DMM.makeの3Dプリントサービスをお使いのお客様の事例紹介。今回はチタンで伝統的なデザインナイフやオリジナルフィギュアを制作されている堀居賢司様です。
堀居様について、3Dプリンターを利用するシチュエーション
本日はよろしくお願い致します。
よろしくお願い致します。
早速ですが、堀居様が3Dプリントで作られているものについてご紹介いただけますでしょうか。
私がDMMさんにお願いして作っているのは大きく分けて2種類です。
チタンを使ったデザートナイフのシリーズと、自分で組み立てられるアクションフィギュアの2つがメインです。
ありがとうございます。
それぞれチタンで作られていて、3Dプリンターで出力した後はご自身で磨かれているといった感じでしょうか?
デザートナイフシリーズはチタン製です。
アクションフィギュアに関してはMJF(マルチジェットフュージョン)を使っています。
部品単位で分割した状態で出力して、それをこちらで塗装して組み立てしてという形で制作しています。
MJFを選んでいるのは、精度面や嵌合(かんごう)の面が理由でしょうか?
はい、そうです。
あと、素材自体に強度があって丈夫な点も選んでいる理由です。
MJFで出力いただくとどうしてもザラつく部分があるかと思いますが、表面の塗装はどうされているのでしょうか?
基本的には、ザラつきが強い箇所はペーパーでヤスリがけしつつ、その上にプラモ用のサーフェーサーを吹いて、ある程度の凹凸を埋めています。
ただ、制作するものによっては、ある程度の凹凸が残っていたほうが、逆に鋳造品のようなリアリティが出せるんです。
ザラつきがあることで、作っているものの表面にテクスチャ−が出てきて、それが面白いなと感じています。
なるほど。
鋳物のような雰囲気を残すために、全部を消すのではなくてある程度は残して塗装をするということですね。
塗料は何を使われているのでしょうか?
通常は、普通のプラモ用の塗料を使っています。
甲冑フィギュアに関しては、本漆を使って塗装を行っています。
カッコいいですね!
たしか、漆は何回かに分けて塗るんでしたよね。
そうですね。下地の漆を塗って、その上から改めて塗るのが基本です。
ただ、ものによってはそのまま直接塗ることもあります。
この作品の場合は朱色の漆を先に塗って、その上に透け漆とよばれる半透明の茶色の漆を塗ることで、下の朱色が透けて見えるという技法で塗装しています。
なるほど。直接塗れるということで普通の塗料と同じ感じで使えるのは面白い感じですね。
3Dプリントを使い始めたきっかけ
いろいろなものを作られていますが、3Dプリントを使い始めたきっかけを教えていただけますか?
最初の頃はナイフシリーズを作っていました。
もともとはチタン製の菓子きりを作ろうと思ったが、下に模様を入れる場合に削って作るよりも3Dプリンターのほうが効率は良いんじゃないかと考えたんです。
且つ、刃物の世界では金目で粉末を焼結して鋼材を作るという技法があるんですが、それと同じ感覚で使えるんじゃないかと思ったのがきっかけです。
なるほど。
通常の粉末粉とDMMのチタンプリントの粉末の焼結で、密度とか耐久性で損なわれる点はなかったでしょうか?
そうですね。
実際に削ってみて表面がボソボソになったら使えなかったが、やってみたら問題はなかったです。
それは良かったです。
表面はザラついているが、中はしっかり密度が保たれて実用に耐えうる感じだったということですね。
もともとは普通の作り方で刃物や製品を作られていたのでしょうか?
削り出しや鍛造で作っています。
板状のものを削って作ってナイフを作ったりしていました。
なるほど。
ありがとうございます。
3Dプリントを利用するシチュエーションや素材について
もともとはアナログで作家活動をされていたかと思いますが、デジタルに抵抗はありませんでしたか?
元々テレビゲームが好きで3Dモデルや用語にも慣れ親しんでいたので、特に抵抗はありませんでしたね(笑)
使っているソフトは何になりますか?
今は「123D」を使っています。
有名どころの「Fusion360」などがあるのは知っていますが、最初に使い始めたのが123Dだったので、もうそれに慣れてしまったので移動することはないかなと思っています。
なるほど。
「123D」は本とかも出版されていたかと思いますが、独学で覚えられた感じですか?
そうですね。
「直感的で使いやすいソフト」ということで123Dが出てきたので、実際に試しながら覚えました。
最初はシンプルな形を作って、徐々に慣れていってという感じです。
ありがとうございます。
2016年頃からデジタルを使ったものづくりを開始されたということですが、3Dプリントで変わったことや感じていることはなにかありますか?
ナイフとかに関してはほとんど手作業の部分が多かったので、3Dプリンターのおかげで効率が良くなったというのはあります。
これまでは粉末を型に入れて焼く感じですか?
