日本初のFabLab!ファブラボ鎌倉にDMM.makeが行ってみた

日本初のFabLab!ファブラボ鎌倉の朝ファブをDMM.makeが体験

2023年5月に12周年を迎えたファブラボ鎌倉。この日本初のファブ施設を、DMM.makeが訪ねてみました(実は立ち上げ当初学生として通っていたDMM.makeのスタッフも数年ぶりに来訪!)。今回は月曜の朝におこなわれている「朝Fab」も体験してきましたよ。その様子をお届けします。

FabLab鎌倉の設立者・渡辺ゆうかさんの顔写真

ナビゲーター:渡辺ゆうかさん
18歳で渡米、コミュニティカレッジで学んだのち、多摩美術⼤学環境デザイン学科を卒業。都市計画、デザイン事務所で経験を積んでいたところ、交通事故にあう。社会復帰直後に、慶應義塾大学田中浩也教授のプレゼンを聞き、2010年ファブラボジャパンに参加。2011年5⽉東アジア初のファブラボのひとつである、ファブラボ鎌倉を⽥中浩也教授と共同設⽴し、2012年より代表を務め、現在に至る。
一般社団法人「国際STEM学習協会」代表理事。

ファブラボ鎌倉とは?

ファブラボ鎌倉 結の蔵 外観
FabLab(ファブラボ)とは2002年にマサチューセッツ工科大学のニール・ガーシェンフェルド教授が提唱し始まった“実験的な市民工房”です。「デジタルファブリケーション機器を備えた工房」であるだけでなく、地域に根付き、ファブラボ憲章に基づき活動しています。単なる機材利用の場所とは異なり、連携を推進していくための一定の条件を満たした施設のみが使える名称です。

木のボードに刻印されたファブラボ憲章が掲示されている様子

ファブラボとは何か?
ファブラボは、地域のラボの世界的なネットワークである。人々にデジタル工作機器を利用する機会を提供することで、個人による発明を可能にする。

出典:FabLab Japan Network「Fab Charter(ファブラボ憲章)」

ファブラボ鎌倉は、2011年に開設した神奈川県・鎌倉市にある日本初のFabLabです。

FabLab Tsukubaも同時期に開設されましたが、2017年に閉鎖となりました。
ファブラボ鎌倉は、現存する日本初のFabLabとなっています。

1888年に建てられ築135年の「酒蔵」を秋田県湯沢市から移築し、賃貸物件として改修されたこの建物は、古都・鎌倉の雰囲気にもぴったりです。

障子の前にある3Dプリンター
デジタル刺繡ミシンと3Dプリンターが並ぶ

一歩中に足を踏み入れると、様々なデジタル工作機器が並んでいます。
3Dプリンターやレーザーカッター、デジタル刺繍ミシンなどがあり、地域に開いた活動や、講習会、クラブ活動などでものづくりを気軽に楽しむことができます。

「世代、分野、国境、固定概念を越えて共に学び合う市民参加型の実験工房、かつ現代版のハイテク寺子屋」と謳うように、製品制作のためのワークショップや講座も開催されており、地域住民やデジタルファブリケーションに興味のある人々が日々集まり学び合いながら、ものづくりを楽しんでいます。

参考:一級建築士事務所 O設計室:民家再生・新築住宅「結の蔵、民家移築再生はこうして行われた」

5分でわかる!デジタルファブリケーションとは?機器やメリットを解説

ワークショップ・講座情報

ファブラボ鎌倉の開催プログラムページ
ファブラボ鎌倉の開催プログラムはこちら→ https://www.fablabkamakura.com/

ファブラボ鎌倉はオープンなコミュニティ。興味関心や実現したいことによって様々な関わり方ができます。
デジタルファブリケーションやFabLab初心者の方には「はじめてのファブラボ講座」や「FAB BASIC 3Dデータ/3Dプリンタ作成講座」といったイベントがオススメです。
さらに知識とスキルを磨きたい方には、「FAB ACADEMY」への参加や研究員になることも可能です。社会人や大学生のインターンも随時募集しています。

今回はファブラボ鎌倉の独自のイベント「朝ファブ」をDMM.makeメンバーが体験してきました!

