吉忠マネキン株式会社の西田真人様に、DMM.makeの3Dプリントサービスご利用の感想を伺いました。3Dプリント事業を立ち上げ、受託造形サービスも使いながら新規顧客開拓に至ったエピソードをご紹介します。
西田真人様 プロフィール
吉忠マネキン株式会社 東京アトリエ マネキン・モデリング部
粘土原型・3DCG・3DCADを活用し、アナログ・デジタルを問わないアプローチでものづくりに携わっています。
3Dプリンター活用前は型と粘土で作っており、お客様のニーズがあっても一点物のオーダーは受け付けることができなかった。
3Dプリントサービスを使用することで、受注できる案件の幅が広がりマネキンにとどまらない他の分野でも事業展開ができるようになった。
マネキンの仕様変更もボタン一つで簡単にでき、納期も金型の40日から約半分に短縮できた。一点物のオーダー案件が受注できるようになり、継続案件も増えた。
百貨店やジュエリー業界などに幅広くマネキンを提供 吉忠マネキン
現在ではマネキン以外の事業も積極的に取り組んでおり、商業施設の内装設計やショーウィンドウの装飾なども手がけています。
信楽焼にも使われる粘土を使って人間の形を作り、最後に型をとって作り上げます。
弊社ではそれを焼かずに使っていて、作ったあとは石膏で型を取り、FRP(繊維強化プラスチック)と呼ばれる素材で量産の元になるマスター原型を作っています。
そのあとは外注して職人さんがひとつひとつ手張りでマネキンを作っていきます。1から10まですべて手作業ですね。
しかも職人の質によって同じマネキンでも仕上がりが異なります。
重さで変形することもあるため、街中でディスプレイされているマネキンを見ると「あのマネキンは少し曲がっているな」と気付くこともあります。
特注品の場合も、百貨店や量販店、ハイブランドのアパレルメーカーなどからオーダーがありますね。
ジュエリー業界からもご依頼いただくことがあり、ハンドツールやネックトルソーなど、ジュエリーを飾るためのツール全般を取り扱っています。
吉忠マネキン株式会社で製作されたマネキン
一般的なマネキンは頭部のないヘッドレスタイプや、顔がないエッグヘッドというマネキンが主流です。
昔はリアルなマネキンも多かったのですが、今はあまり市場に出回っていません。
ニーズのある一点物のオーダーに応えるため、3Dプリント事業を立ち上げ
服の個性を際立たせるためにシンプルなマネキンが主流の時代が長く続きました。
ところが10年ほど前から、「他社と差別化したい」というニーズが高級ブランドを中心にあり、お客様から一点物のオーダーをお願いされる機会が増えてきました。
しかし型が作れないため、そのような細かなニーズに応えられず、もどかしい思いをしておりました。
ちょうど「3Dプリンター」が日本でも注目され始めた頃でした。
私自身は美術大学の彫刻学部出身だったので、3Dのデータの作り方を新たに覚える必要があり、右も左もわからないまま3DCGを学べるスクールに通いました。
そこは映像やアニメを作るためのスクールで、3Dプリントの勉強をするには遠回りだったかもしれないですが、当時は何もわからなかったので…。
映画などで見るリアルな宇宙人やCGアニメーションの技術は、リアルな人間のマネキンを作る我々に合っていたのです。
社内で3Dプリントの技術を広めるために一番苦労されたことは何でしたか?
「そもそもなぜ手法を変えなきゃならないのか?」という意見もあり、3Dプリントの活用イメージが社員でも抱けず、社内に広めるのは本当に大変でした。
なので、私が国内の支店を回って社内プレゼンをおこないました。
当時はオンラインミーティングが普及していなかったため、一緒にやっていた協力会社の社員と一緒に全国の事業所で説明会を開きましたね。
ボタン一つでシンメトリーが作れるのは「革命的!」
手作業ではシンメトリー、すなわち左右対称の造形がすごく難しいです。
たとえば、ネックトルソーは左右対称になっているのですが、人間は大きな違和感より小さな違和感のほうが気になってしまいます。
しかし、3Dプリンターなら3D CGソフトで「シンメトリー」のボタンを押すだけで簡単に作れます。
ハンドツールは、まさにその最たるものです。
始めは右手で作り進めていたなか、最終的に「左手のほうがいい!」と仕様が変更されると、粘土では最初からすべて作り直す必要がありコストもかさみます。
バリエーションを増やすときもパッと作れるので、受けられる仕事の幅が広がりました。
金型使用時より納期は約半分に、1,000万円以上の売上にも貢献
型に貼り付けて作る方法と、金型に流し込んで量産する方法の2種類があります。
ところが、金型の場合は型を作るだけで40日もかかってしまいます。
型代にかなりの費用がかかってしまうので、同じものを高い精度で作るには3Dプリンターが最適だと感じています。
マネキンのオーダーは通常1ヶ月ほどのお時間をいただいています。
3Dプリントを活用した案件の今までの売上は、1,000万円以上になると思います。
納期や価格の条件をクリアできれば、あらゆる案件を受注できるようになったのは非常に大きい進歩でした。
本当にDMM.makeにはたくさん助けていただきました。
見積もりが速く社内稟議も安心。DMM.makeは「使いやすさが他の会社とは段違い」
協力会社で所有していた3Dプリンターは積層痕が非常に残りやすく、最終製品では使えず、「とにかく外注先を探さなければいけない」といった状況でした。
3Dデータがなければ見積もりを出してもらえないうえに、データがあっても正式な見積もりが出るまでに数日かかっていました。
上司からは「相見積もりを取れ」と言われたものの、ただでさえ受託造形サービスが少なく、相見積もりを依頼するときも御社以外は数日かかってしまって大変でした。
御社は使いやすさが他の会社とは段違いでしたね。
現在も継続してリピートいただいている理由は何でしょう?
昨今の物流リスクを考えると、納期の安定は大きな理由になっていますね。
今後はデザイン性の高いロボットの筐体、オブジェや什器に力を入れたい
設計施工やウィンドウの装飾などで培ったデザイン力を活かし、3Dプリントでしかできないような、デサイン性のある外装パーツのほか、装飾ツールとしてオブジェや什器の開発もしていきたいと考えています。
人型ロボットの外装製作事業で製作した筐体
私たちも、改善を重ねよいサービスを提供できればと思います。
これからもどうぞよろしくお願いいたします!
会社名:吉忠マネキン株式会社
ホームページ:https://yoshichu-m.co.jp/