衛星の試作で3Dプリントサービスを活用 JAXA発ベンチャーSpace Cubics

JAXA発のベンチャー企業で、宇宙用コンピューター販売・設計開発受託・コンサルティングなどの事業を展開している合同会社Space Cubicsの後藤雅享様よりお話を伺いました。2023年度中に打ち上げ予定の衛星の試作でDMM.makeを活用いただいた事例をご紹介します。

後藤雅享様プロフィール
合同会社Space Cubics
JAXAにて有人宇宙研究開発や経営企画に従事。2018年に多くの宇宙使用実績をもつ民生コンピューターの設計者と共同で「JAXA発ベンチャー」Space Cubicsを設立。

機械に詳しくないとCADを見ることに慣れていない。CADデータを用いて構造設計の社内レビューをしても、他のメンバーからあまり意見が出ない印象があった。

社内メンバーとのコミュニケーションツールになった。

3Dプリントをした現物が目の前にあると、CADに不慣れな他分野を専門とするメンバーにも問題を伝えやすくなった。

宇宙用のコンピューターを開発、販売 合同会社Space Cubics

 
まずは会社概要をお聞かせいただけますか?

 
 
Space Cubicsは宇宙用のコンピューターを開発して販売することがメインの事業です。宇宙機には機器のコントロールをするためのコンピューターが入っています。
放射線や熱など、過酷な環境で動作する必要があるため、普通のコンピューターでは不具合が起きやすいのです。

我々の事業は、宇宙に最適な形で設計したコンピューターを開発し、販売することです。一般的な製品は宇宙用の部品を使って宇宙環境に耐えるようにするのですが、我々の製品は不具合が起きにくいコンピューターシステム設計によって一般部品でも宇宙で使える製品になっています。

 
 
私はJAXAでも働いていて、以前宇宙ステーション内で飛ぶドローンを開発しました。
そのドローンのメインコンピューターを作った方々がもっと宇宙開発をやりたいとなり、私もお誘いいただいて、一緒に宇宙開発のベンチャーを立ち上げたのがSpace Cubicsという会社の成り立ちです。

 
 
お仕事の具体的な内容についてもお聞かせいただけますか?

 
 
コンピューターの開発以外にも、他の会社で作っている宇宙機の設計開発を受諾したり、コンサルでお手伝いするといった業務もおこなっています。物品を購入して組み立てて販売する会社は多くありますが、我々はすべて自分たちで設計開発できる技術を持っています。

 
 
多くの会社から受託しておりまして、衛星、宇宙ステーション関連、ロケットなどの開発にも広く携わっています。

 
 
宇宙用のコンピューターというと、どのようなものを作られていますか?

 
 
弊社では8cm角ぐらいの大きさのコンピューターを作っています。
一番小さいサイズの衛星は「キューブサット」といいますが、最近はキューブサットが非常に増えていて、Space Cubicsでもキューブサットの中に搭載するコンピューターを作っています。

キューブサットは、およそ10cm角ぐらいの大きさなので、8cm角ぐらいの大きさでないと中に入れられないんです。
3Dプリンターは、その8cm角ぐらいの大きさのコンピューターの販売に向けた実績作りのプロジェクトに活用しました。

 
打ち上げ予定の宇宙用コンピューター

2023年度に打ち上げ予定! 検討段階から3Dプリンターを活用

 
どのようなプロジェクトでしょうか?

 
 
自分たちで衛星を作って、自社のコンピューターを宇宙に打ち上げる予定です。
2023年度中を目途に衛星を打ち上げて、自分たちが開発したコンピューターを宇宙で実際に動かしてみようと。
その衛星の試作部品を 3Dプリントで作ったというのが今回の発注の経緯です。

 
 
それはすごい!
3Dプリントを使った造形物は、基本的にはコンピューターのマウントが多いですか?

 
 
最初は10cm角で長さ30cmくらいのキューブサットの模型を3Dプリンターで作りました。
模型を使って、中に搭載するコンピューターやバッテリー、通信機などを並べてみて、どのように取り付けるかのアテをつけることから始めたんです。
それをDMM.makeに発注して作りました。

 
 
バッテリーや通信機などの模型も込みで、3Dプリンターを使って造形されたのですね。

 
 
そうですね。装置や基板も含めて、いろいろな形で構成を考えて作ってみました。
段々と開発を進めて設計を固めていって、金属部品や本物の製品に挿げ替えていきました。

 
 
最初は試作の段階でほぼ 3Dプリンターを使っていて、部品と挿げ替えていかれたのですね。
現在は、3Dプリンターを活用しているのは部品を固定するようなパーツのみですか?