朝ファブ体験レポート

「朝ファブ」は月曜日の朝の30分間ファブラボ鎌倉のお掃除をお手伝いすると、その後でファブ工作機器を集う方々と一緒に学びながら使用でできるという取り組みです。30分以上の機材を使用する場合は、機材使用料が発生する場合もあるので事前に確認しておくと良いでしょう。

朝ファブはPeatixから事前予約をして参加します。試しに作ってみたい物がある場合は、素材やデータも用意してくると良いでしょう。

朝ファブの流れ
9:00 ファブラボ鎌倉集合
9:00 – 9:30 蔵メンテナンス (草むしりや雑巾掛けなど)
9:30 – 10:00 自己紹介 / ラボマシン(3Dプリンタ・レーザーカッター)の紹介
10:00 – 11:45 FAB体験
11:45 – 12:00 やったことの共有 / 感想

朝ファブは、気軽にファブラボ鎌倉の雰囲気を体験でき、「コミュニティーのリソースとしてのファブラボ」を感じてもらうイベントです。

9:00~ 蔵メンテナンス

ファブラボの地域サポーターさんの指示に従い、掃き掃除や雑巾がけをします。築135年の建物に触れられるのは貴重な経験。

木のぬくもりがある歴史ある蔵! きちんとメンテナンスしてこれからも使い続けられる場所にしたいですね。

蔵の扉が開いている様子
蔵の扉を開けて換気。道行く人たちが覗きこんだり、人力車が止まったりすることも…。

9:30~ 自己紹介

この日は私たちも含め3組6名の方が参加。名前や所属、「今日作りたい物」などを発表していきます。
朝ファブは、お友達同士の参加もOKとのことです! (ただし、人数分の予約を忘れずに)

これまでの3Dプリント作品を紹介する人とそれを聞き入る集団
共に参加した弊社スタッフが作ってきた作品に興味津々…!

10:00~ FAB体験

お掃除が終了したら、お待ちかねFAB体験。レーザーカッターでペットの表札を作る方や、ペーパーカッターで地域活動の旗のロゴを作る方がいらっしゃいました。

レーザーカッターで使うデータを見ながら、修正のレクチャーをしている
「ハンコのデータは反転?」 データの扱い方に詳しい人が自然とレクチャーする流れに…
様々なインクで押印された「鎌倉竹部」とその手作りハンコ
レーザーカッターでゴム印作り…きれいにできました!

参加者のみなさんに感想を聞いてみました

この日の参加者である「鎌倉竹部」の女性3名にも感想を伺いました。

私たちは鎌倉を拠点に活動をしています。
今回は私たちの活動の目印となる「旗」と「スタンプ」作りのために、メンバーの2名を誘って参加しました。
手芸は得意でも、デジタル機器は苦手とするメンバーもサポートを受けながら楽しくできました!

最初はうまくいかなかったゴム印も試行錯誤しながら、満足のいくものができました。
「巷のプリントショップに頼むより重厚感があって良い感じになった」と思わず自画自賛!
今後鎌倉で開催されるイベントでも、ファブラボさんと一緒になって何か新しいものを生み出していけたらと思っています。

 

【鎌倉竹部とは?】
〜地域の竹を活かして竹細工・竹仕事でライフワークをつくる〜
自分で編んだ竹かごを暮らしに取り入れたい。
伸びほうだいの竹林どうにかしなきゃ。
竹で仕事を生み出したい。
そんな仲間が集まり竹と戯れています。
鎌倉竹部HP  https://kamakuratakebu.wixsite.com/kamakuratakebu
Instagram  https://www.instagram.com/kamakura_takebu/

われわれDMM.comの運営するものづくり施設である「DMM.make AKIBA」にも興味をもってくださいました。
ぜひ遊びに来てください!

設立者・渡辺ゆうかさんにインタビュー

ファブラボ鎌倉のフリースクールプロジェクトについて力説する渡辺ゆうかさん

ファブラボ鎌倉を立ち上げ、発展させてきた渡辺ゆうかさんにもインタビュー。
これまでの活動や、「maker」の同志として様々なお話を伺いました。

ファブラボ鎌倉の12年を振り返って

──まずは12周年おめでとうございます! この12年を振り返ってみていかがですか?

