製造業の研究から、デジタルファブリケーションに可能性を感じ、大学内にファブラボを導入してきた道用大介先生(神奈川大学経営学部准教授)。FABの在り方について、DMM.makeがファブラボみなとみらいにてお話を伺いました。
インタビュー前編では企業とファブの視点から、これまでの研究について振り返っていただきました。
プロフィール:道用大介先生
1976年生まれ。慶應義塾大学 博士(工学)神奈川大学経営学部国際経営学科准教授
専門は経営工学、デザイン学
- 研究室HP:https://doyolab.net/
製造業のカイゼン活動から研究は始まった
──本日はよろしくお願いいたします。今回道用先生にインタビューをお願いしたのは「製造業の研究をされてきた方が、文系の大学で3Dプリンターを教えている」と知り興味をもったからです。
私たちDMM.makeのお客様の多くは製造業の方で、より深くお客様の役に立つようなお話が伺えればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
──最初に道用先生がこれまでどのような研究をされてきたのかを教えていただけますか?
──道用先生にとっての「カイゼン活動」とはどのように定義をされていますか?
工場内では、それぞれの人が何をどうしたらいいのかを考えながら手を動かしているので、様々な気づきがあり、トップダウンでは見えなかった問題を扱うことができるんですよね。
──なるほど。実際に工場へ足を運んでフィールドワークもされていたのですよね?
工場で働いている現場の方から「なんか若い奴が来たな」と面白がられたり「全然使えないよ!」なんてお叱りも受けたりしながら、生産管理や事務の方々と一緒にその工場や会社に合ったシステムを作っていきました。
時にはお酒を飲み交わしながら、本音で語り合って……(笑)
エンドユーザーデベロップメントで「何時間もかけていたことが2秒で終わる」
──そこから中小企業のDXの実践もテーマに研究されていますね?具体的にはどのような研究でしょうか?
「現場の人たちがシステム組んだりすることもできるのではないか?」といった取り組みを研究していましたね。いわゆる“エンドユーザーデベロップメント”です。
現場に付随した事務の方々にプログラミングを教えたり、簡単にプログラミングできるツールを開発したり、本当に現場で使う人たちが開発していくような支援を今も続けています。
DX化をどう乗り越えるか?
──近年まさに製造業のDX化が叫ばれていますが、「現場からは不満があがって実現できない」という声も聞きますね。そのような状況はどのように乗り越えられるでしょうか?
システムや仕組みができれば、効果は絶対に出てくるので。「8時間くらいかかっていたことが10分で終わる」とやはり人は嬉しいし、心が動きます。
そういった成功体験を地道に積み上げていくことだと思います。
カイゼンはもっと社会に広まって良い!
──その後、3Dプリンターを始めとするデジタルファブリケーションへ関心が広がっていったのはどのようなきっかけがあったのでしょうか?
──FABをどう活かそうと考えたのですか?
──それはワクワクする話ですね! ファブラボ開設のお話はインタビュー後編で詳しく伺っていきたいと思います。
FABでもっとカイゼンが進む
企業でIoTとFABを活用した事例
──FABの概念に出会って、ビジネスの世界ではどのようなことができそうだと感じましたか?
製品一つひとつを録画し、時間やその他の要素と照らし合わせる作業はかなり大変な作業でした。
M5Stackという小さいマイコンのモジュールに、バーコードモジュールをくっつけて読み取り、データは自分たちで構築したサーバーに飛ばしました。
また、筐体も3Dプリンタ―で作りました。
またその工場に適したジャストフィットな物はなかなか既製品ではありません。
単純なことですが、安く、便利なものが発明できるんです。
IoTとかFABをすごく上手く利用して、自分たちの新しい事業や現場カイゼンに活かしている例だと思います。
3Dプリンターをビジネスに活かすには? 「DMM.makeのようなサービスを使ってみても」
──可能性を感じられる事例ですね。もしこれから企業がDX化やデジタルファブリケーションを活用していきたいと考えた時、どのようなアイデアがあるでしょうか?
まさにスピーディーに形にして、ボトムアップでカイゼンを進めている例ですよね。
──まだまだビジネスの領域において、DMM.makeの知名度は高くはありません。どうしたらもっと広がっていくでしょうか?
メーカーからデータが飛んで来て、それを中小の企業で部品を作るというネットワークをDMMが作れたら、日本の製造業はもっと良くなっていくと思います。
──より3Dプリンターという選択肢が身近なものになるよう努めていきたいですね。
製造業のリアルな現場のお話からビジネスにおけるヒントまで色々お話しいただきありがとうございました!
インタビュー後編では、FAB施設立ち上げやプロトタイピングのメリットについてお伺いしていきます!!(近日公開)