 
 
検討している部分が多いので、検討段階では最初に3Dプリントで作るところから始めています。
そこから設計を固めて、本物に近付けていきます。

 
試作検討段階の衛星模型

3Dプリントの活用方法は「コミュニケーションツール」と「問題の発見と検証」

 
試作以外の面でも3Dプリンターはおおいに役立っています。
データは「Fusion360」で作っていますが、機械系ではないエンジニアだとCADで設計を確認することに慣れてないことがあります。
設計結果を社内レビューしても、いまいちピンと来ていなかったりして意見が出ない印象がありました。

 
 
現物が目の前にあると、「ここをこうするとこんな問題があるよね」とか、他分野の方からも問題が見えやすくなります。
そういった意味でも、3Dプリンターを導入したメリットがあると感じています。

 
 
一緒に開発する方とのコミュニケーションツールとしても使われているのですね。

 
 
コミュニケーションもありますし、もちろん機械設計上の問題のチェックにも使っています。
「他の部品との干渉はないか?」「組み立てやすいか?」「見落としている点はないか?」などを細かく検証をする上で、3Dプリンターは非常に頼りになる存在です。

 
 
ありがとうございます。
プロジェクトを開始した当初から、3Dプリンターを使って模型制作をされる予定でしたか?

 
 
そうですね。「まずは3Dプリントで作ってしまおうか」という話になりました。
3Dプリンターでイメージアップして、ある程度設計が固まったら本番用の金属部品を製作してみて、変更点があればまた3Dプリンターを使って…という感じですね。

 
 
もともとJAXAでも設計業務をされていたなら、CADの操作自体で苦労されることはなかったですか?

 
 
特になかったですね。
今回は「Fusion360」を使っていますが、別のソフトを使うこともありますね。

 
開発中の衛星の3DCADモデル

3Dプリントの部品はすでに宇宙で使われているが…

 
最終製品の部品としては、3Dプリンターで出力したものが使われる予定はありますか?

 
 
現時点で打ち上げを計画している衛星には恐らく入らないですね。
打ち上げる衛星には基本的に、物性値が決まっている金属部品を採用しています。

 
 
なるほど。

 
 
私がJAXAで以前開発したInt-Ballという宇宙ステーション用のドローンは、実はすべて3Dプリンターで作ったんですよ。
ネジや電子部品などは既製品を購入していますが、それ以外の部品はすべて3Dプリンターで作ったので、3Dプリントが宇宙でまったく使えないことはありません。

 
 
ただ、3Dプリントの材料は物性データがほとんど出てこないので、設計時に構造の計算が難しいんです。
そういう意味で、3Dプリントが使いにくいという問題はありますね。

 
 
なるほど。
衛星のような宇宙空間で使うものは外側は金属でも、中の部品は3Dプリント品でも問題なさそうですか?

 
 
真空や熱などに耐えられる素材で、環境でよほど酷いことにならなければ外側の部品でも使えると思います。
ただ、やはり材料の物性データがないと計算ができないので、採用が難しいことが多いですね。

 
開発中の衛星(フレームはアルミで製作)

ナイロンとPA12GBを選んだ理由は「価格」と「精度」

 
ご利用いただいている素材は、ナイロンMJF造形のPA12GBが多いですか?

 
 
ナイロンとPA12GBが多いです。値段が安くて精度も良いので、非常に使いやすいですね。

 
 
PA12GBであれば、日本HP社が物性を示していると思います。

 
 
PA12GB自体の物性はあるかもしれませんが、造形後の積層状態での物性値が必要です。
その情報が出てくると、宇宙機開発でも積極的に3Dプリンターが活用されるのかなと思います。

 
 
PA12GBはMJF造形です。MJFはあまり鬆(す)がはいらないので、密度が高く中身がつまった造形物ができます。安心していろいろと試していただけると思います。

 
 
そうですね。衛星の内部とか応力があまりかからない部分から使い始めるとか、そういう使い方がよさそうですね。

 

他社と比べてDMM.makeは価格が安く、Webサービスも使いやすい

 
DMM.makeを選んでいただいたきっかけは何でしょうか?

 
 
結論からいうと値段です。

 
 
他社からもお見積りを取られて比較されましたか?

 
 
そうですね。一度目に頼む際は、いくつかの業者から見積をとって値段を比較しました。
他には、オンラインでCADをアップロードすればすぐに見積もり結果がわかるといった使いやすさもありましたね。

 
 
ありがとうございます。
値段が最大の理由でありつつ、インターフェースも含めてサービスにご満足いただけたのですね。

 
 
非常に使いやすかったですよ! 法人契約でもデータをアップロードしてすぐ発注できればよいなと思います。

 
 
法人のお客様でもデータをアップロードして、すぐに見積もりが取れるよう法人の即時見積もりサービスも開始しました。
今後もより使いやすくなるよう改善を重ねてまいりますので、ぜひご意見お寄せください。

 

「DMM.makeのサポート除去技術は偉大!」

 
今後も試作される予定はございますか?