小学生として来ていた子が今は大学生になったり…今日来ていただいたDMM.makeのスタッフも当時は大学生でゼミとして来ていたのが、今やパパになっていたり…感慨深いです。

──では立ち上げ当初のことを教えてください。

当時、慶應義塾大学の田中浩也先生がファブラボを立ち上げるためMITに留学をしていて、都内の展示会で田中先生のオンラインレクチャーをたまたま聞いて、「これだ!」となり連絡してファブラボ・ジャパンの活動に加わりました。

それから、「ファブラボが新しいクリエイターのプラットフォームになるかも」と感じて、帰国した田中先生に「ファブラボで仕事つくれますか?」という質問をきっかけに、ファブラボ鎌倉の立ち上げに関わるようになりました。交通事故による怪我も回復して、社会復帰するちょうど良いタイミングでした。笑

その後、ファブラボ鎌倉を立ち上げるために、田中先生が車を買うために貯金していたお金でレーザーカッターなどの工作機械を買ったり、私は自分の人件費を自分で賄うために、内閣府の社会起業家支援の助成金などを活用していました。私も無我夢中で、学びながら試行錯誤していました。何も知らないまま起業したり。笑

──これまでファブラボを運営してきて大変だったことはなんですか?

はじめは「タダで3Dプリンターを使える場所なんでしょ?」と期待していらっしゃる方が多く、ファブラボの価値観を伝えていくのに苦労しました。
そこで10年前に始めたのが、体験していただいた「朝ファブ」ですね。
「自分だけ」の時間とは異なり、集う方とともに、試行錯誤してみんなで一緒にものづくりを楽しみましょうという時間です。朝ファブは、ファブラボ鎌倉で大切にしていることを体験を通じて感じていただけるのでとても大事にしています。

もちろん、全ての方が合う訳ではないと思います。「3Dプリンターやレーザーカッターなどをガンガンを使いたい!」という方には、逆にニーズをお伺いしてその方にあったスペースをご紹介しています。DMM.makeのAKIBAをご紹介する場合もあります。

──ありがとうございます…!

「一人ではなく誰かと関わりながら学ぶ」

二人の男性がレーザーカッターをのぞき込んでいる

──立ち上げ当時からの良い雰囲気はそのままで、地域サポーターの方など関わる方が増えたように感じられました。

鎌倉の土地柄もあるのか、口コミでどんどん良い繋がりが生まれています。
毎週決まった時間に参加せずとも、介護や育児、海外転勤などご自身のライフスタイルや価値観に合わせて長く関わってくださる方が多いのも嬉しいことです。
現在は20名程の方が、インストラクターや講師、サポーターとして関わってくださいます。

また、ファブアカデミーは世界90ヶ国1,500箇所のファブラボとのネットワークをもち、グローバルな学びのプログラムがあるので、海外交流に興味がある方も参加されています。
留学生も来たりと国際色豊かな雰囲気もありますね。

──他に変化はありましたか?

特に新型コロナウイルスの流行を経て、こういったリアルな場の良さに気づいた方も少なくないかもしれません。
口に出さずとも「家で黙々とものづくりをしているだけでは寂しい」「自分の家とは違う居場所が欲しい」といった時に来られる場所ができて良かったです。
ここでは「一人ではなく誰かと関わりながら学ぶ」ということを大切にしています。
様々なプログラムを実施していますが、「教えられる人」つまり、インストラクターの育成を進めている、今はそんな地固めのフェーズですね。

ファブラボ鎌倉のこれから、クラウドファンディングにも挑戦!

白髪の男性が子供たちに教えて作ったキャタピラー付きのデジタル工作
現在は放課後や週末に子どもたちにデジタル工作を教える活動もおこなっています

──今後取り組みたいことはありますか?

ファブラボの役割を固定化せず更新し続けたいですね。ファブラボの文化が完全に浸透したかというと、そうではなく、まだまだ一定の層にとどまっていると感じています。
「これからどんな人にファブラボを知って欲しいか? どうなりたいか?」と問うた時に「次世代を担う世代と、今スキルある人の橋渡しをしていきたい」と考えました。
たとえばベンチャー企業を立ち上げたいとか大学で研究しているといった人…つまり「新しいものやメッセージを社会に提案する」というマインドを持った人と、つながっていけたらと考えています。

ファブラボの在り方について力説する渡辺ゆうかさん

──「次世代を担う世代」というと、具体的にどのようなことを考えているでしょうか?

