前に多品目の製品を少量ずつ生産して在庫を持つことで、多様化する様々な顧客ニーズへ迅速に対応できる点です。
そのためには、市場ニーズの予測や受注状況の分析を行い、どのような製品を取り揃える必要があるかをリサーチしなければなりません。

また、多品種少量生産では製品の仕様に合わせて設定の変更や部品の取り替えを行う「段取り換え」の頻度が増えるため、これにかける時間や手間をいかに省けるかが生産性向上を図るための鍵となります。

一方、汎用性の高い部品や販売数が見込める製品は在庫を充実させる必要があり、数多くの品目の在庫を抱えることから在庫管理が複雑化してしまいます。
在庫数の管理や品質維持にはIT技術を活用した生産管理システムを導入し、人的エラーを防ぎながら人件費などのコストカットに努める必要もあるでしょう。

多品種少量生産は3Dプリントに適している

数多くの製品を少量ずつ生産する多品種少量生産は、データをカスタマイズするだけで様々なバリエーションの製品を出力できる3Dプリントが得意としています。
たとえば、DMM.makeのようなサービスビューロ(外注/出力代行サービス)では、CADデータや3Dモデルなどをアップロードするだけで、誰でも手軽に3Dプリントを活用できます。
製造業界で使われるような3Dプリンターは初期費用やメンテナンス代が高額ですが、出力代行サービスを利用すれば自社で3Dプリンターを保有する必要もありません。
在庫ロスを減らしながら、生産コストの削減やリードタイムの短縮などの大きなメリットもあるため、多品種少量生産を検討される際は、3Dプリントを活用することも視野に入れておくのがおすすめです。

少頻度小ロット~大ロット、多頻度小ロットであれば、DMM.makeの3Dプリントサービスをぜひ一度ご検討ください!
国内1,000社以上の取引実績あり。

DMM.makeの3Dプリントサービスとは? 12の魅力を伝えたい

【3Dプリンター活用事例】数十、数百パターンを出力しテストマーケティングに

某消費財メーカーのお客様をご支援した例をご紹介します。
DMM.makeの3Dプリントサービスにて、テストマーケティング用の容器をご注文。
大きさ、形状、色、素材、手触りなどを少しずつ変えた容器を何十パターンも出力いたしました。
実際にお客様に見て手に取ってもらいながら販売用の容器の検討を実施し、売れる商品づくりにご活用いただきました。

3Dモデルであればデザインのマイナーチェンジも簡単!
もちろん現在の3Dプリンターでは最終製品までを出力することも可能なんですよ。

まとめ

多品種少量生産は、製造業の生産方式のひとつで、数多くの製品を少量ずつ生産する方式のことです。
多様化する顧客ニーズに対応しやすくなり、長期目線で捉えた場合に売上増大の可能性が期待できるロングテール理論と相性が良いとされています。
在庫管理の複雑化や生産コストが増大する可能性がある点には注意が必要ですが、在庫コストの削減や迅速なニーズへの対応など、数多くのメリットもあります。
特に、3Dデータをカスタマイズするだけで様々なバリエーションの製品を出力できる3Dプリントは、多品種少量生産に非常に向いています。
DMM.makeでは50種類以上の素材を取り揃えており、多品種生産にも対応しているのでお気軽にご相談ください。

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