 
 
現在まだ部品が決まっていない箇所があるので、もう一度試作してみるかもしれません。

 
 
今後も引き続きDMM.makeを使っていただけますか?

 
 
今となっては、他社を見ずに2回目、3回目と発注させてもらっていますね。

 
 
ありがとうございます!
これまで素材としては値段の安さからPA12GBをお選びいただいたかと思います。他の素材を検討されることはございますか?

 
 
いろいろ使ってみたい素材はありますね。アルミとかチタンとか…。
意外と金属素材も安いなぁと感じています。
試作でいろいろ材料を試しても仕方がないので、最終的にはいつもPA12GBに落ち着いてしまうんですけれども。

 
 
もしご機会があれば、ぜひ他の素材も試してみてください。

 
 
試作スピードを上げるために、3Dプリンターの自社購入は検討されましたか?

 
 
実は3Dプリンターはあるんですよ。ただ、試作してもサポートの除去が面倒でして…。
御社から届くものもサポートが付いているのかと思ったら、ものすごくキレイな状態で届いたので驚きました!

 
 
一度でも大変なサポート除去を経験すると、御社の偉大さがわかります(笑)
サポート材の除去はかなり大変ですよね。

 
青色で囲った部分がサポート材 ※DMM.makeサンプル画像
 
かなり大変です。
ナイロンとPA12GBに関してはそもそも粉体材料なので、支えのサポートがつかない造形方式になっています。
硬化していない粉が支えてくれていて、粉を除去するだけでとてもキレイな仕上がりになります。
用途的にPA12GBが合っているようですね。

 
 
それでキレイだったんですね。触った感覚だけで厳密な測定は行っていませんが、このまま宇宙機としても使えると思うクオリティでした。
ただキューブサットは、寸法精度で0.1ミリぐらいの正確さが要求されるのと、表面の粗さにも精度が要求されます。現時点ではまだ精度や物性の問題で使えなくても今後の技術革新でどんどん変わっていくだろうと期待しています。

 

設計が多様で少量生産の宇宙開発。値段を下げる発注のコツは…

 
3Dプリントの値段が将来さらに安くなるようなことはないのでしょうか?

 
 
いろいろな要素が絡むので条件次第ではありますが…
値段を安くするテクニックとして「1つのSTLデータに複数パーツを詰め込む」という方法があります。

 
 
なるほど。

 
 
ナイロンやPA12GBに関しては、1つのSTLデータに100個までのパーツを入れられます。
1つのパーツを10個欲しい場合、データを10個分アップロードするよりも、10個分を詰め込んだデータ1つでアップロードしたほうが、送料などのイニシャル費用を安く抑えられますね。

 
 
ありがとうございます。
宇宙開発はまだ量が出ないんですよね。
同じ用途でも、みんながみんな違うものを作りたいという場合が多いです。
少量でもコストが安く、製作時間も短くてカスタマイズが柔軟というポイントが揃うと、ものすごく最適な方法になると思っています。
そういったところにうまくフィットしたサービスが登場すると、非常によい時代が来ると期待しています。

 
 
そうですね。
PA12GBを使ったパーツが1つの筐体に複数個ある場合、プラモデルのようなイメージで、ひとつのSTLデータにいろいろな形のパーツを詰め込んでいただくとよいかもしれません。

 
 
ひとつのデータにする方法は使えるかもしれないですね。
こうした相談などにも応じていただけますか?

 
 
ぜひ! 納期や価格面のご相談も柔軟に対応いたします。
お気軽にご相談ください。

 

開発したコンピューターが宇宙で使えることを証明したい

 
今後の予定としては、開発中の衛星を打ち上げることが大きなプロジェクトになりそうですね。

 
 
そうですね。2023年度内ぐらいに打ち上げる予定です。
我々が開発したコンピューターが宇宙で使えることを早く実証して、広く色々な宇宙機で使っていただきたいです。

 
 
衛星を打ち上げた際にはまたぜひ取材できればうれしいです。

 
 
いいですね。
御社で試作した衛星が宇宙に打ち上げられれば、ニュースにもなるかもしれませんね。

 
 
それは楽しみです! 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 
開発中の衛星

合同会社Space Cubics
ホームページ:https://spacecubics.com/

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