朝ファブの活動を10年以上行ってきて、一定数学校に通っていない子どもたちがいます。あくまでも、朝掃除を30分してくれたら、一緒にものづくりを楽しめるということで活動してきました。

一方で、社会課題として2022年の文科省の報告書で、日本には24.5万人の小中高生の不登校児が報告されています。年々その数は増加しており、昨年過去最高を記録しています。
「もしかしたらちょっとは役に立てるかな?」と思い、スモールステップを踏みながら、ファブラボ鎌倉らしいフリースクールとしての活動をおこなっていくことにしました。ただし、毎日という訳ではなく、まずは曜日や時間を限定してという形です。意外とフリースクールの定義が幅広いので、逆に興味が湧きました。

持続可能な活動にしていく仕組みは、考えていかないといけません。
まずは「クラウドファンディング」という形で、活動自体を知ってもらい活動費を集めていきます。
いろいろな運用形態はあるかと思いますが、現段階では様々な人の共感と支援を「寄付」という形にして運営していければと考えています。

参加する子供たちや保護者に対しても「無料」で使用できるのではなく、朝ファブのように「掃除」など貨幣ではない何かしらの関わり方のデザインや施設利用に関するルールを決めておく必要はあります。
それらは、ファブラボの理念と変わりありません。年齢問わず、互いに尊重し合える関係性はとても大切だと考えるからです。
今回のファブラボ鎌倉版フリースクールでは、サポーターの育成も大切です。子供たちとつながりながら、スキルを持っている退職されたエンジニアの方や「ちょっとデジタル機器を使ってスキルアップしたい」という地域の方々なども巻き込みつつおこなっています。共通課題でつながっていることもあり、長期に渡り関わってくださる方が多い傾向がありますね。

もし、持続可能な地域の運用モデルができたら、全国に広がっていけばいいなと。時間はかかりそうですが、やはりファブラボは欧米諸国のように図書館などの公的施設で運用されて子供たちの生活圏内にあるのが理想です。道のりは長いですが、小さくてもその第一歩だと思っています。

──私たちDMMも大学や企業、行政の施設などのものづくり施設をプロデュースしてきました。このような施設の運営を継続し続けるためには「人」が何よりも重要だと実感しています。
大変勉強になるお話をありがとうございました。これからもファブラボ鎌倉さんとも協力して何か出来たら嬉しいです。本日はありがとうございました!

クラウドファンディングの詳細はこちらから!

ファブラボ鎌倉がおこなっているフリースクールを実施するためのクラウドファンディングページ
ファブラボの要素を取り入れた、みんなでつくる21世紀型のフリースクールを子どもたちに届ける試みです。ぜひ応援してください!

■みんなでつくる21世紀型フリースクールを子どもたちへ届けたい| クラウドファンディング READYFOR
https://readyfor.jp/projects/fablabkamakura
プロジェクト支援の受付期間は2023年6月25日(日)午後11:00まで。

DMM.makeより編集後記

日本初のFablabとして誕生して12周年を迎えたFablabKamakuraを皮切りにFablabやファブ施設が全国に150施設近く展開されてきました。
DMMでもDMM.make AKIBAというものづくり施設の運営は9年目になります。
最近ではレーザーカッターや3Dプリンターを使えるホームセンターも増えてきています。
ものづくりが民主化され、個人でも3Dプリンターをはじめとしたデジタルファブリケーションの機材で品質の高いものづくりができる時代になっています。
これまで「不器用だから」「センスがないから」とものづくりを諦めてきた方も、お近くのFablabやファブ施設、またDMM.makeの3Dプリントサービスに相談・活用してイメージやアイデアを形にしてみましょう!

老若男女5名が蔵の前で手を振っている
ファブラボ鎌倉のみなさん、ありがとうございました!
【ファブラボ鎌倉】
〒248-0011 神奈川県鎌倉市扇ガ谷1-10-6 ​結の蔵 壱
https://www.fablabkamakura.com/
Facebook
https://www.facebook.com/FabLabKamakura
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