いえ、部品を一から削り出して作るという…超アナログな感じです。
なるほど。
板材から削るということだと、その厚み以上のものは作れない…?
鍛造をすれば変えられます。
これはもともと小指サイズのチタンの棒だったんですが、それをハンマーでひたすら叩いて作りました。
今も最終的には手作業による鍛造と切削が作業の大半なので、大変は大変ですね。
ありがとうございます。
弊社ではチタン以外の素材も取り扱っていますが、ナイフの素材としてチタンをメインに使っている理由は何になりますか?
チタンを選んでいる理由は、やっぱりサビに強い・軽い・丈夫という3点があるからですね。
ステンレスもなくはないですが、価格の面もありますか?
そうですね。
価格面が安くて食品に使えるということもありますが、元をたどると2000年代にチタンのナイフを見つけたというのが始まりです。
それでチタンはこういうものに使えるということはわかっていたので、いまもそれでチタンを使っているという感じです。
なるほど。
チタンだと陽極酸化反応で色が変わるのも魅力ですよね。
アクションフィギュアでMJFを選んでいるのは扱いやすいからでしょうか?
そうですね。造形した後の加工もそうですし、プラモ感覚で作れるようにしようとするとMJFかなぁと。
展示会のチタン製のプラモはすごいなぁと思いました。
チタン製の部品を作っても良いかなとは思うんですが、私が作っているのは部品が細かすぎるという問題があるので難しいかな、と…。
MJFを使っている今ですら無理難題をお願いしているので…(笑)
3Dプリンターを使った制作活動で大変なこと
弊社に発注いただく際は金属とMJFを使われていますが、制作活動で大変に感じる部分はありますか?
データを作るところでいうと、アクションフィギュアに関していえばパソコンのスペックが要求される点かなと思っています。
こちらサイドの問題ですが、パーツが複雑になるほど処理が重くなるので…。
確かにそうですね。
堀居様の作品を拝見すると、普通のスペックのパソコンだと難しそうだなと感じます…(笑)
パソコンの買い替えでなにか問題がある感じでしょうか?
「123D」のインストーラーは取ってあるはずなんですが、パソコンを買い換えること自体の気が重いんですよね。
一時期、パソコンのパーツが高騰化したというのもあって…。
別の問題だと、造形した後の部品がやたらと細かいので、それを塗装したり磨いたりというのが大変です。
でも、DMMさんにはランナーを付けて細かいパーツを出力していただいているので本当にありがたいです。
すごい綺麗にランナーをつけて出力されてますね!
これは何パーツくらい付いてるんでしょうか?
50個くらいです。ランナーでひとつなぎにしています。
シェル化もできますが、あえてランナーにしている理由があるのでしょうか?
細かい部品が多いので、自分でもパーツがわからなくなるんですよね。
ポロッと落ちてしまうとそれだけで大変なので…。
3Dプリンターを使った制作活動を続けていて良かったこと
ナイフだったりフィギュアだったりの活動を5年以上やられているということですが、制作活動を続けていて良かったことはございますか?
やっぱり一番大きいのは自分の作品の幅が広がったことですね。
チタンナイフの彩りシリーズを作り始めたことが、自分にとって転機になったというのが大きいです。
チタンナイフは販売されていると思うんですが、フィギュアも販売されているのでしょうか?
フィギュアはまだ販売してない状況です。
ガレージキットみたいな形で販売できたらいいなとは思っていて、パッケージの中にランナー状態のパーツを入れて、ひとつの作品として出すのも面白いかなと思っています。
DMM.makeを使い始めたきっかけ、最後に伝えたいこと
最後の質問になりますが、DMM.makeをお選びいただいたきっかけは何だったのでしょうか?
いろいろとサービスを探していましたが、そもそもチタンを3Dプリントできるサービスが限られていたというのがあります。
あと、他社さんだと価格面が高くて、いつも頼んでいる価格の10倍くらいしてしまうので流石に厳しいな、と…。
なるほど。
他社から見積もりを取ったことがあるということですかね。
そうですね。
他社の価格の10分の1程度で依頼できるので、DMMさんには本当に助けられています。
ありがとうございます。
では、他社を使ったことはない感じでしょうか?
他社はないですね。やはり価格がネックなので。
なるほど。最後に伝えておきたいことはございますか?
そうですね。私個人としてはもっといろいろな作家さんに登場してほしいと思っています。
Twitterにある作例を見ると、私の作っているものよりすごいものがたくさんあるので、もっと作家さんが登場したら業界も盛り上がるのになぁ、と。
なので、「3Dプリントは楽しいですよ。ぜひ挑戦してみてください」と伝えたいですね。
意外とやってしまえば簡単ですもんね。
本日はお時間いただきまして、ありがとうございました。
今後とも、よろしくお願い致します。
こちらこそありがとうございました。
よろしくお願い致します。
堀居賢司様のホームページ、Twitter、インスタグラム
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